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対艦弾道弾の軌道と対処

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中国が対艦弾道ミサイルを開発しており演習で発射したが、遠距離から発射しても目標を発見できなければ攻撃できないし、発見できても誘導できなければ命中しない。そのためにはネットワークの助けが必要であるが、高速で飛翔する弾道ミサイルには大気の電離という電波を使用できなくなる問題がある。十分に減速することが必要だが、そのためにはディプレスド軌道をとる必要がある。また防御側としては電子妨害が有効になるだろう。

中国が対艦弾道ミサイルを発射したという次のようなニュースが流れた。
中国、南シナ海に弾道ミサイル4発発射 「空母キラー」で米けん制
https://www.jiji.com/jc/article?k=2020082700234&g=int
米国防当局者は26日、中国軍が中国本土から南シナ海に向けて中距離弾道ミサイル4発を発射したと明らかにした。
中国軍は26日午前、内陸部の青海省から「東風26」(推定射程4000キロ)、沿岸部の浙江省から「東風21D」(同1500キロ)を1発ずつ発射
対艦弾道ミサイルについて、まだ良くわからないことが多いが、推測をしてみたい。
〇移動目標にどうやって直撃させるのか
前述の発射地点のように目標から千km以上も離れていては、発射地点においてセンサーのネットワークが無ければ目標の存在すら運用者には判らないだろう。目標を発見できなければ攻撃そのものが成立しない。
さらに目標である艦艇は移動するし、等速度で移動する保証もない。一方、弾道弾が千km以上離れた目標に飛翔し到達するまで射程距離に応じて数分から数十分掛かる。
艦船は、平常時、原速と呼ばれる12ノットで航行する。脅威の高い海域なら第一戦速(18ノット以上)、場合によっては30ノット以上で航行する。10分もすればミサイル発射時の位置から5~10kmも移動するから、無誘導なら核弾頭でも目標艦船の破壊は難しくなってくる。まして通常弾頭なら、間違いなく誘導が必要だろう。
〇誘導は可能か
しかし、弾頭などの再突入体を誘導しようとすると、兵器の運用者にとっては大きな問題がある。まず、射程が長いほど速度が大きくなり、再突入体は速度が毎秒数kmに達する。すると、速度により再突入体周囲の大気が、再突入体の表面にぶつかって加熱され電離するのである。電離すると大気は電波を通さなくなる。したがって、再突入体は、外部からの通信や自らのセンサーの使用が困難となる。
宇宙カプセルの回収時、大気圏突入に伴って通信途絶が生じるのは、説明した電離が原因である。もっとも米国のスペースシャトルでは、大きな翼の効果で電離大気に包まれない背面のアンテナから衛星を通じて通信を維持できたそうである。しかし、スペースシャトルの場合はあれだけ巨大だからできる話である。全体が電離大気に包まれるから、とてもミサイルの弾頭では無理な話だ。
電離による通信途絶は何も大気圏突入だけでなく、打ち上げ時の噴射ガスとか、上昇時の衝撃波でも生じることがある。かつて米国にナイキ・スプリントという迎撃ミサイルがあった。このミサイルは急加速するので周囲の大気が電離した。誘導を維持するために強力な電波が必要とされたそうである。
高温により電離した大気は、金属のように電波を反射してしまい、電波が通過することができないのである。
〇デプレスド弾道の必要性
ミサイルの誘導を維持するためには、再突入体の速度を、電離しない速度まで減速することが必要となる。減速以外の打開策が研究されているが、まだ実用化できていない。仮に、できたとしても弾頭のような小型の再突入体に適用することは難しいであろう。
通常、弾道弾はミニマムエナジー軌道と呼ばれる弾道か、それに近い、やや高めのロフテッド軌道を飛翔する。それらの軌道をとることは、垂直に近い角度で落下させることで命中精度を上げるためである。水平の速度成分が大きいほど誤差が大きくなるからである。
しかし、この軌道では大気圏を通過して地上に衝突するまでの距離が短いため、衝突までの時間を稼ぐことができない。あっというまに地表に激突してしまうことになる。再突入体が、減速する手段は現実的には空気抵抗しかない。したがって誘導を必要とする場合は大気圏への再突入角度を浅くとり、坂道を下るような軌道をとることになる。
宇宙カプセルの回収では8度ぐらいの角度であった。小惑星探査機の「はやぶさ」の帰還映像をお覚えの方は多いだろう。ほぼ地表に平行に見える軌道で進入している。高度50~70km付近の中間圏といわれる大気の層の中を水平に飛翔しながら、風圧を受けて速度を落とすのである。
イメージとしては、血管注射と皮下注射を比べればよい。血管に刺す血管注射では垂直に針を刺すが、皮下注射では皮膚に沿って刺すのと似ている。
浅い角度で再突入するには、ディプレスド軌道という、低めの軌道をとるのである。最近、ロシアや北朝鮮のミサイルが比較的低高度で機動しながら、滑空飛行してくるものが開発されたとの報道を聞くようになった。一般的にはレーダーに捉えられないように低い軌道をとると説明されることが多い。しかし、むしろ誘導する必要上、ディプレスト軌道から減速しつつ滑空飛行に移行するのであろう。
ちなみに、話の本筋からは逸れるが、化学弾頭や生物弾頭を用いる場合も同様の軌道をとると考えられる。なぜなら化学剤や生物剤が熱に弱く十分に減速しなければならないためである。
逆にいえば、ディプレスド軌道で飛来する弾道弾は、誘導のためや弾頭の特性上、大きく減速する必要があるミサイルである可能性があるということが追跡データからわかるわけだ。
〇妨害の有効性
さて、誘導するために電波を用いなければならないということは、電波妨害に弱いということになる。
弾道弾は、通常は慣性誘導を行っている。しかも、ほとんどブースト段階で誘導は終了する。慣性誘導はミサイル内部で完結するから電波を必要としない。
かつて迎撃を掻い潜るためにターミナル段階で機動するMaRVが開発されたが、いわば野球の投球でいう変化球のようなもので、あらかじめ決まった範囲を蛇行する程度のものであったから、ここで言う誘導には当たらない。
しかし、近年開発された、対艦弾道ミサイルや滑空弾というものは、誘導しなければ、固定目標でも命中はおぼつかないのである。まして移動しているものにあたることはマグレでしかない。
つまり、最近、SM3やPAC3では迎撃が困難という議論がなされているが、これらの誘導を必要とする対艦弾道ミサイル等には電子戦での対応ができるということが言えるのである。
ただ妨害できる時間はかなり限られる上に、遠距離から高速で接近してくるから、妨害電波を到達させるためには強力な電波が必要となるだろう。
妨害は現在のECMの延長上の技術であるが、弾道弾用のものの開発が必要である。
再突入体は一般的に大きさや重量に制約がある。それにディプレスド軌道であっても高熱に晒されるためレドームなどの材質を硬く、熱に強いものにしなければならないなど制約が多い。アンテナなども大きなものを再突入体内に搭載することは無理である。したがって強力な電波を使用してくる筈だが、それでも感度は低いだろう。もちろん極超音速での飛翔中は電波が使えないから、誘導は目標に比較的近くなってからになるのではないだろうか。
また、再突入体は、小さいわりに重く、慣性モーメントが小さいことと、通常のミサイルよりは減速しても高速であるから、一度、妨害を受けて進路が左右上下に振られてしまえば、元のコースに戻すのは容易ではないだろう。防御側としては「あっち向けホイ」の要領で避けることができるのではないかと考える。

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