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自衛隊調達巡り(177)施設学校 島嶼侵攻対処支援研究 実員検証ニトロメタン爆破計測

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入札日:令和3年10月11日
陸上自衛隊施設学校
島嶼侵攻事態対処に関わる施設支援に関する研究実員検証爆破計測技術援助役務
https://www.mod.go.jp/gsdf/eae/kaikei/eafin/koukoku/20211011-ENGS-0350.pdf

 島嶼侵攻事態対処に関わる施設支援に関する研究実員検証爆破計測技術援助とある。
 ニトロメタンを燃料として使う爆轟チューブの爆発威力を計測するようだ。ニトロメタンというのは溶媒や洗浄などにも使われるガソリンに似た液体で、燃料としても使われるものだ。レーシングーカーのエンジンやラジコン用エンジンの燃料にに使われている。少ない酸素で燃やすことができ、ガソリンよりはエネルギー密度が低いものの、差し引きでガソリンの2.3倍程度の出力を発揮できようだ。
 酸素が少なくても燃えると書いたが、コンポジット固体燃料ロケットの燃料に混ぜ合わせられる原料の一つであるところの、過酸化アンモニウムという酸化剤と混ぜると、熱で分解して酸素を出すため、爆発を起こすことができる。オクラホマシティ連邦政府ビル爆破事件で使われたものがこれである。

 ここで思い出すのが、燃料気化爆弾だ。これには酸化エチレンが使われるのだが、密閉容器内に詰め込んだ状態で、爆薬で起爆すると過加熱状態となり、容器が圧に耐えられなくなると、外部に噴出し一瞬で気化する。これに別の火種で着火すると大気中の酸素と反応して大爆発を起こすというものだ。
 ニトロメタンを封入した爆轟チューブというのは、性質的にこれに近いものではないだろうか。もちろん燃料気化爆弾ではないから、そのままチューブ内で爆轟を起こさせるのだろうが、かなり多くの部分がチューブを壊しながら、燃え広がるのだろう。
 ところで、この爆轟チューブを島嶼侵攻事態対処に関わる施設支援に関する爆破に使う研究とあるのだが具体的にどのようなことなのだろうか。

 島嶼侵攻事態対処という用語は、少なくとも固有名詞としてはない。もちろん武力攻撃事態などの法令用語でもない。調べると平成29年前後から、僅かではあるが、文中に出てくることもあるようだ。陸上自衛隊とか、一部の部隊のみで使われるのかもしれないが、普通名詞に過ぎないようだ。
 まあ、特別な意味はなく文字通りの意味なのだろう。
 防衛白書には次のようなページがある。

島嶼部を含むわが国に対する攻撃への対応
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2020/pdf/R02030102.pdf

 253頁の図には、画像収集衛星、測位衛星、彼我の潜水艦、水上艦艇が描かれ、洋上では、海上航空支援、対水上戦、対潜戦、機雷敷設戦、対機雷戦が行われている。空中では、全般防空、近接航空支援や空中給油、陸上では、着上陸、予想地域に部隊展開、奪回作戦などが描かれている。
 それらの中で考えた時、この研究を行うのは施設学校であり、施設科すなわち工兵の戦闘に関する研究ということだろうから、島の攻防の中で工兵が使うものなのだろう。仕様書にはチューブと書いてあるので筒状のものだ。工兵で筒状と言えば、爆薬(破壊)筒だろう。
 要するに「爆弾3勇士」が、抱えて敵陣に突入し自爆したことで有名なものである。本来は、これを鉄条網や地雷原に挿入し爆発させて、障害を除去するものである。筒状だから、つないで押し出せば、敵の射撃を避けながら、敵方へ移動させることができる。

 あるいは導爆管もなくはない。複数の爆薬を同時に起爆したり、樹木などに巻き付けて爆発させれば伐採にも使える。例えば建物の柱や橋梁の骨組みに使うことで破壊するというのも工兵の仕事だ。関東大震災で半壊した浅草の凌雲閣を除去したのは旧陸軍の工兵隊である。
 ただ、これらの工兵資材は、決して島嶼戦のみで使用するものではない。強いて言えばだが、一般論として島嶼は、大陸と比べ地積が小さい場合が多く機動戦をやり難いため陣地戦になり易い。また狭いということは砲爆撃が集中するから築城が重視されるだろう。とは言っても比較の問題である。
 爆薬(破壊)筒や導爆管には、トリニトロトルエンが使われることが多い。というより、軍用爆薬として一般的だ。ペンスリットとかコンポジション4とかもあるが、一長一短なのだろう。

 軍用爆薬の目的は、一般的に破壊することであるから、猛度、すなわち固体に対して、強い衝撃波を与えるようなものが選ばれる。それに対し産業用のダイナマイトなどは、岩盤などの除去を目的とするので、押し出すことが主眼である。衝撃波よりも発生ガスの量が重要となる。
 例えば坑道を掘削する場合、削岩機で爆薬を挿入する穴をあけるが、その向きや位置は岩盤をはぎ取りやすい形に穿つことになる。周囲を余計に破壊したのでは支保工が余計に必要になるから衝撃波が強すぎるのは禁物で、あくまでガスの圧力を楔のように使うのである。この際、酸欠ガスや有毒ガスが大量に出ては作業に影響するから、ニトロセルロースとニトログリセリンを合わせて打ち消すようにするなど工夫されている。
 つまり使用目的に応じたものが使われるということだ。

 それでは、なぜニトロメタンを使うのだろうか。一つ考えられるのは、これらの燃料系爆薬はエネルギーが大きいのだ。一般的な爆薬には、内部に酸化剤を含んでいるとか、爆薬自体が酸化剤としての機能を有している。あるいは分子構造内部に歪をもっていて、それが解放されるときに大きなエネルギーを出すのである。しかし、一般の燃料が大気中の酸素を利用するのに対し、熱源としては爆薬はエネルギーがその分、小さいのだ。
 ただし、分子の内部に酸化剤となる部分を含んでいるから反応速度が大きいという特徴がある。わざわざ酸化剤を遠くからもってくる必要がないのである。
 爆薬の反応速度は人工衛星なみに速いから近くに接しているものを破壊するには向いているが、広範囲を破壊するような場合、大量に必要になるのである。

 先に燃料気化爆弾について書いたが、これは爆薬の欠点である低エネルギーを解決するために開発されたのである。ただし、大きな反応速度を得るためには大気中の酸素を必要とするし、反応速度は低いので、爆圧のピークは小さくなる。その代わり高い圧力が長く続くという特徴がある。さらにエネルギーが大きいから熱の影響も大きい。
 ニトロメタンは、ガソリンと比べると数分の一のエネルギーしか持っていないが、少ない酸素でより多く反応できるという特徴があるから、燃料気化爆弾のように燃料を沸騰気化して大気を大量に巻き込まなくても反応することができる。つまり穴の中とか、土中でもそこそこの反応が可能ということになる。
 島嶼での戦闘では、航空機や艦船でなければ行くことができない。もちろん船舶は大物の運搬には向いているのであるが、荷役作業がネックになるし、輸送速度も低い、部隊が戦闘するためには大量の物資が必要だから積載量をなるべく減らしたい。ただし、陸上輸送も大物には向いていないので一長一短なのだが、陸上のように所々に補給拠点を作る場所も限定されてしまう。

 近傍の島なら問題にならないのかもしれないが、遠方の島では、結局現地にある物資で戦わなければならないのは、コルベットが局地戦を海戦から論じたのと同じところだ。
 要するに少しでも爆薬類も減らしたい、あるいは少ない量の爆薬で済ましたいのだろう。それに、ある程度、無理をすれば、車両や発電機の燃料にも使えそうだ。ディーゼルやガスタービンは様々な燃料に適応性がある。ラジコンに使われるグローエンジンは、プラグの熱で補助するにしても、圧縮点火を用いているからおそらく近い特性だろう。ディーゼルエンジンにガソリンを入れた場合の問題は、燃料ポンプの潤滑に影響を与えることのようだから、潤滑油を混合させれば影響は少なくなるだろうし、燃焼そのものの問題ではないようである。
 あるいは逆にニトロメタン用の爆轟チューブに、軽油やガソリンも使えるかもしれない。もちろん、発生ガスなどを考慮してのことだが。

 ニトロメタンは洗浄や抽出のための溶剤としても使われているから、武器の清掃などにも使えそうである。
 様々に応用が利き、使いまわしが利かないと、離島では枯渇しましたでは済まないということだと思う。
ただニトロメタンの仕事量がトリニトロトルエンの半分程度しかないのが気になる。黒色火薬などと同程度のようだ。
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