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米国の航空母艦では、スティーム・カタパルトを使用しているため、蒸気を利用できることは大きなメリットとなっている。現用の中共の空母についてはスキージャンプ方式を採用しているし、次の艦からは電磁カタパルトを用いるという話も聞くところである。私が思うところであるが、電磁カタパルトに供する電力のことを考えると、やはり原子力によって得られる蒸気というのは有用なのではないかと思うところだ。なぜなら発電機による発電には高速回転が有利であるからである。軍艦に一般的に使われる動力として原子力によるスティーム・タービンの他、ガスタービンや中速ディーゼルが使われることが多いのであるが、スティーム・タービンはディーゼルよりは高速回転に向いているし、ガスタービンでは、発電機に回転力を伝えるフリータービンの位置が限定される。全体のレイアウトを考えた時、蒸気をパイプで導いて補機用のタービンで発電機を回した方が設計しやすいだろう。もちろん発電用に専用のガスタービンを設けても良いが、そのための通風孔が必要になってくる。もちろんこれに高速ディーゼルを用いても同じである。密閉された艦内で内燃機関を作動させようとすれば換気をしないと一酸化炭素中毒を発生させかねない。以上に上げた通り、実のところ、原子力を航空母艦に用いるメリットというのは、有り余るほどの恩恵があると考えられる。
〇原子力推進のデメリット
そこで、次にデメリットであるが、エネルギーが無尽蔵であるが故にデメリットを殆ど帳消してしまっているので、殆どないと言ってもよい。強いて言えばではあるが、先ず考えられるのは、航空母艦は高い艦齢まで運用されるので、運用期間中に燃料の交換が数回あるのだが、交換作業のために専用施設と長い作業時間が必要となることである。しかし、燃料交換の問題は原子力艦を複数保有すれば交替することが可能であるし、通常動力艦で補っても良いことである。
2つ目に、原子力艦は高価格である。しかし航空母艦ほどの大型艦ともなれば、もともと高価なものであるし、原子力艦のメリットを考えれば増加分は元を取った上で余りあるものになる。
3つ目としては、これが水上艦艇ではなく、潜水艦であれば、原子力推進の艦と通常動力の艦では雲泥の差があり、同列に語れるものではない問題ではある。しかし水上艦の場合は、小型の艦ではデメリットが出て来るようである。原子力推進の水上艦艇では最小のものでは排水量8千トンクラスになるようだ。このクラス程度であると通常動力の艦艇の方が高い馬力の機関を搭載できるようである。原子炉は重く大きいため、ほぼ同型艦であっても原子炉搭載の方が重くなり、しかも1基の原子炉では、同等の通常動力艦の機関の方が馬力が上回る。馬力の面で原子力が上回る境目は概ね4万馬力を超える辺りからになると言われている。もちろん出力だけで比較できるものではなく、長期間、燃料補給を要しないメリットは大きいとは思われるものの、小型の艦では、そもそも長期の航海には制約が大きいため、そのメリットを活かせるなくなる。航空母艦の場合、どんな小さな艦でも排水量数万トン以上になるから、問題にはならないものの、8千トンレベルの艦ですら影響がでる程、原子炉の重量・容積が与える影響は大きいのである。潜水艦の場合を述べたが、大気に依存しないメリットが絶対的に大きく、しかも通常動力の場合、バッテリーの電力による電動機の推進力であるので、水上艦のように内燃機関を用いることは制約があって原子力推進が優位になるからだ。シュノーケル航走もあり得るのだが潜水艦内は狭いので大型の機関を積むのにも制約があろう。重量も、元々バッテリーの重量があるので、原子炉と同様に重いので、総合的には、それ程変らず、小型の艦でも原子力推進にするメリットが出るのである。
航空母艦は、大型艦であるから、小型艦に出て来るデメリットはない。しかしである、いくら大きくても、排水量8千トンクラスの艦でこれだけの影響がでるのだから、まったく影響がないということはない。
軍艦に限らず船というものは、橋に似た構造物と言える。橋は両端に橋台があり、その上に橋桁が渡されている。橋桁の長さが長くなれば橋脚が数か所設けられて、分割した橋桁が橋脚に載る。橋脚を建てる場所がなければ、橋桁だけでは長くなると撓んでしまうから、トラスにしたり吊り橋にするわけである。
船が走る水面には、波が立っている。船の舳先と艫が波に載れば、両端が橋台にのった橋と同じことになり、この状態をサギングと言う。逆に船の中央が波に載ると波を中心に軒の梁やヤジロベーのようになる。この状態をボギングと呼ぶ。波の間隔が広がれば広がる程、船の船体は重力の作用で曲げる力が働き、力があまりに巨大になると、真ん中から折れてしまうことになる。実際に、真っ二つに折れてしまう海難事故も起きているから艦船の強度設計は重要である。
従って、船は、船体が折れてしまうことがないように一か所だけに重さが掛からないように設計される。ところが理想的には重量のバランスがなかなか思うようには行かないのである。例えば貨物船を考えた時、荷物を載せる船倉は空荷の時は空箱と同じである。しかし、荷物を積載すれば一番重量が掛る場所となる。重量が変動するのは強度上、複雑になるので一定以上の大型船ではバラストタンクに海水を出し入れし、荷重を平準化している。因みに、このバラスト水の出し入れは最近では生物多様性の問題となっているようだ。バラストタンクに入れた海水が他の地域で排出され、混入している生物をまき散らすからである。生物多様性に悪影響があっても、船の安全運航の為には避けて通れない問題なのである。対策は取られているようだが、完全には無理ではないだろうか。