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画像はイメージ
中国海軍3隻目の空母とみられる衛星写真が公開された。9ブロックの並んだブロックには、船首のような部分もある。 汽缶や煙路の入るような空間が確認できない。 本来、軍艦の内部構造は複雑で、浸水時対処のための水密区画で区切られているから、商船のような、輪切り状のブロックにはし難い。だから、この記事の写真のブロックの並べ方は、どうも軍艦らしくない。もし機関が、スチームタービンなら、汽缶と煙路、そして煙突がある筈だ。各ブロックの輪切りの断面の部分に、大きさの異なる機能別の空間が掛からないように作るとすれば、接合部分に遊びになる空間を作ることになるし、機能部分が両方のブロックにわたるなら、水密区画を跨って作るのだろうか。多数の溶接個所に異常応力や空隙などの欠陥があれば、砲爆撃による至近弾の爆発でも亀裂が生じる可能性がある。洋上で真っ二つに折れた例があるぐらいだ。汽缶や機関の問題も気になるところだ。 中国の空母に、今後、運用の制限などの影響が出てくる可能性もあるだろう。
〇3番艦建造中の映像が公開された。
米政策研究機関「戦略国際問題研究所」(CSIS)は16日、中国・上海市の江南造船所で建造されている、中国海軍3隻目の空母とみられる衛星写真を公開した。船体構成する9ブロック、3隻目の中国空母か…米研究機関が衛星写真公開【ワシントン=蒔田一彦】https://www.yomiuri.co.jp/world/20200917-OYT1T50199/写真には、船渠内にブロックが9個前後確認できる。並んだブロックには、船首のような部分もある。工法は確かにブロック工法なのであろう。各ブロックには影が差している。隣の船渠に船体が完成した段階の船体があり、こちらも影が差している。その幅はほぼ同じだ。記事には8月18日の映像とあるから、影は短めだろう。すなわちこれらのブロックの高さは船の高さ程度ということだ。並んだこれらのブロックの上には格納庫と飛行甲板が載せられるのだろう。ブロックの映像があまり明確ではないのだが、汽缶や煙路の入るような空間が確認できない。甲板が載っていないブロックもあるが、ビートが横幅方向に張られており、大物を通すようには見えない。
〇軍艦の建造か?
輪切りのブロックをつなげる方法は、商船の建造に多くみられるものである。もちろん完成した船を輪切りにしたわけではないから、輪切りという表現はおかしいのだが、輪切りのような形のブロックを並べてという意味である。このような輪切り状のブロックをつないでゆく方法には、使用中の船渠を区切って、残りのスペース内で次の船の建造を開始できるメリットがある。同様に、軍艦でもブロック工法は今や常識である。しかし、軍艦の場合、輪切り状態のブロックにはなりにくい。船底部分こそ水線長方向に縦につないでゆくものの、その上に積み木細工のような積み重ねになる。私事であるが、私が防衛省の監督官だった当時、タービンの積み込み監督の機会に建造中の護衛艦「ひゅうが」を見たことがある。まさに積み木細工のように上に積み上げていた。もっともかなり建造の進んだ段階ではあったのではあったが。なぜそうなるかというと、商船の構造は、概ね金太郎飴で、船首、船尾及び機関部を除き断面の大部分を占める船倉が、水線長方向につながっていて、同じ形状のまま長さを延ばして行けば良いからである。しかし、軍艦の場合は、各機能が艦内の至るところに分散し、兵員室、弾薬庫、兵装の機関部、聴音機、CICなどが入り組んだ構造となっている。しかも浸水時対処のための水密区画で区切られている。したがって、軍艦の内部構造は複雑で、商船のような、輪切り状のブロックにはし難いのである。だから、この記事の写真のブロックの並べ方は、どうも軍艦らしくない。中国の造艦技術は商船の造船技術の延長上にあるのだろうか。
〇機関は何?
同型艦といわれる「山東」の機関は、Wikipediaによるとスチームタービンだろうと記載されている。もし機関が、スチームタービンなら、汽缶と煙路、そして煙突がある筈だ。しかし、「山東」の場合、艦橋後部の煙突らしきものが小型で、しかも周囲のアンテナ類より低い。中国が建造の参考にしたであろう、ロシアの「アドミラル・クズネツォフ」の煙突の方が大きく、多少ではあるが高いのである。しかも黒煙を上げる画像が存在している。 そこで「山東」の航行中の映像があるので見てみた。動画:中国初の国産空母、台湾海峡を通過 再選狙う台湾総統けん制か2019年11月20日 11:34 発信地:台北/台湾 [ 台湾 中国・台湾 ]https://www.afpbb.com/articles/-/3255711?cx_part=related_yahooもしや白灯油でも燃やしているのだろうか。映像の「山東」からは煙が見えないのである。衛星画像から汽缶のスペースがわからないと書いた。もしかすると「山東」や建造中の空母の機関はディーゼルやガスタービンではないのだろうか。もし、そうならスチーム供給の問題か出てくるから、電磁式カタパルトの可能性も出てくるのだろう。
〇見えてくる問題
機能別に分かれた区画を、どうやって輪切り状のブロックに収めるのか興味がわくところである。造船において、ブロック工法を行う理由はいくつかあるが、理由の中でも重要なのが溶接作業に関するものである。ブロック工法が始まったのが、そもそも溶接の採用が理由だった。造船では、どうしても上向き溶接をしなければならない場合が出てくるのであるが、なるべく避けたいものなのだ。なぜなら溶接時、鋼板上に加熱してできた金属の溶融池ができる。上向きになれば、いくら溶融金属の表面張力が大きいと言えども、多少は溶融金属が雨になって降ってくる。しかも不自然な姿勢での作業になるから溶接棒と溶接部分との距離が安定せず、品質管理上も問題がある。船体が組みあがった内部の狭い隙間のような場所では溶接作業を自動化したくても、機械を持ち込むことができない。巨大な船そのものを、ひっくり返すことはできないが、ブロックならそれが可能だ。しかも造船では特殊鋼が使われることが多く、溶接棒なども特殊なものが使用され、使用前に炉で焼いて乾燥させることが必要である。これは水分の存在による水素脆性を防ぐためであるのだが、当然、ブロック自体も雨水の影響を受けない工場内で行いたいものなのだ。各ブロックの輪切りの断面の部分に、大きさの異なる機能別の空間が掛からないように作るとすれば、接合部分に遊びになる空間を作ることになる。もちろん有効に使えれば問題はないだろう。もしかすれば中国には余裕があるのかもしれない。しかし、どんどん艦が大きくなり、それは重量の増大につながる。反対に機能部分が両方のブロックにわたるなら、水密区画を跨って作るのだろうか。水圧に耐える構造であれば、溶接もそれなりに慎重に行わなければならない。う。しかし、跨る部分が多数となると大変なことになる。述べた通り、船を船渠内に据え置いた姿勢ですべて溶接しなければならないし、溶接個所が増えれば熱による歪も蓄積されるだろう。それをすべて焼鈍するのだろうか。狭い空間内で非破壊検査を完璧にできるのかも気になる。もし、多数の溶接個所に異常応力や空隙などの欠陥があれば、砲爆撃による至近弾の爆発でも亀裂が生じる可能性がある。威力の大きな水雷なら、距離が離れていても、あちらこちろに破孔を生じ収拾がつかなくのではないか。艤装工事のための移動中に撃沈された旧日本海軍の空母「信濃」のように、水密が未完成であったばかりに、あっけなく沈没してしまったように、欠陥部分が原因で沈没してしまうこともあるかもしれない。また事故や荒天なども心配である。まだ溶接技術が未熟な時代の話だが旧日本海軍の第四艦隊事件の例もあるし、米海軍もリバディ船が洋上で真っ二つに折れた例があるぐらいだ。先に言及した汽缶や機関の問題も気になるところだ。メンテナンスのためのアクセス部分はどこにあるのだろう。まさか廃艦になるまで交換することを考えていないとは思えないが。このように見てみると、中国の空母に、今後、運用の制限などの影響が出てくる可能性もあるだろう。