宣伝広告ではないものに隠した宣伝　広告と思わせず、広告意図非明示　解釈を相手に委ねる。否定的表現を活用　警戒感緩和

2021年7月7日未分類

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　ならば本意を表に表さず、我々は仲間であると誤認させれば武力を使わずとも敵国を屈服させることができることになる。
　脅威を敵に感じさせなければ、敵国民に戦う意思を生じさせることもない。敵国国民の多数に我々が味方だと信じさせることができれば、一部に抵抗勢力が居ても集団圧力をもって精神的に屈服させることが可能となる。
　例えば前述の「ご存知」であるが、それに続く言葉が暗に敵国政府の失政とか不祥事など批判する言葉であれば、その国の人々は政府を批判する言葉を自然と探すようになる。「～ないと損」であれば自らの政府に協力すると損であるかのような印象を植え付ければよい。
　述べて来たとおり、取り上げた２つの例のような言葉を、宣伝の意図とは関係ない記事に忍び込ませれば、読者に批判を生じさせたり、抵抗感を感じさせずに自然に意思を誘導させることができる。
　人間の脳は多くを後天的な学習知識に基づく批判を行う新皮質と、より本能に近い辺縁系との拮抗関係で情報を処理している。
　マズローの五段階説にあるとおり人間の欲求は階層構造を持つ。より低次の欲求の方が高次の欲求を阻害するという仮設である。
　生存や種の保存といった低次の欲求は辺縁系の働きによるところが強い。言語の処理は新皮質で大部分処理される。殊に書き言葉については後天的な学習によるところが大きい。
　このような脳の構造から高次の機能を働かせると人間は批判的になり、より警戒的になる。従って、宣伝内容と記事の趣旨と近い内容では、宣伝の意図を見破られてしまい強い抵抗感を与えることになる。
　むしろ宣伝内容とかけ離れた内容の記事であれば、高次の脳機能は記事の内容を理解するのに忙殺され、宣伝の文言を無批判で吸収させることができる。
また、取り上げた「ご存知」や「～ないと損」と言った内容は、なるべく低次の欲求に関係するものが適している。衣食住や危険、健康といった情報には、脳は強く影響されるからだ。
　また近年、ＳＮＳによる情報が増えている。もし、宣伝内容に真正面から触れるならプラットフォーマにアカウントを取り消される可能性もある。情報統制が厳しい国なら、そもそもそのような主張をする情報を有害なものとして遮断してしまう。
　しかし一見、有害と分からなければ、妨害をすり抜け易くなる。いわばこのような検閲は、膨大な情報を処理しなければならないため現在は自動検索によっている。自動検索は単語に依存するから、不明示な意図を見抜くのは容易ではない。
　我が国には、古くから和歌や俳句の伝統がある。短い文章に意味を暗示させる術を磨いてきた。暗示的表現の技術を更に磨くことでより有効な宣伝が可能となるだろう。
　ただし、ここで説明したような心理戦などは、効果の評価が難しく、即効性もない。なかなか武力戦との呼応が難しいのが最大の難点である。したがって国家戦略レベルで平時から戦時に亘って行わざるを得ない。ましてその宣伝ないようが不明示で受けての取り方によるともなれば、より不確実性が高まる。
　戦わずして勝つというのは理想ではあるが、やはり戦力の中心とはならないのだろう。

北陸大学
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