処理水放流の論考:中共批判 放射性核種60種類以上 特定部位蓄積?水クラスターの働き

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福島第一原子力発電所からの処理水の放流について中国政府が批判している。ALPS処理水には60種類以上の放射性核種が含まれている。トリチウムだけは除去が困難なので環境中に放出しているが問題としていない。「アルプス」によってこれらの核反応生成物を除去しているというのが日本政府の立場。完全に核分裂物質を除去するのは本質的に難しい。政府の基準の量まで62種の核種を汚染水から除去している。無電荷の粒子も水のクラスターがイオンを囲んで塊にして沈殿させる。「アルプス」では自ら放射性核種を除去するのであるが完全に取り除くのは困難。1年で半数が死亡するためには毎日2万2857リットル飲まなくてはならない。微量に残った核種は水クラスターに包まれた形になっており細胞膜を通過することが困難。高分子である抗体との結合ができれば能動的に特定部位に届け蓄積させることもできる。これらの技術を応用すれば放射性同位体の体内への侵入も容易になるだろう。


〇中共政府の主張に論拠はあるか。

 福島第一原子力発電所からの処理水の放流について中共政府が批判をしているが、これについて考察してみたい。中共政府は下の様に主張している。なお引用部分では中国政府と表記しているが、大陸側と台湾との区別を明確にするために本文では中共政府とする。 福島→ 処理→ 中共→

ALPS処理水の海洋放出に関する中国政府コメントに対する中国側への回答 令和5年(2023年)9月1日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press1_001548.html

 「トリチウムは希釈・処理されている点を説明する一方で、他の核種については説明していないとしています。また、中国政府は、ALPS処理水には60種類以上の放射性核種が含まれており、トリチウムのほか、多くの核種の有効な処理技術がないとしています。さらに、中国政府は、「基準値を満たすこと」と「存在しないこと」は別であり、ALPS処理水の海洋放出は、海洋環境や人体に予期せぬ被害をもたらす可能性がある」 放射→
 これに対し日本政府は「中国の原子炉を含む世界中の原子力施設の方が、年間でより多くのトリチウムを排出している」と説明している。日本→ 世界→
 なお、原子炉については本ブログ記事「中共が原子力空母か?」で触れている。 空母→

処理水のトリチウム量は「中国原発の1割」、中国の水産物輸入停止のWTO通知に政府反論書 2023/09/05 12:43
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230905-OYT1T50085/

 外交戦術的な事は別として、実の所、両者の主張は微妙に食い違っている。要するに中共政府はトリチウム質量数が3である水素の同位体)を中心に批判をしているわけではない。通常のトリチウムの排出とメルトダウンを起こした原子炉から排出される水とは別と主張しているわけである。もちろん日本政府は十分な除去を行っていると反論しており、放流しても問題はないが、中共の主張もまったく根拠の無いことでもない。 戦術→ 外交→
 福島第一原子力発電所は、沸騰水型軽水炉であり核燃料が集積した炉心で加熱して蒸気を作る、つまり圧力容器内の燃料棒の間を循環して熱せられた水が水蒸気となり、この水蒸気を直接タービン建屋に送り発電に使用するものだ。沸騰水型原子炉では冷却水が直接炉心に触れるので汚染されているとされるが、実際にはウラン燃料は二酸化ウランとして焼き固められたペレットであり、気体の放射性核反応生成物を除き、ペレット内部に放射性の核反応生成物は閉じ込められていて漏れ出すことは少ないのである。

 しかしながら福島第一原子力発電所はメルトダウン(原子炉中の制御棒や支持構造物等を含む燃料集合体が核燃料の過熱により融解すること。)を起こしているためペレットは高温で溶融しており直接、冷却水中に溶けだしている。いわばペレットをリキュール入りチョコレートに例えるなら、熱で溶けて中身のリキュールが流れ出すようなものだ。中共が主張するのはそこだろう。
 もちろん「アルプス(多核種除去設備)」によってこれらの核反応生成物を除去しているというのが日本政府の立場だ。トリチウムだけは除去が困難なので環境中に放出しているが、そこは中共側は問題としていない。中共の原子力発電所でも除去が困難であることは共通だからであろう。トリチウムの影響が小さいことは世界の共通認識であるから、それだけで日本政府を批判する立場は弱いと考えられる。

〇除去は可能か

 核汚染の際には除染を行うのであるが、通常、除染されるのは人体や建物、道路などであり、その際に水で洗浄することが多い。今回の処理水の場合、メルトダウンを起こした原子炉内を巡って来た水であり、その水を除染するわけだから問題が少し異なる。いわば原子炉内を除染した結果として汚れた水の方を除染する話なのである。
 なお除染剤については本ブログ記事「自衛隊調達巡り(129)除染剤2号」で若干触れている。
 なぜ一般的に水を除染に使うのかというと、水の溶媒(溶質を溶かす物質)としての機能と動水圧による除去作用によるのであるが、特に重要なのが水が優れて溶媒としての性能が高いからである。すなわち全ての物質を溶かし込むからだ。
 ということは逆に、溶質(溶媒に溶けている物質)を分離するのが難しいということが言える。もちろん油のように水に溶けにくい物質は沢山あるのだが、微細な溶質であると、それでも微量に取り込んでしまう。

 なぜこのように溶媒としての性質が強いかと言うと、水の分子の構造が原因となっている。水の分子はH2Oであるが、酸素(原子番号8の元素、16族)や水素(原子番号1の元素、1族)の原子が直線で結合しているわけではない。酸素Oの電気陰性度原子電子を引き寄せる強さの相対的尺度)が大きいため2個の水素原子を近づけ、+が両側にあるより一つの方がダイポール磁石のN極S極のように二つの極を持つもの。)を形成するので全体として「へ」あるいは「Λ(ラムダ)」の字の形になっている。この「へ」の字形状によって水分子そのものが電気的なプラスマイナスの極を保有しているのである。
 水は常温常圧においても蒸発するものの0℃から100℃では液体である場合が多い。しかし液体であるにも関わらず、ダイポールであるところの水分子同士は隣接しつつ互いにプラスとマイナスの側どうし向き合い水のクラスター(水分子の集合体)を形成しているのである。その電気的な力による結合は水素結合と呼ばれている。
 なお水素結合については本ブログ記事「自衛隊調達巡り(136)濃縮ウイスキー(南極用)何を濃縮?南極観測名物 度数55度」でアルコールの消毒作用と水素結合に関して僅かにだが触れている。

 水の分子量(分子中に含まれる原子量の総和)は本来、メタンブタンなどの低分子量炭化水素に近いので、ファンデルワールス力(原子、イオン、分子の間に働く力の総称)が小さく、この水素結合水素原子を挟んだ結合化学結合より遥かに弱い。)がなければ-数百℃でなければ液体にはならない。
 固体の水、即ち、氷の状態でもクラスターを形成しているが液体の水とは違う形となっており、0℃では六方体の結晶構造となり、さらに冷やすと立方体の結晶構造となる。液体の水の場合は正四面体の「結晶」を液体でありながら作っている。気体すなわち水蒸気になれば個々の分子はバラバラに散らばるが、圧力を加えて100℃を超えた熱水状態にすると維持され続け、温度上昇にともなってこのクラスターは壊れだし、超臨界水超臨界状態臨界点以上の温度圧力下においた物質の状態)の)になると完全に切れてしまう。

 この水素結合は水分子とだけ繋がるわけではない。一番結合し易い相手は親水基である。アルキル基しか持たない直鎖状炭化水素であるオレフィンは、そのままでは、まさに水と油で混ざらないが、アルキル基の端末にOHのヒドロキシ基が付加された所謂アルコールは水と混ざる。だからこそ水割りが可能なわけだ。
 なおヒドロキシ基については本ブログ記事「自衛隊調達巡り(129)除染剤2号」に作用について触れた他、「自衛隊調達巡り(200)130kL地下燃料タンクライニング施工 戦車への給油施設」でも僅かに触れた。 給油→

 電気的な偏りがある粒子とも結合する。界面活性剤がそれにあたる。カチオン粒子やアニオン粒子が出来れば、水分子の酸素原子側か水素原子側で結びつく。油のようなものも界面活性剤が取り囲み、表面の電荷を+か-に揃えれば良い。

日本界面活性剤工業会 界面活性剤ってなんだろう?
https://jp-surfactant.jp/surfactant/nature/index.html

 しかし水素結合できる官能基が無い物とも、水は結びついてしまう。例えば希ガス(周期表周期表第0族に属する元素の総称)だ。化学的に不活性で価電子(原子の最外殻に存在する電子)が組み合うところを持たないのだが、希ガスを水のクラスターで囲んでしまう。つまり水の網で包んでしまうのである。
 金属の場合も結びつく。そもそも核分裂によって出来た核反応生成物として代表的なセシウム(原子番号55の元素、1族)はイオン化傾向金属溶液中で陽イオンになる性質)が強いため水とは激しく反応し、水を分解して強アルカリ性にしてしまう。アルカリ金属(第1族元素の総称、容易に1価陽イオンの化合物を作り易い。)であるセシウムは、そのままイオンとして水に溶け込んでいる。ここにハロゲン(第17族の元素の総称、著しく反応性が高い。)などが混じれば金属塩を生じる。
 身近なところではナトリウム(原子番号11の元素、1族)と塩素(原子番号17の元素、17族)により塩化ナトリウム塩ができる。濃度が高くなり水の飽和量を超えると塩化ナトリウム塩が結晶化し析出固体以外の物質が固体として現れる現象)する。いわば塩田の理屈だ。飽和するまでは水は溶かし込むことができるが、飽和量を超えるともはや溶かすことが出来なくなる。塩化銀のような不溶性の金属塩も、親水性(水と結びつき易さ。)の官能基を金属イオンに付加すると官能基と水が結びつく。

 しかしこれも濃度が高くなれば金属同士が金属結合により結晶化してゆく。そもそも金属は表面を精密に平らに作ると、その表面同士を合わせただけで接合する。普通、金属は酸化物や硫化物などで環境中に存在するがこれらも結晶化する。似た者同士の物質は結合することでエネルギー的に低く安定になるためである。 エネルギー→
 その際、異物は居場所を失い排除される。これにより結晶化すると純度が高くなるわけだ。貴金属などは単体としても存在する。砂金が川底から採掘される通りである。大量に金属の原子や化合物があると結晶化して析出沈殿するからだ。こうなると水とは結合し難くなるが、水中に浮遊している間は粒子の大きさが光の波長に近づいてコロイド直径 10-5 ~ 10-7 cm程度の粒子が分散している状態)となる。そのままでは比重が水より大きいので沈殿してしまうのであるが、これも上手く処理すると沈殿しなくなりコロイドを維持することができる。炭素粒子は疎水性(水と結びつき難い、水に溶け難い性質)だがを加えることで沈殿せず墨汁を作ることができるとおりだ。
 なお疎水性については本ブログ記事「自衛隊調達巡り(136)濃縮ウイスキー」でも上記の水素結合とともに少し触れている。 
 以上の通り、水と本質的に水和するものと、疎水性のものがあるが、微量であれば疎水性のものでも強力に様々な物質を水は溶かし込むことが可能なのである。したがって厳密に言うならば完全に核分裂物質を除去するのは本質的に難しい。その点で言うなら中共政府の懸念に理由がないとは言えない。
 福島第一原子力発電所では、一度、メルトダウンにより汚染された水を既存の水処理装置と「アルプス」により浄化している。日本政府としては問題ないレベルまで62種類の放射性物質を取り除いていると説明している。

TEPCO 多核種除去設備(ALPS)
https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/genkyo/fp_cc/fp_alps/

 仕組みとしては鉄共沈炭素塩共沈及び吸着の工程を繰り返し除去している。鉄共沈では、汚染水中に硫酸鉄を加え、硫酸鉄が水に溶解した際に電解してできた鉄イオンを汚染水中に分散させる。
 続いてこの鉄イオンが分散された中にアンモニア水などのアルカリ性の薬剤を加えるとヒドロキシ基を持つ酸化鉄のコロイドが形成され、さらに本汚染水中に存在する他の元素の水酸化物粒子も水を介しヒドロキシ酸化鉄コロイドに結び付き凝集して沈殿する。ヒドロキシ基を持つアルコールが水に水素結合で結びつき混ざるのと同じ理屈だが比重の小さなアルコールと異なり、鉄を持つコロイドであるため比重が大きく沈殿するわけである。
 炭酸塩共沈は、炭酸塩で汚染水中の金属イオンが吸着される(炭酸塩で飽和すると金属イオンがヒドロキソ錯体や炭酸錯体を形成して吸着)プロセスだ。無電荷の粒子も水のクラスターがイオンを囲んで塊にして沈殿させるわけである。水の網(水素結合)で包んで塊にするイメージだろうか。

 その後、活性炭の層を通過させ残った粒子を吸着する。水のろ過などの際に一般的に行われるものだ。これで沈殿し難い小さな粒子も捉えるわけである。活性炭には微細な空洞が多数存在しその表面に炭素が結びつかない界面が広がっている。この界面でファンデルワールス力や共有結合により粒子を捕まえる仕組みだ。
 これらの工程を経て、問題ないとされる日本政府の基準の量まで62種の核種を汚染水から除去している。もちろんトリチウム水については化学的には水なので除去が困難と説明しているとおりである。

 水分子の2つの水素原子中にある中性子が合計4個多いので質量数で普通の水分子より4大きく、もともと軽い分子であることもあり、物理的に分離することは考えられるものの質量数が3異なるウラン235ウラン238の分離に電力を要するように分離することは難しい。
 トリチウム以外の物質については、化学的方法により、かなり除去することができる。日本政府は「1種類の放射性物質が含まれる水を、生まれてから70歳になるまで毎日約2リットル飲み続けた場合に、平均の線量率が1年あたり1mSv に達する濃度」の濃度限度を「告示濃度限度」とし、「廃棄物中に含まれるすべての放射性物質による影響を総合して「告示濃度比総和」と」して、「この告示濃度比総和が「1」を下回るように規制」している。

第6章 事故の状況 6.3 廃炉に向けた取組と進捗 放射性物質を環境へ放出する場合の規制基準
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r3kisoshiryo/r3kiso-06-03-07.html

 「2020年9月より東京電力ホールディングス株式会社が実施したALPS 等による再浄化の性能試験においては、トリチウム以外の核種についての「告示濃度比総和」は「0.35」」と発表している。つまり2リットル飲んでも1年間に0.35mSvということだ。半数致死量は4㏜だから1万1428年(中石器時代完新世が始まったくらい。)から今日までぐらい。)飲み続けると半数は死亡するということになる。1年で半数が死亡するためには毎日2万2857リットル飲まなくてはならないが、一辺が2.85m(一般的に2階の床から地面まで)の立方体を満たす量(ドラム缶で約115本)である。これだけの量を飲むと普通の水だったとしても1日でも無事ではあるまい。
 もちろん日本政府も全く核種が含まれていないとは言ってはいないし、数値で0ではなく告示濃度比総和の基準以内であることを公表している。中共政府が主張するとおり入って居るのである。
 そもそも先に書いたとおり完全に除去することは不可能だ。おそらくは放流する先の海水にも元々、水素から始まる、ほぼ全ての元素が含まれている。たとえば半減期の短い超ウラン元素の様な人工的に作られるような元素は、基本的に放射性崩壊してしまって自然界には無いというのが一般的な説明だが、崩壊や自然界の中性子などを浴びて微量には生成しているだろう。そうでなければ炭素14法による時代測定などできるわけがない。発生した放射性の元素の中には人間の寿命と比べるなら比較的半減期の長いものも無いわけではないからおそらく微量に存在している。ただ検知することが困難なだけなのである。要は海水そのものが処理水とそれほど違うものではなく、その海水に放流するだけの話なのだ。

 処理水とは説明したとおり完全なものにはなり得ないから、確かに微量な放射性核種は取り切れずに存在している。だが存在していたとしても、それが生体に影響を与えることは考えにくい。
 その理由は今まで述べたとおり汚染された水との結合が強いからだ。水溶性の物質は生体に取り込まれても細胞を取り囲む細胞膜を通過して細胞内に取り込まれることなく、発汗や排尿により体外に排出される。細胞膜は脂質二重層からなり、脂溶性の低分子物質は細胞膜を通過できても、水溶性の物質は、何か仕組みがないと通過することはできない。例えば水和し易い物質であるタンパク質のような大きな細胞外物質(リガンド)は細胞膜上にあるレセプターに結合し、エンドサイトーシスという物質を取り込む過程が働き、細胞膜が落ち窪みリガンドを包み込むことで、初めて取り込むことができる。親油性(疎水性)の物質はエネルギーを消費することなく濃度勾配に従って細胞膜を通過することができるのである。
 なお細胞については本ブログ記事「生ワクチン接種は生存 感染増強抗体産生 ウイルス物理的破壊 エアロゾル中は活性維持少数 少量ウイルスで免疫獲得・発病防止」で触れた部分がある。

 例えばビタミンには水溶性のものと脂溶性のものがある。脂溶性のビタミンを見るとビタミンA(レチノール)には疎水性の長い直鎖状の炭素鎖を持っている。アルキル基やこれを連ねた分子構造は疎水性の性質を有する。脂肪酸などの油脂も似たような構造だ。これに親水基を取り付けることで油汚れを除去するのが石鹸である。ビタミンDエルゴカルシフェロールコレカルシフェロール)は概ねベンゼン環様の網目や長鎖が合わさってできている。ベンゼン環やフェニル基などは疎水性の性質を有する。ビタミンEビタミンKもほぼ同様である。これらの脂溶性ビタミンにはヒドロキシ基やアミノ基も持つから水とも結びつくことは可能だ。

 一方水溶性のビタミンについてみると、ビタミンBには多くの種類が存在するが、ベンゼン環の一部が窒素など他の元素に置換されていたり、水和し易い酸素の二重結合が付加され、ヒドロキシ基やアミノ基に近い官能基が分子を取り巻いている。ビタミンC(アスコルビン酸)に至っては炭素の直鎖もベンゼン環もなく、ヒドロキシ基や酸素の二重結合で取り囲まれている。
 水溶性ビタミンには過剰摂取の症状はないが、脂溶性ビタミンには過剰症状がみられる。水溶性ビタミンに見るように疎水性の部分がない物質でなければ細胞内に取り込まれず蓄積しないのである。

 先に述べた通り「アルプス」では自ら放射性核種を除去するのであるが、水との強力な結合により完全に取り除くのは困難である。逆に結合が強いがため微量に残ったこれらの核種は水クラスターに包まれた形になっており、細胞膜を通過することが困難なのだ。
 なおビタミンについては本ブログ記事「自衛隊調達巡り(18)用賀支所 アスコルビン酸」で僅かに触れた。

 海中における生物濃縮化学物質生態系での食物連鎖を経て生物体内に濃縮されていく現象)も同じ理屈で起こらない。因みに大量に放出したセシウムであるが、調査によるとセシウムはガラスでモールドされた粒子として存在していることが分かっている。
 セシウムは先に述べた通りアルカリ金属であり、冷却水に触れた時に大量の強酸を作りだしたらしい。これが断熱材などに使われるガラス繊維などを溶解したと考えられているようだ。もちろんガラスに包まれているため体に取り込んでも化学的な反応を起こすことはない。
 有名な生物濃縮例としては、水俣病で問題となったメチル水銀がある。水銀には単体の金属水銀の他、酸化物、硫化物及び塩化物などの無機水銀も知られているが、これらの毒性は細胞内に取り込まれないので殆ど問題とならない。実際、毒性を起こそうと思えば蒸気により経呼吸で肺胞に送るとか、静脈注射で送り込む必要がある。それに対しメチル水銀にはメチル基が付加されているため疎水性を持ち、細胞膜を通過することができたのである。これによって海中の魚介類に生物濃縮が起き、それを食べることによって水俣病の症例が見られたのだった。

 放射性核種は時間とともに崩壊して行くし、そもそも半減期の長いものは崩壊そのものが遅く放射線は少ない。放射性ヨウ素などは事故後短時間でセシウムに崩壊している。 事故→
 セシウムはナトリウムやカリウムと同じ1族に属するアルカリ金属で、体内では、これらと似た移動をする。細胞膜にあるイオンポンプの働きによってナトリウムは細胞外の体液中に多く、カリウムは細胞内に多く集まる。細胞は体全身にあるわけだから特定の個所に集中することはない。しかも単体のセシウムそのものが冷却水と反応してしまっているので少ないようだ。
 これらの理由から、処理水中に微量にあるトリチウム以外の放射性核種もなんらの影響も及ぼさないことは確かであろう。

 トリチウム水に至っては化学的には普通の水に過ぎない、生物濃縮時も濃縮の反作用として排出される方の物質だ。水を排出しないと濃縮は起こらない。

〇これらの知見の応用

 これらの知見は特殊武器による攻撃や防御にも役立つ。例えば核反応生成物によるダーティーボムが話題に上がることがある。
 ダーティーボムとは放射性物質を爆発などにより散布する兵器である。この放射性物質の種類については特に限定はされないが、半減期の短いものは放射線濃度が高いが貯蔵間にも崩壊するし、逆に半減期の長いものは放射線濃度が低く効果が小さい。 兵器→

 放射性物質を大量に得るには原子炉により核分裂反応が使われる。そもそも核燃料自体が放射性物質であるが、これらは半減期が長いので放射線は弱い。そこで核分裂が使われるわけである。他に中性子を当てて誘導する方法もある。 誘導→
 核分裂によって当初、ヨウ素131が大量に作られるが半減期が8日と短い。ヨウ素(原子番号 53、17族の元素)は崩壊してセシウム137などになる。
 キセノン133などの放射性希ガスも発生するが気体であり拡散してしまうし、化学的反応性も低い。あとはストロンチウム90などもあるが、多くはセシウムの様だ。生成されるものとしてはイットリウム(原子番号39、3族の元素)やジルコニウム(原子番号40、4族の元素)の分量が多いのであるが、これらは重い元素で融点も高く、あまり広くは拡散しないようだ。他に、モリブデン(原子番号42、6族の元素)、ロジウム(原子番号45、9族の元素)、バリウム(原子番号 56 、2族の元素)、テルル(原子番号52、16族の元素)などが比較的多い元素である。この内、半減期が長いのはイットリウムの28年、セシウムの30年、ストロンチウム28年が割合長く、それ以外は数十日以下であるからヨウ素ほどではないにせよ、その数倍遅い程度で崩壊してしまう。また生体において消化管から吸収される割合もセシウムとヨウ素が100%近いのに対して、ストロンチウムとイットリウムが30%、バリウムが5%であり、両者から考えればセシウムやストロンチウム辺りが一番選ばれるのだろう。
 
 核爆発や原子炉事故では核分裂直後に反応生成物が拡散するからヨウ素など半減期が小さい物質による放射能を考慮しなければならないが、ダーティーボムで用いる場合は貯蔵している間に壊変してしまうし、容器内での発熱も大きいから現実的ではない。
 セシウム、ストロンチウム、イットリウム及びバリウムとも金属であるが、イットリウムを除いて水との反応性が高いため環境中では水酸化化合物として存在するようだ。イットリウムだけは表面に酸化被膜を生じて金属として存在する。
 水酸化ストロンチウム砂糖の精製に使われる物質)は水に対する溶解度が低いが、水酸化セシウムポリウレタンの原料、ポリオール(多価アルコール)合成触媒及び単結晶シリコンエッチング液)や水酸化バリウム有機酸の滴定や有機合成における加水分解に使われる物質)は水和性が高く潮解(自発的に水溶液となる現象)し易いようである。従って乾燥させる手段が必要だろう。炭酸ガスを吸収し易いという性質も有するようだ。

 水酸化バリウムについては、カリウムチャネル細胞膜に存在するイオンチャネルの一種)を阻害して神経障害が生ずるようであるが、他のものについては食塩程度の弱い毒性を持つようである。多量に摂取した場合、細胞内外のイオンバランスを崩すのであろう。
 何れも生物の体内においてはイオンとして存在するが、イットリウムについては単体の金属粒子として存在するだろう。セシウムイオンはカリウムイオンと同様に水分とともに体を巡って尿として排出される。ストロンチウムイオンはカルシウムイオンと同様に骨に取り込まれ易い。
 何れも金属単体だったり水中で電離したイオンであるため、体の部位によって取り込む量に差はあるが水溶性で体外に排出されやすい物質である。

 これは先に述べた通り疎水基を持たないためである。もしこれらの物質の分子構造にフェニル基ベンゼンに似た原子団である。6つの炭素原子が平面をつくる。)やアルキル基を導入するならば細胞膜を通過し長時間体内に留まさせることができるわけである。
 これらは低分子物質であり細胞膜の通過は浸透圧(膜で隔てられた2室の間を低濃度の溶液から高濃度の溶液に移動しようとする圧力)により受動的に行われるためある程度の体内濃度が必要である。
 高分子である抗体B細胞の産生する糖タンパク分子)との結合ができれば能動的に特定部位に届け蓄積させることもできよう。例えばCADM3抗体、scFv-Fc抗体、GPA33抗体など脳や筋肉、腸に特異的に集まる性質のものもある。しかし放射線を放出する同位体をこれらの抗体が取り込んだ時に抗体そのものが破壊される可能性もある。そもそも抗体は生体外では保存の難しいものであり兵器に活用するには難しいかもしれない。 破壊→
 しかし実現性に問題があろうと、このような知識の根拠があることは戦場において勇気に裏付けを与えるものである。未知の兵器が使われる虞があり、また使われた可能性がある場合などは特に必要だろう。「軍事行動における危険に対し、最も重要な精神は勇気である。」(1編1章21)とクラウゼヴィッツも戦争論で述べている。

 ほかに着目できるものとして造血作用のあるビタミンB12がある。ビタミンB12そのものがコバルト原子番号27、9族の元素)原子を持つ金属錯体である。もしこのコバルト原子を放射性同位体であるコバルト60に置き換えることができれば骨髄の造血細胞への導入に有効であろう。ただしビタミンBは水溶性ビタミンであり長時間とどまる物質ではない。選択的に造血幹細胞に取り込まれるだろうが、分子構造にフェニル基やアルキル基を導入できれば長時間体内に残留させることができる。
 いずれにせよ現状のダーティボムで用いられる放射性同位体は生体への作用が外部被曝が主になろうが、疎水性を持たせることにより皮膚の角質層からの浸透も容易になると思われる。また、さらにナノ粒子化させたミセル(溶液中で、界面活性剤などの分子がある濃度以上になると、急に集合してつくるコロイド状の粒子。)により水和性も同時に持たせる技術も出来ているようだ。これらの技術を応用すれば放射性同位体の体内への侵入も容易になるだろう。
 一方、除染についても放射性同位体については水洗が主な手段であるが、界面活性剤を用いることも必要となると考えられる。

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(資料番号:12.4.16-1)「原子力災害派遣に係る行動基準について(通達)」(統幕運2第70号 23.4.28)放射線除染により発生した汚水が1マイクロシーベルト未満の場合は、自衛隊基地等で一般廃棄物として処理
(資料番号:12.4.2-2)「放射性物質の除染と汚染廃棄物処理の課題―福島第一原発事故とその影響・対策―」『調査と情報』(国立国会図書館調査及び立法考査局)第743号(2012年3月29日)

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2018年6月21日 小学生、処理水に鮎放流 環境保全へ意識啓発
https://www.townnews.co.jp/0113/2018/06/21/436943.html
「中部水再生センターで鮎の放流式が6月15日に行われた。」「子どもたちは鮎の放流前にビデオを鑑賞し、下水処理場の役割などについて学んだ。」

カント純粋理性批判の解釈(上)真理の論理学
https://ncu.repo.nii.ac.jp/record/1157/files/B422-20150731-1.pdf
「純粋認識を抽象的に処理する理性」の持つ、「欠陥は、ヴォルフ自身の所為よりはむしろ、当時の独断的な考え方に帰せられるべき」ものである。」「「対象の中へ入れたものから必然的に生じる以外のものを、この対象に付け加えてはならない」という思考方法である。」「道徳を自覚する実践的形而上学への道を開くものである。」

北朝鮮が処理水放出を非難「危険極まりない核汚染水」「反人倫的な行為」TBSテレビ 2023年8月24日(木) 21:37 北朝鮮→
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/681370

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「カミソリやハサミの処理だと毛先がとがってしまいますが、ソフィーなら毛先が丸くなり、ムダ毛が下着からつき出しにくく、チクチク感もありません。」

中国王毅外交部長と新アヘン戦争 : ソフィー研究所電子報
https://sophie-mercure.blog.jp/archives/32915882.html
「対日本のALPS処理水海洋放出批判日本のALPS処理水について、中国へ説明したいという日本側の報道を突っぱねて、フリーダムな報道をしてきた王毅政治局員が事実上の外交」

体も心もヘルシーが一番 ! 睡眠が大事だと叫ばれる理由 おすすめコラム2018年8月29日 大和ネクスト銀行
https://www.bank-daiwa.co.jp/column/articles/2018/2018_135.html
「睡眠が少ないと日々の仕事上のストレスが蓄積されて、体や精神に支障をきたすマイナス要素もある。」「ケアレスミスが増え、複数の業務を同時にこなすマルチタスク処理に対応できなくなる。」「睡眠にはストレスを処理する機能もある。」

腰痛の症状と原因でよくあるお悩み 小磯はりきゅう院
https://koiso-harikyu.com/symptom/backache
「肝、腎の正氣を補い、余分な邪を処理することにより改善が期待できます。」「身体を酷使している場合は疲労が蓄積し、腰まわりの緊張につながってくる」「アレルギー アトピー・喘息の症状と原因」

バーチャルSNSの裏側 クラスター株式会社
https://pages.awscloud.com/rs/112-TZM-766/images/CUS-64_AWS_Summit_Online_2020_cluster-inc.pdf
「シーク(任意時点へのジャンプ、巻き戻し)処理や一時停止など仕様が複雑化するのが目に見えていた」

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