google-site-verification=bsh9Vc0JE-gs5XhAa5d60ynarygvmIr38GwKW8JySfM

潜水艦「そうりゅう」が衝突 浮上訓練必須 音波が逃げる 聞き違え ソナーの限界 潜望鏡の遠近感 スクリュー後流と舵

アーカイブ
カテゴリー
広告
Loading...

〇水中聴音機に受信はあったのか

 水中聴音機の性能は明らかにされていないが、大東亜戦争中の逸話として、鹿児島湾内に停泊していた戦艦大和の水中聴音機が、湾外の太平洋を航行中の潜水艦の音を捉えたというものがある。
 そもそも水中聴音機は、攻撃目標を発見し、位置を特定するためのものであり、普通に考えても、衝突する程の距離の船舶を発見できないとは考えにくい。
 上に述べたとおり、当該海域の海水温は暖かかった。海水中の音波は温度の上昇にしたがって伝搬速度が速くなる。海水温は、河川からの流入や海底火山などなければ、海面上が一番高く、深くなるにしたがって摂氏4度辺りに漸近する。
 特に浅い水深では、この温度曲線の曲率が大きくなり、水中で発した音波は、段々、下向きになって行き、海の底の方に伝わって行く。
 ところが深い水深になると、温度の変化は僅かになるため、水圧の影響が大きくなる。条件により変わるが数百m辺りから、音の伝わる上向きにカーブするようになる。
 この音波が伝搬するカーブの、上下の変わり目の水深あたりは、音も上下に向きを変えながら遠方に伝わるのである。
 逆に寒い海域では、浅い水深部分の海水温による影響の部分がなくなるので、音は殆ど、海面から空中に逃げてしまうため遠方には伝わりにくくなる。
 また、海表面では一部が反射して、海底に向かい、また海底では同じく一部が反射して海面に向かう。ただし海底の場合は反射量が海面に比べて小さいのが特徴である。
 衝突した海域では、先に示したとおり海面付近の水温は高かった。暖かいのは日本海流の影響が大きい。日本海流は赤道海流から続いて流れてくるのであるが、海水が南洋で温められているからである。しかし、暖かな海水の下には冷たい海水がある。南から流れて来た暖かい海水の下に、北からの千島海流が潜り込むからだ。
 当日8日は晴天であったし、気温も高知県で16度台であるから、大気に冷やされる要素も少ない。水の比熱の大きさからすれば熱はあまり逃げないだろう。
 海流や天候の条件からすれば、水中の音波は伝わり易かった筈である。ただし海面を航行する船舶の水深ともなると、スクリュー付近でも10mも無い。多くの音波が、下向きに向く前に海面から空中に逃げる可能性がある。
 また、暖かい海域を流れて来た海水は水分が蒸発し塩分濃度が高くなっている。塩分というのはナトリウムやアルミニウムの塩化物であるが、これらの海水中の塩分が音波を吸収する特性があることも要因の一つだ。
 海面付近の波によるノイズレベルも上がり、聞こえ難くするように働く可能性がある。
 確かに水上にいる艦船の音は聞こえ難いと言われる。レーダーが普及する以前、探知されることを避けるために敢えて潜水艦が浮上航行することもあったぐらいである。
 温暖な海域の音波が遠方に伝わり易いと言っても、それは主に水中にいる潜水艦が発する音の場合であり、必ずしも水上を航行する船舶に、そのまま当てはまるわけではない。
 また、水中聴音機は、距離を判断するのは苦手である。敵を攻撃する場合は、曳航ソナーを曳いたり、自ら移動することで、異なる2点間からの角度に基づく前方交会法により、三角形を作って距離を測定するのである。
 もちろん、浮上時のようなときに使えるような方法ではない。接近するか遠ざかるかはドップラー変異である程度判断はつくが、それもスクリューなどは回転しているため、変異が両方に触れるから混乱要素にはなる。
 仮に付近に居ることが分かったとしても、距離や、距離の増減などは分かり難いと言える。
 もし聞こえにくかったとしても、距離から考えれば全く聞こえなかったということは考えにくい。むしろ他の船舶の音との聞き間違えたということのように思える。これは水中聴音機の能力の限界と見るべきではないだろうか。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


%d人のブロガーが「いいね」をつけました。