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とわだ級FFMは掃海も行うという。戦闘艦であるFFMが掃海を行うような事態は自らDD等と共に戦闘を行う場合であり、危険を冒してでも機雷原を突破せざるを得えず、1つづつ遠隔で機雷掃討をしているわけには行かないから、掃海具を曳航して航路を啓開して行かざるを得ないだろう。
この任務に磁気機雷が感応する鋼船を使うのは無謀で、船体材料にオーステナイト系ステンレスを用いているのではないかと推測する。「先進船体構造技術の研究」でステンレスとFRPのハイブリッドを研究しているからだ。
鋼や鉄は常温でば体心立方格子のため、同じ軌道内の電子スピンで打ち消しの不揃いが生じ差分の磁力ができる。しかしオーステナイト系ステンレスは面心立方格子組織を固定化することで非磁性となっている。だが加工により、容易に組織が戻ってしまい磁性を持ってしまう。
しかも、体心立方格子は内部が狭いわりに出口が広い格子なので、ステンレスが錆び難くなる成分であるCrが格子から抜け出して結晶化してしまう。Crそのものは非磁性でオーステナイト系ステンレスが非磁性であることを助けてもいる。とわだ級FFMが平面的なのはステルス性の追求だけではなく加工を避けたいのも理由ではないか。
「先進船体構造技術の研究」の様に部分的にCFRPも用いている可能性がある。 ステルス性の面から言うと、CFPRはプラスチックであるとはいっても内部にカーボン繊維があり、多少は電波を反射するからこれだけでステルス材料という訳には行かないだろうが金属よりはマシである。もちろん従来から掃海艇の材料として使われているとおり非磁性である。荷重の加わる長大なものや、鋭角に突き出した部分に使うには支障があるだろうが、曲面などを作り易い。
普通、作業を行う艦船には細かい作業を要するからディーゼルエレクトリックを採用する場合が多いし、ガスタービンとは相性が良いのだが、掃海艇には使われていない。とわだ級も同様だ。電動機や発電機には磁性材料が必要だからだ。サイドスラスターを作動させる動力も、電動でないとすればどうするのだろうか。油圧スターティックという選択肢も無くはない。
真空中の透磁率は1.257×10^-6であるが、こられのハイブリッド構造なら近い数値になる。
もがみ級FFMの材質は公表されていないし、今のところ状況証拠しかない。公表されているのは掃海任務に使うされていることぐらいだ。海上自衛隊の編制からも、FFMをどのように運用するのか興味深いところだ。
〇もがみ級FFMとは
防衛省は、新たにFFMという新艦種の、もがみ級護衛艦を調達している。現時点(令和3年(2021年)末)で4隻進水しているが、まだ就役したものはない。これらは来年度までに艤装や公試を受け就役するようだ。計画では全8隻で、既に2隻が起工している。
このFFMという艦種の位置づけであるが、主力戦力の4つの護衛隊群に配置されない機動運用の十番台護衛隊に、従来のDE(沿岸汎用護衛艦)や旧式DD(汎用護衛艦)に変わって配置させるものである。有事にはフォースユーザーである地方隊に派遣されたり、護衛隊群の耳目となったり、必要に応じて様々な任務を行う。
おそらく戦闘で護衛隊群のDDが損耗すれば、FFMは補充にも充てられるのではないかと考える。そうなると地方隊の戦力などが無くなるからTV(練習艦)、ATS(訓練支援艦)、ASE(試験艦)、MST(掃海母艦)などで地方隊を補うのではないだろうか。
FFMのFとはフリゲートを意味している。かつて地方隊に、くす級PFが所属となっていたが、しばらくフリゲートに類する艦種は無かった。この艦種というのはなかなか厄介なものである。
ちなみにDDやDEの、Dはデストロイヤーで駆逐艦のことだが、駆逐艦という艦種は本来、水雷艇を退治するための艦種で20世紀になって出現した新しい艦種だ。
それに対しフリゲートというのは古い艦種で、後に戦艦(BB)に発展する戦列艦とは別に、バトルライン(戦列)に加わらない艦をフリゲートと称した。
軍艦が機走になるに従ってフリゲートと言う艦種は一度姿を消した。我が国でも明治初期ぐらいにはまだフリゲートと呼ばれる艦があった。
しかし、第一次世界大戦で小型の艦艇が対潜用などに多数必要になり、フリゲートという呼び名が復活したのである。この時、更に小型のコルベットというのも復活したが、これに駆逐艦も加えて役割や大きさが混合して各国で様々に使われているので一概に定義できない。
おそらくDEより結果的に大型化したのでフリゲートと称したのだろうが、駆逐艦より小型の艦をフリゲートと呼ぶ場合もあり、訳が分からない。米海軍などは駆逐艦より小型の艦をフリゲートと称している。かつての、くす級PFは米国からの供与(ソ連に供与したもののお古)だから、米軍に倣って、そのままフリゲートとしていたが、DDやDEより小型な艦であった。
だからFにこだわる意味はあまりないと思う。それよりDDH(ヘリ搭載護衛艦)が今や空母モドキになったが、あれが駆逐艦なのかと思わずに居られない。駆逐艦だからきっとモントレー条約に抵触せずにポスポラス・ダーダネル海峡を通峡して黒海に入ることが出来るのだろうか。ともかくも水雷艇を退治しない艦に駆逐艦を名乗る資格はない。インド洋の海賊退治にもDDHは参加していない程だ。
むしろ、この、もがみ級の艦種の導入にあたり意味があるのはFFにMをつけたことだ。つまりM(マイン)で、掃海艦・艇の役割も担わそうということがあるためである。
〇鋼船で掃海?
かつて掃海任務には駆逐艦やコルベットが充てられていた。しかし磁気、音響及び水圧に反応する感応機雷の出現によって鋼製の船体をもつ艦が掃海を行うことが危険になった。鋼製の船体では自ら試航船となって命と引き換えに掃海することになるから、命がいくつあっても足りないことになる。
そこで木造の掃海艇が作られるようになったのである。今では掃海艇の材料になるような樹木が枯渇しFRP製に置き換えられた。
問題は、はたして掃海任務も担わせようとしているFFMは鋼製なのかである。機雷は水雷の一種で機械水雷の省略だが、水雷は水中で爆発するため、圧力が空中に逃げることなく、破孔から浸水させることができるため19世紀後半から強力な兵器として出現した。水雷を使うと大型の軍艦でなくても、大型艦を轟沈することができるからである。
日露戦争では日露双方で戦艦が機雷で失われている。近年、南鮮の哨戒艦が水雷で轟沈した。北鮮の魚雷による攻撃だとされているがどうも怪しい。浅海域で魚雷を艦底で爆発させることは難しいからだが、魚雷(魚型水雷)にしても機雷にしても、水雷である。この時は水雷によって生じた真空によって船体が真っ二つに折れたと言われている。これらの事例から機雷に触雷すれば、一万tにも満たないFFMなどひとたまりもない。
そう考えると鋼製の艦で掃海を行うことは危険極まりないことになる。自律型水中航走式機雷探知機OZZ-5を搭載するようであるから、これらを活用した機雷掃討を主に行うのだろう。機雷掃討では1つづつ、探して破壊して行かなければならない。大量に機雷で封鎖されれば、長期間艦隊が足止めされてしまうし、平時の掃海とはわけが違って、悠長なことはやって居られない。遠く離れて、遠隔でというわけには行かないだろう。
専用の掃海艦・艇と異なり、FFMが掃海を行うような場合を考えれば自らDDなどと共に戦闘を行う場合になるのではないだろうか。そのような場合、危険を冒して突破せざるを得ないだろう。回数機雷などもあるから、最初は掃海ヘリなどで行うにしても、いずれは自ら試航船とならねばならない。
このように考えると鋼製の艦が掃海任務を担うのはあまりに無謀となってします。それではFFMは何で出来ているのかが疑問とってくる。
〇平面的なデザイン
いくつか画像が公開されている。これらをみると平面の多いフォルムである。
初公開!FFM護衛艦「もがみ」真下を通過
https://www.youtube.com/watch?v=r2NJAstriF0
海上自衛隊:新型・多機能護衛艦(FFM)「くまの」進水、通常の護衛艦機能に機雷戦能力をプラス
https://car.motor-fan.jp/article/10017647
従来、ステルス形状は、電波の反射方向を局限するため直線や平面的なフォルムになると言われてきたし、実施ステルス性を求めたものであるのは疑う余地が少ない。しかし理由はそれだけだろうか。私は、別の理由が隠れているのではないかと考えている。
船渠内の画像を見るとビルジ付近まで平面が続いている。もちろん吃水は搭載物の重量を海域の塩分濃度、さらに旋回時の傾斜などで変化するから、その時にレーダー波に暴露するというのもあろうが、ビルジ付近が海面上に露になるとすれば転覆沈没する時だ。単にステルス性だけなら水線下は関係ない。
〇先進船体構造技術の研究
下の様な防衛装備庁の文書がある。この文書内に外部評価委員会の概要の欄があり、日程が平成20ねん12月2日となっている。今から10年前のものだ。
「先進船体構造技術の研究」に関する外部評価委員会の概要
https://www.mod.go.jp/atla/research/gaibuhyouka/pdf/AHMS_20.pdf
別紙1をみると先進船体構造として図が示してある。ハイブリッド主船体として、中央船体がステンレス鋼製、上部構造、艦種及び船尾がCFRP製となっている。
もう数年前になるが市ヶ谷のグランドヒルで行われた防衛装備庁のシンポジウムでも、ハイブリッド船体が展示されていた記憶がある。まあ私もステンレスを用いるのは防錆対策ぐらいにしか見ておらず、CFRPとの接手の方にばかり注視していた。展示されていた模型も、とても掃海艇の類の形状ではなかったし、護衛艦に掃海をさせるなどとは夢にも思わなかったからだ。
しかし、この二つの材質を考えればどちらも非磁性体である。ただしステンレスがオーステナイト系ならばだが。
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