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自衛隊調達巡り(183)「認知の優越を巡る戦い方」に係る調査 ←出来るの?

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入札日:令和4年1月7日
陸上自衛隊教育訓練研究本部
「認知の優越を巡る戦い方」に係る調査
https://www.mod.go.jp/gsdf/eae/kaikei/eafin/koukoku/20220107-MEGS-0880.pdf
https://www.mod.go.jp/gsdf/eae/kaikei/eafin/koukoku/20220107-MEGS-0880-1.pdf

 この調達は教育訓練研究本部研究部が作成したものである。「2.2 項に示す調査を行う」とあるが、2.2項にあるのは資格等だ。おそらく「2.3 調査」の間違いではないだろうか。
 その調査の項を見ると、各項間の関係が分かり難かったり重複があって、元の文章の読解が難しいが、要は認知の優越を巡る戦いについて
1 概要(目的、対象、手段、要領)を比較して意義と特性を明確化(特に民主主義国家と非民主主義国家の特性)
2 各紛争でその紛争全般に及ぼした影響を明確化
3 近年における諸外国の取り組みを明らかにする
4 目的、対象、影響、手段、要領等を予測する。
5 陸上自衛隊が保持すべき能力について検討する。
ということのようだ。
 目的、対象、影響がWhatとWhy、手段、要領がHow toということだろうか。単に現状や手法を把握するだけではなく、原理や因果関係などを解明したいという意図もありそうだ。民主主義がどう影響するのかも知りたいようである。

 かなり突っ込んだ内容で、一筋縄では行かない内容の様だ。果たしてこれを受ける企業があるのか少々疑問である。むしろ大学や国立研究機構などと協同研究すべきような感じがする。
 とくに認知について扱っているのだが、この領域自体がかなり難物だ。まず用語の定義などが、研究者毎に範囲が広いというのか、そもそも捉えどころがないものが多い。
 様々な観測機器とかメソッドが開発されて来てはいるものの、まだまだ直接捉えられないものが多く、対象が内面的、主観的なもののため観測に限界があるからだ。定量化も困難なものが多い。したがって解釈も難しい。

 ハード・プロムレブ、これは心の理論などと訳されるが、この分野は特に難解だ。意識、感情、情動、自我などがなぜ生じるのか、そもそも科学の対象成り得るかという問題まで含んでいる。
 確かにニューロン単体の機能などはかなり解明されているし、神経伝達物質も数々の物が知られるようにはなった。今日、神経の投射などを追いかけたりしては居るが、その先が見えていない。
 例えば意識という用語を一つとっても大変多義的である。臨床の場で意識といえば意識レベルを話題とする場合が多い。しかし意識調査などと言った場合、かなり高度な認知機能に関わってくる。政策などで国民の意識などと言う場合になると、個体を離れて社会心理学の分野に入り込むことになる。

 おそらく、人間の心理とか認知というものが多くの階層性を持っているのだろう。分かり易いのはマズローの欲求5段階の仮説であるが、この仮説のように、それぞれの階層が別々の処理を行い、相互に関連し合っているのだと思う。
 たしかに脳の解剖学的構造も新皮質と旧皮質とか、大脳新皮質と辺縁系、などのように多重的であるし、各感覚野のように局在的な部位に対して、前頭前野などは高度に連合して機能している。
この前頭前野は、新皮質の中でも、厚みなど個人差の大きい部位だそうである。各感覚野などは、それに比べ個人差が少ない。 新皮質内においても、階層が見られるのではないか。

 本調達のように、認知全体を対象とすると、各階層の機能に差がありすぎ、焦点を絞りきれないのではないかと思う。
勿論、認知機能は各階層が個別に機能しているわけではないことは、ゲシュタルト心理学が示すところではあるが、かと言って要素をまず明らかにしないと、前には進めないのではなかろうか。いきなり調査を企業に丸投げするのではなく、さまざまな研究機関と協同で研究などを行わないと、的確な仕様を示せないのではないかと考える。
 もっとも調査対象としているのは認知そのものではなく「認知の優越を巡る戦い」として実行された事例についての調査ではある。How toだけの研究なら、その部分のみに特化することはできる。それなら文献を当たればそれなりに情報を入手して、それを纏めることぐらいはできるだろう。しかしながら、目的、対象、影響と言ったWhatやWhyに関わるところまでを対象に含めるなら、やはり認知の中身に触れざるを得ない。
 認知を一つの領域として、伝統的な陸海空と近年、注目される宇宙やサイバーに並べる考え方は最近のものである。昨年の夏頃に出て来たようだ。
日本では電磁波を並べることが多いが、世界的に一般的とは言えず、同様に認知も、まだ領域として取り上げるところまでには至っていないだろう。

 私も、まだ時期尚早と思っている。 なぜなら、それらは他の領域の作戦における支援手段としては重要であるとしても、領域を掌握下に、それをいわば目的とする迄には及んでいないと思うからだ。
 どうやら中共の李大鵬や路紅衛らが2019年に主張したことが影響しているらしい。中共には三戦や超限戦といったものが今世紀初頭前後に主張されてきているから、その流れであろう。
 これらの発想が新奇なものかと言うなら、そうではない。心理戦などは古くから戦争において使われてきているからである。何が従来と違うかというなら、認知研究の進展があり、経験的なものからより科学的根拠に基づいた手法が可能になったことが背景にあるだろう。

 だが、実際の所、進展したとは言え、人間の認知についてはまだまだ入口の感が強い。認知領域についての地政学はまだまだ、大航海時代の端緒に過ぎない。
 なお、この調達の仕様の作成部隊等名は教育訓練研究本部研究部であり、窓口となっているのは第2研究室である。
 教育訓練研究本部は、2018年(平成30年)3月27日に陸上自衛隊幹部学校と陸上自衛隊研究本部を統合して発足した組織だ。陸上自衛隊は2013年に各職種学校の研究組織を統合しており、さらに幹部学校にあった研究部門も加わって陸自の研究機関が統一された形となっている。

 この第2研究室が対象としているものが何なのかを示す資料がないので、何をしているのかは分からないが、研究本部からのスライドであるとするなら、1~5研究課の内の第2は部隊編成及び部隊運用に関する調査研究の担当となる。第2研究課には元々、核、生物、化学兵器などの特殊武器研究官が置かれていたから、認知領域の戦いも、特殊武器の延長上に捉えられているのかもしれない。
 どうであれ、認知はまだ未開の世界である。十分な知見の無い現状下で、この調達でどれだけの知見を得られるのかと言ったら、期待はできないだろうと言わねばならない。

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