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「おおすみ」が不具合で佐世保入港 乗組員で対処不能 大規模なら民間工場に外注か 南西方面防衛に艦艇修理能力不可欠

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 しかし、海上自衛隊の艦艇用ディーゼルと民間船舶のディーゼルとでは別物である。むしろ艦艇用は、鉄道の気動車用に近い。自衛艦の場合、4サイクルの中速ディーゼルが使われることが多く、回転数が毎分数百回転になるため減速ギアが必要になる。なぜなら回転数が大きいままだとスクリューがキャビテーションを起こし、効率が悪くなるのと、スクリューを痛めるからだ。もちろん回転を低くする代わりにスクリューの径とピッチを大きくするので、スクリューが起こす水流量は変わらないが、その分、スクリューを回転させるのが重くなるわけだ。そのようなわけで大型艦船のスクリューは毎分百回転前後で使うのが普通である。民間船舶では2サイクルの低速ディーゼルが使われることが多い。主機の回転数は毎分百回転前後で、減速ギアを介すことなく、プロペラシャフトを介してスクリューを直接回転させることができる。その分、低速ディーゼルの回転トルクは大きい。その大トルクを出すためシリンダーの径は人が入って清掃作業できる程大きい。ガスタービンやスティームタービンは毎分1万数千回転に及ぶので、明治時代の大昔を除けば現在は原則、減速ギアを用いる。
 なお、高速ディーゼルというのもある。これは戦車やトラックなどに使われ、船舶では高速艇に使われている。一部、航空機用にも用いられている。毎分数千回転ほどの回転数であり、サイクルもディーゼルサイクルというより定容燃焼を含むサバテサイクルとなるので、ガソリンエンジンに近い特性を持っている。
 「おおすみ」には、三井造船16V42M-Aディーゼルが使われている。この主機は、大型の支援艦に用いるために開発されたものだ。この機関の主要目が見つからないが、砕氷艦「しらせ」に使われている同種の16V42M-Bには定格回転数600回転毎分で、定格出力は10600仏馬力とある。「しらせ」の場合では、ディーゼルエレクトリック方式であるので、ディーゼルで直接、発電機を回して、その電気を使い電動機でスクリューを回している。ちなみに発電機を回して発電するには高い回転数の方が好ましい。
 電動機は、内燃機関と異なり低速回転でも大きなトルクを発生することができる。つまり減速ギアの代わりに発電機と電動機を用いているわけである。この部分を「おおすみ」では減速ギアを用いて6~7分の1に減速している。「しらせ」が一度、電力に換えるような複雑なことをしているのは、減速ギアの代わりに回転数を下げるだけではなく、砕氷の為には、前進後退を何度も繰り返すために、電流として、スイッチで制御した方が回転の切り替えが容易だからだ。反面、ロスは大きくなる。ディーゼルエレクトリック方式ではシャフトと異なり、電線の方がスクリューまでの動力伝達のレイアウトが容易ということもあろう。シャフトの心出しは熟練のいる作業であるし、シャフトの回転軸の方向を変えるのは困難だ。(通常型の)潜水艦では潜航中にバッテリーの電力を使うことや、ギアの騒音を嫌うので、ディーゼルエレクトリック方式が標準だろう。
 「おおすみ」の推進系統は、説明したとおりディーゼル機関の回転を、シャフトで伝え減速ギアで回転数を落として、船尾管内部のシャフトからスクリューを回すということになる。
 減速ギアや、スクリュー、それらをつなぐシャフトの故障となると、滅多に壊れないし、壊れたとなると大変な修理となる。今回の記事からすると故障といっても不具合の兆候というこで、壊れたわけではないから異常音などが出ているのかもしれない。これらで壊れやすいとすれば、シャフトを支えるベアリングだろう。あるいはシャフトのバランスが狂って振動しているのかもしれない。あるいは船尾管の水密が問題なども考えられる。
 やはり、故障しやすいのは主機のディーゼルだと思われる。細かい部品が多く、複雑な動作をするからである。
 海上自衛隊のデータがないので、他から類推するしかないのであるが、「旧海軍艦艇用蒸気タービン主機関の故障記録」という資料から、まず見てみたい。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime2001/41/1/41_1_66/_pdf
 この資料が扱っている機関そのものがディーゼルではないので、そのまま読み取るわけには行かないが、日本マリンエンジニアリング学会誌第41巻第1号65頁には、タービン翼や翼車と言った主機に関する部分が65%を占めていて、減速ギアは10%程しかないとある。軸受けが8%あるが、主機内のものか、外部のものかは分からない。
造船協会論文集第119号 船用主推進機関の故障調査(昭和41年5月造船協会春季講演会)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjasnaoe1952/1966/119/1966_119_320/_pdf/-char/en
 この資料は些か古いもののディーゼル主推進機関について掲載している。資料の326頁の表2に、ある4隻についての延べ10万時間当たり故障率の個別データがあるが、燃料弁の故障が98%を占めている船がある。他3隻の船は、35%、25%、1%である。なお、この表2の数字は、各船とも合計すると100%を超えるが、気筒数を掛けていると説明されている。配管類も割と多く各船15%、4%、0%、23%、他目立つのは燃料ポンプが2%、5%、、18%、3%となっている。ある船はクランク軸15%、主軸受10%、ピストン7%と、前に挙げた燃料ポンプの18%なっているが、故障個所から言って、相当重篤な状態であろう。
 主機以外の項目にあるのは、先に挙げた配管以外には主発電機とボイラーがそれぞれ12%、17%という数字があるが、これは上のクランク軸などが該当した船である。この船は他に排ガスボイラー、蒸化器、船尾管について各6%とあるので、特別に状態が悪いと思われる。その他、数字が入っているのは電気系統というのが4%、2%の船があるだけで、主機と比べれば少ない。
 この表には減速ギアがないので、低速ディーゼルだろう。故障件数が多いのは、この資料からも主機となっている。
 次に「TOSHIN STUDY New25 平成21年8月25日」を見る。
http://toshin-marine.com/study/toshinstudy25.pdf
 衝突、乗揚げ及び機関故障の平成15年から19年までの各年の件数比較がある。どれも海難事故としての統計であるから、機関故障というのは航行不能レベルのみの数字であろう。各年とも衝突が一番多く、機関故障が次で、乗揚げがそれに次ぐ順となっている。
 海上自衛隊の艦艇の衝突事故のデータがないが、私がここ40年程でニュースなどで、覚えている事故は5件程だった。この統計の傾向からすれば、航行不能の機関故障は、それより少ないのだろう。

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