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水に強いという20式小銃は、ステンレス製?鍍金と併用?部品交換前提?行動間耐久と割り切り?弱点が生じる可能性も。

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〇なぜ海水に強いのか


 一般的に、現代の火器にはクロムモリブデン鋼が使われることが多い。著者自身、見たわけではないので、日本製鋼所等のОBから聞いた話を中心に推測を挟むが、電気炉などで合金とする材料とともに融解し、これを型枠内で還元剤となる珪素やアルミを加え脱酸し粒界の揃ったキルド鋼インゴットを作る。現代ではその際に真空引きをして、より積極的に内部のガスを排除することも行われる。そのようにして型枠内で凝固して出来たインゴットの中でも良質な部分を切り出し熱間圧延して素材にすると考えられる。脱酸していないリムド鋼では、内部に酸素が残り空隙があったり、型枠に近いところなどは、型枠に急速に熱を奪われて先に凝固するため粒界が安定せず、内部欠陥が多いからで、インゴットの中の良質な部分のみを使い、取り出したものを繰り返し叩くことで、内部の巣を潰して行くとともに粒界を延ばす。うどんを捏ねるとグルテンが伸びて腰が入るのと似たような原理だ。巣を潰すのは焼き物の粘土を捏ねるのに近いだろうか。叩いたものを何度も良質な部分だけを取り出し、圧延を繰り返して素材を作り、銃身なら棒状など、それぞれの部品に近い形状にして行く。
 ちなみに鋼は熱膨張率が大きく、鋳造すると巣が入り易い。このように鍛造することが必須な材料である。
 銃(砲)身では、その棒状の素材の内部を中ぐりして、銃(砲)身は作られる。命中精度低下や機能不全につながるので精密な加工が必要になる。そのため多くは切削、研削及び研磨などが行われる。
 この後、炉に入れ、適切な冷却を繰り返すことで、焼き入れ、焼きなましする。この工程により、鋼内部の炭素との化合物であるセメンタイトの結晶を組織化する。この辺りはチョコレートを作る際の内部の糖の結晶化の制御に似ている。チョコレートは石製の台の上で熱を逃がすのだが、鋼の場合は、求める温度維持や急冷などに応じた、水冷、油冷、塩冷などが行われる。現代では炉自身の温度調整でもできるようだ。
 大型の大砲の砲身などであれば、複数のパートの筒状の部品を、それぞれの特性の材料で作り、それらを焼き嵌めするとか、鋼線を筒状の部品に強く巻き付て、砲身の中心に応力が向かうようにする場合もあるが、現代では水圧などで膨らませて、製造することで内部応力を作る自緊式銃(砲)身とする場合が多い。
 鉄筋コンクリートにプレストレス・コンクリートというのがあるが、似た発想で、発射時に内部のガス圧で膨らむのを打ち消すように、逆の応力を製造時に掛けておくのである。そうすることで銃(砲)身が割れ難くするとともに、肉厚を薄くして軽く作るのである。武器である以上、重ければ取り扱いができないので、軽量化するための有効な方法である。
 ここまでの段階で、何度か非破壊検査が行われるだろう。火器の取り扱いで怖いのは材料内部の巣である。腔発、すなわち銃(砲)身の破裂を絶対に防がなければ人命に関わる大事故につながる。もし欠陥で不良品となれば、発見が後の工程まで進むほど大きな損出になるから、各工程で複数回行うものと思う。
 一般的には浸透、X線、超音波、渦流、磁紛などの探傷検査を個所や材質にあった手段で行う。大東亜戦争前はこのような手段がなく、完成段階で結構な数の歩留まりが生じていたことを、日本製鋼所のОBから聞いたことがある。
 もちろん射撃精度にも影響するから外観寸法などの検査も行なわれるだろう。焼き入れなどの熱処理の際に製品が歪むことは、しばしば起こり得る。そもそも熱処理とは体積の変化をもたらす工程だからだ。同じ材質のテストピースなども使い、慎重に行うものの、結果的に出たとこ勝負のある工程である。
 これらのあと表面処理が行われる。強度を増すためのショットピーニング等や、耐摩耗性や防錆を目的とするものとして、ニッケルやクロムの鍍金、ブルーイングなどの方法がある。軍用銃ではリン酸処理であるパーカーライジングを行う場合が多い。
 以上が、銃(砲)身を始め、金属部分の製造工程である。
 今までの説明の中で防錆を考えると、材質そのものか、表面処理の部分が関係するだろう。他に異種の金属の接触や水分が抜けにくい構造なども原因となる。防錆と言えばステンレス鋼ということになろう。実際にステンレス鋼を用いた銃も存在するが、ステンレス鋼でもSUS3百番台のものは、硬いのは良いが脆く、過大な圧力が掛かると一気に亀裂が拡大するので避けているようである。
 ステンレス鋼は、クロムの含有量を11%以上含むもののことである。クロムがステンレス鋼の表面に不働態皮膜を作るので錆びを防ぐ。しかしステンレスの材料を融解した際に、このクロムが炭素と結びつきやすく、鉄から炭素を奪うのである。炭素の量が多い程、鋼は硬くなるが、脆くなる。
 このブログの記事「製鉄・製鋼、造船、石炭、これら明治日本の産業革命遺産が富国強兵を実現した。」 https://sucanku.xsrv.jp/0000015-2/266/ でも触れたが、高炉から出た銑鉄から炭素を奪ったものが鋼である。銑鉄そのものを型に注いだものが鋳物であり、その工程を鋳造、材質を鋳鉄という。また当時の反射炉でパドル法により得られたものは、逆に炭素が極めて少ない錬鉄であった。鋳鉄は硬いが脆く、錬鉄は逆に柔らか過ぎた。これらを総して元素名と同じ「鉄」と呼び、「鋼」と区別している。炭素を0.2から2%の間に調整したものが鋼である。
 その炭素が析出する時に鉄からクロムが炭素を奪うから、硬さが減少することになる。前述の記事で説明した珪素と反対の特性である。したがって嘗ては、ステンレス鋼は強度が低かったのであるが、モリブデンやバナジウム等を加えて強度を増したものが現在使われる様々なステンレス鋼となる。
 クロムモリブデン鋼にもクロムが使われているがクロム 0.8~3%程度である。この場合のクロムは焼き入れ性を高めるために入れているもので、基本的に炭素が強度の元となっている。この程度であれば炭素を食うことはない。
 材質に依らず、銃(砲)身に使用する場合には熱処理段階で、やや焼き入れの程度を落としている。万が一の場合に、膨張させて破裂を防ぐためである。逆に、遊底とか尾栓などについては強めに焼き入れしてあって、閉鎖機構が壊れて薬室部分から後方が破壊されガスや部品が飛散しないようにしているわけである。
 ステンレス鋼製の銃(砲)身の場合、バナジウムなどを含有させて強度を挙げているが、硬くなり過ぎないようにしている。そのように配慮しても加工性が悪く、寸法通りに製造できずに命中精度に影響を与えるようだ。
 ちなみに強力な威力を求めて、ステンレス鋼ではなく、バナジウム鋼を使うこともあるが、これは硬すぎて加工性が悪いため命中精度がどうしても悪くなるようである。威力だけ欲しいときに使う材料だろう。
 はたして20式小銃が、ステンレス鋼なのかということであるが、開示されていないので分からない。しかし、ステンレス鋼は、実は海水には弱いという特性がある。ステンレス鋼が錆び難いのは含まれているクロムが、ステンレス鋼の表面に不働態皮膜を作るからである。しかし、この不働態皮膜に微細な穴が開くと、穴の中の電位が不働態層表面に生じる正電荷に引き付けられて、負電位になるため不働態層ができる前に穴の内部に浸食が進んでしまうためである。内部で浸食が進むことは、外見ではわかりにくく、手入れにより錆びの進行を抑えることにも限界があるから、軍用銃としては扱いにくいだろう。
 特にSUS3百系のオーステナイト系ステンレス鋼には、内部腐食の傾向が強く、組織内に進行して粒界腐食が進行しやすい。また、オーステナイト組織はγ鉄という、本来高温状態において鉄原子が面芯立方格子になっている状態を、クエンチ、すなわち強冷却して、本来、温度低下で起きる筈の体芯立方格子への相転移を起こさずに、常温においてγ鉄を維持させている。いわば寝て居たところを起こされて、寝ぼけたままで居るような状態で、基本的に不安定であり、熱や振動で相転移が徐々に進んでしまう傾向もある。高温高圧を扱う火器には使いにくいだろう。
 おそらくではあるが、20式の銃身にはステンレス鋼は使っていないのではないだろうかと著者は考える。
 材質による耐腐食でなければ、表面処理による耐腐食ということになるが、従来の軍用火器にもパーカーライジング処理が行われてきた。
 パーカーライジング処理とは、リン酸による処理をするもので、形成される皮膜が錆びにくいだけではなく、更に表面がザラザラの状態になり、塗布した油脂を長く留めて防錆の程度を強め、また光沢を抑えられるという特徴も持つ。
 従来からパーカーライジング処理は行われてきたことで、同じ処理をして、これで敢えて耐水化を図ったということは言えない。
 ニッケルやクロムの鍍金をした銃は民間用としては珍しくない。しかし光沢があり、あまり軍用には用いられなかった。ただ、銃身が外部に露出しているかというと、現代の自動火器は、銃身で火傷しないためにも、被筒で囲むことが多いから、野外での分解清掃時を気にしなければ問題にならないのかもしれない。問題があるとすれば調達コストに跳ね返ることだろう。
 なお、64式小銃も含め、いくつかの銃で腔内に硬質クローム鍍金を施してある。世界では硬質クローム鍍金を腔内に使う例は決して多くないのであるが、寿命は数倍程度上がるようだ。現実的にそこまで伸ばす意味があるかという議論もあるが、もしかすると、湿潤な日本の気候を考えた結果なのかもしれない。
 以上のとおり、材質そのものを変えることは、防錆性能以外への命中精度などへの影響や、そもそもステンレス鋼が海水に弱いことからも、少し考えにくいと思う。
 とはいえ、表面処理の方は、従来から行われてこなかったわけではないので、例えば鍍金処理などがされているのかもしれない。あるいはこれらに更に別の表面処理が重複されている可能性もある。
 特に、著者の体験談でも書いた通り、自動銃には、緩衝、複座、撃鉄打撃、装弾、引き金の位置保持、抽筒、等々、非常に多数のバネが使われている。SUP○○〇で形式化されているバネ鋼では、割合炭素含有量が多めになっているものが多い。強度が特に必要なものにはバナジウムなどが含まれるものもある。バネは連続して弾性変形を受けることなどから靭性も求められる。 
 このようにバネが大小多数使われているが、総じて、見たところ目立った表面処理はされていなかった。おそらく表面処理した部分が強度に影響するのかもしれない。表面処理には強度を上げるものもあるが、局部的に強度が上がるということは、相対的に他の部分の強度が下がることでもある。あるいは金属疲労を考えて交換することを前提としているとも思われる。
 実際に、64式小銃が津波の被害を受けた時にはバネは全数交換とされた。最近はバネにステンレス鋼を使う場合も多い。ひょっとしたら20式小銃のバネ部品にステンレス鋼を使用しているかもしれない。交換前提なら行動間のみ耐久すれば良いのであるから、内部の腐食は問題とならないかもしれない。
 今日ではファイン・セラミック製のバネも出現し、弱点であった靭性も備える材料も出現してきているが、セラミックはまだ使用経験が不十分だろう。案外使われることもあるかもしれないが、壊れても影響の少ないところからだろう。
 また自動銃では遊底や、引き金部の部品など、大小多数の部品が使われている。これらに共通するのは、相互に摺動し、その際に各部がカムとして働くということである。したがって精密な寸法精度と耐摩耗性能が求められる。反面、銃身やガス圧作動部を除いて耐熱性は、さほど求められないと思われる。
 これらの部分にステンレス鋼を使うことは不可能ではないが、精度が必要であれば加工性の良いものが使われるし、焼き入れ性も重要である。高い精度を求めると、どうしても切削加工に多くを頼るたよることになる。できるだけ熱処理前に冷間鍛造や切削を行うが、熱処理において歪みが出て来る。焼き入れ性が悪いと一部にしか焼きが入らず、入った部分との差から変形が生じやすい。場合によっては、浸炭や窒化といった処理で強度を上げることも考えられる。また、ものによっては溶接を使うことも考えられ、この場合も歪が残り易い。
 熱処理というのは、なかなか大量製品には難しい工程である。均一に焼きが入ったかは作ってみなければ分からない。炉の大きさもあるからロット数も限定されるし、同ロット内にもばらつきが生じる。同じく炉に入れたテストピースと同じように焼きが入っている保証もない。
 余談だが、拳銃の不良品の話で、拳銃がサブマシンガンになった例がある。弾丸が連射されたのである。遊底を止める逆鉤が焼き入れ不良で破損したためであった。内部の巣なら非破壊検査でわかるが、焼きの状態は、切断面をエッチングして粒界検査する必要がある。ある程度大きい部品であれば、叩いた時の音の高さで、ある程度は分かるものであるが、細かい部品や、部品内部の局所的なものは分からない。
 ステンレス鋼に多く含まれるクロムは、焼きが入り易い成分であるが、それだけ局所的に脆くもなる。さらにステンレス鋼は他の金属と接触すると、接触した金属の腐食を進める可能性もあり、多数の部品が接触する引き金機構などに使うには、注意が必要だ。
 以上のことからすれば、やはりクロムモリブデン鋼が使い易いだろうし、歪を嫌うならニッケルを含める場合もあるかもしれない。耐水性を考えれば、これらに表面処理を施すのだと考えられる。詳しいことが開示されていないので、不明な点が多いが、鍍金と表面処理を併用しているのかもしれない。鍍金は寸法が変わるが、鍍金をし直すことで修理も可能な面がある。火器ではないが、ジェットエンジンの部品の嵌めあい公差の調整にクロム鍍金を使用している例を見たことがある。
 20式小銃を見る限り、木製部はないので、海水がしみ込むようなところはないのだろう。

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