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不可解なのはエンジンの出力低下があったにしても、オートローテーションにより揚力を維持しつつ降下速度を下げ、安全に着陸出来る筈である。UH-60は双発であるから片方のエンジンが故障しても飛行を継続することが可能だ。一基のエンジンが破壊されると、他方のエンジンやスワッシュプレートなど装置が一気に破壊される可能性がある。隣のエンジンも破壊すれば出力は0になってしまうし、スワッシュプレートの機構が破壊すればローターのピッチは、サイクリックもコレクティブも制御できなくなる。現時点において私が推測するのは、コレクティブピッチの制御に異常が生じたことと、空間識失調の複合が原因ではないかと考える。パイロットは頑張って高度を維持しているつもりでも、実はまだ下向きに進んでいるという可能性がある。
UH-60の宮古島沖陸自ヘリコプター事故(令和5年4月6日)について、回収したフライトレコーダー(所謂、ブラックボックス)に記録されていた音声からエンジンの出力低下が起きていたことと、高度維持が出来なかったことが明らかになっている。
陸自ヘリ墜落直前、エンジン出力が急低下…フライトレコーダーに機長ら対応の音声記録 配信 2023年5月24日 05:01更新 2023年5月28日 15:39 読売新聞オンライン
https://news.line.me/detail/oa-yomiurishimbun/f1daarnrv2ou?fbclid=IwAR3xwc6fhRPOIHIOhFUnhqBN3Q70f4oA61AF9c8ryowkuajKh4lNdqIywvk
しかし、不可解なのはエンジンの出力低下があったにしても、緊急手順であるオートローテーションにより揚力(流体により持ち上げる力)を維持しつつ降下速度を下げ、安全に着陸(水)出来る筈である。風圧でローターを回転させて揚力を作るのである。
エンジンが故障しても、メインローターに繋がるタービンはフリータービンであり、そのままメインローターは空回りする筈だ。エンジンの出力低下については後で述べる。
要はオートローテーションにより安全に高度と速度を下げ海面に降りることができる。
しかし、機体の状況を見るならば明らかに高速で海面に激突したようだ。
オートローテーションに入るためには速度や高度が必要である。ローターを回転させる風力が必要だからだ。高度があれば落下することによって速度を稼ぐことができるが、低高度では出来ないので、ある一定以上の速度で飛行することが必要となる。
因みにR-22ヘリコプターのチャート(URLは下)では、前進速度なしの場合、シーレベル付近においては130m程(シティータワー新宿新都心や京都タワー程度)の落下が必要なようである。これが50ノット(約時速90km:テニスのスマッシュボール程度)なら70m程(太陽の塔程度)になっている。機種が違うから同じとは言えないが、実用性から似たものになるのではないだろうか。大きく異なれば安全性に問題を生じてしまう。
ロビンソンR22解説 12 オートローテーション
https://jl4ouf.blog.ss-blog.jp/2020-12-20-11
フライトレコーダーの音声以外の解析はまだ出て居ないし、低高度だったことからレーダーなどの情報は得られていないが、報道を通じ、住民の目撃情報や監視カメラなどの状況から150m程(新横浜プリンスホテル程度)の高度で飛行したと言われている。それらの情報には誤差があるとしても、その高度が事実だったとして、150m程の高度があれば十分に落下速度でローターを回転させることができるだろう。或はこれより低い高度であれば十分な速度を保っていたに違いない。 住民→
つまりエンジン出力低下だけでは墜落した原因にはならないということになる。まだ音声記録しか解析されていないので今後の調査を待つ必要があるが、現時点で何が墜落の本当の原因であるか推測してみたい。あくまでも現時点で得られる情報のみによる推測であり、今後変わり得るものである。
オートローテーションは、いわばグライダーの回転翼版である。グライダーは動力が無くても重力で落下する速度を利用して揚力を利用しているが、回転翼の場合もローターが回転し続けることによって揚力を発生している。 発生→
ローターの回転面のシャフトとブレード端の中間付近の、ドーナツ状の部分では、ブレードの迎え角を適切な範囲にすることで、ローターブレードを下側から抜ける風はローターの回転速度を上げる方向に作用する。風車(風力タービン)に風を当てて羽根に生じる風圧で回転速度を上げる理屈と近い。正確には衝動タービン(流体の衝撃を受けるタービン)ではなく反動タービン(流体の吹き抜けで吸い上げるタービン)として喩えるべきところではある。この回転が次で揚力を生み出すエネルギー源となる。
このローターの風車の役割りをする中間部分より外側のドーナツ状の部分では、よりローターの周速度が外側なので大きくなる。このローターの外側の部分ではブレードを抜ける風は、内側の部分と比べてブレードの前側から抜けるので迎え角が小さく(歩くと雨が前から当たる理屈)なり揚力を生み出す。つまり垂直上側(実際にはやや後傾)に向け、プロペラとして機能して揚力を生み出すわけである。
このことは前述のローターの内側の部分の風力で、外側で使う推進力を作り出していることになる。どの部分であれローターブレードを抜けて行く風の角度はオートローテーションを行う上で重要であることになる。そのブレードの角度によってオートローテーションを行う場合の、駆動のための風車の役割りをしたり、揚力発生のプロペラの役割りをするからだ。ブレードの角度はコレクティブレバー操作によるブレードのピッチとローターの周速度との関係で変化する。
このとおりブレードのビッチ角を操作するのが、コレクティブレバーの操作である。この角度を操作することによって落下速度を調整できるわけだ。
もし、このコレクティブレバーの操作が行われなければブレードを横切る風の角度を適切に出来ないので十分な揚力を得ることができず落下速度を調整できないということになる。内側部分で十分な回転力を得ることができなければ、外側の部分で揚力を発生できない。
もう一つ、全く別の原因として考えられるのは空間識失調が絡んで居る可能性だ。以前、掲載した記事(「ニュース解説:陸自ヘリ事故は、パーディゴ、低高度を高速飛行、機体姿勢は飛行方向に依存せず、海面上の高度と高度変化は瞬間的には把握が難しい、が原因か。」)ではそのことを書いたので参照されたいが、実際の機体の姿勢や進行方向がパイロットの感覚が食い違うのが空間識失調である。高度を維持するつもりで水平に飛行を保とうとしていても、実際は海面に向かって飛行している可能性が出てくるわけである。
そうなるとパイロットは頑張って高度を維持しているつもりでも、実はまだ下向きに進んでいるという可能性がある。
ブレードが破損した可能性もあるかもしれないが、もしブレードが分離すれば遠心力で周囲に飛び散るだろうし、落下地点と離れた地域でブレードが回収されるだろう。さらに複数あるブレードの内、一つが破損したならバランスが失われ機体自体が回転して、高度を維持するどころか操縦そのものが不可能になってくるので、フライトレコーダーの音声記録とは状況が異なりそうだ。これについては回収されたブレードからも明らかにされるだろう。
現時点において私が推測するのは、コレクティブピッチの制御に異常が生じたことと、空間識失調の複合が原因ではないかと考える。
機体の破損状態から高速で海面に激突したであろうことはまず考えられるところであるけども、さらに片側のドアが吹き飛んで先に海面上で発見されていることや増加燃料タンクの破損が左右で違うことからも、墜落姿勢が機体の機軸とズレていることが考えられる。つまり機体が水平状態かつ前進していたのとは異なる飛行状態であったことも考えられる。片側のドアは、おそらく海面に衝突した側と反対側であったのだろうと考える。機体が潰れる際に内圧が上がり、反対側のドアが吹き飛んだのではないか。傾いた状態で海面に激突した可能性については世界日報が紙面上の記事で述べていた。
あるいは、姿勢を制御するサイクリックスティックの制御が困難であったことも考えられる。
さて、今回発表された音声の状況からエンジンが異常音を立て、出力低下の警報音も出ていることから、これらの最初の原因になったのはエンジンの故障だろう。
UH-60は双発であるから片方のエンジンが故障しても飛行を継続することが可能だ。しかも二つのエンジンが同時に故障する可能性は一般に非常に小さい。
普通、同時に出力が失われるとするなら、原因はガス欠とか2基のエンジンに共通する燃料系統や制御のための電力系統だろう。但しこのようなものはフェールセーフの考え方でなるべく複数の系統を設けているのが普通だ。しかもガス欠のようなことは、少なくとも今回のようなVIPを搭乗させているような状況であれば考え難い。燃料が漏れたとしても燃料計などで発見され、適当なところに不時着する筈だ。
それでは2基のエンジンが同時に故障するという状況はどうしたら起きるだろうか。例えばバードストライクが考えられる。鳥の群れに飛び込めば両方のエンジンがほぼ同時に破損することは考えられることだ。しかし、それなら鳥の死骸などが機体とともに回収されるだろう。当該UH-60の構造を詳しくは知らないが、エンジンのインテークにはパーティクルセパレーターなどが設けられているのではないだろうか。そうなるとバードストライクで同時にエンジンが故障する可能性も減ってしまう。
そこで考えるのは、エンジンのシャフトやブレードディスクなどで構成されるローターが破損した可能性だ。これらの部品は1万RPMを超える高速回転をしている。もしこれらの部品が破損した場合、遠心力でエンジンシュラウドを突き抜けて、もう一基のエンジンを破損する可能性も出てくるからだ。
この様な事故が実際に起きている。ユナイテッド航空232便不時着事故だ。1989年07月19日アメリカ、アイオワ州スーシティーのゲートウェイ空港の上空37000フィートにおいて尾部第2エンジンのファンディスクが脱落し、油圧系統3系統を全て切断し、油圧による操縦が出来なくなった事故である。
私も、突き抜けたのは小さなタービンブレードであったが、穴の開いたJ79エンジンが工場に搬入されたのを見たことがある。ディスクなどは重いので、発電所のガスタービンが破損してディスクの破片が1km近くも跳んだ事故事例もある。
ヘリコプターは、エンジンや飛行制御に必要な機材が集中している。一基のエンジンが破壊されると、これらの装置が一気に破壊される可能性がある。下の動画サイトを見ると、如何にエンジンなどが集中していることが分かる。
【最新・特殊作戦型ブラックホーク】MH-60Mブラックホーク – 160th SOAR ナイトストーカーズ
https://youtu.be/cRR7fn576BI
隣のエンジンも破壊すれば出力は0になってしまうし、スワッシュプレートの機構が破壊すればローターのピッチは、サイクリックもコレクティブも制御出来なくなる。
しかも、その様な破壊は予兆なくやって来る。発生時点でどのような飛行条件かは分からない。
音声は、最後に「あっ」で終わっている。機体の制御が効かないなら、それを示す音声があっても良かろう。何が起きているか分からぬまま、気が付けば予想外の方向から海面が迫っていたに違いない。正面が海面ならいきなり「あっ」とは言わないのではないか。しかも低空飛行であれば速度も速かった筈である。
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