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ニュース:ウクライナ戦局解説 4月2日現在

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〇第三次世界大戦の導火線

 3月15日、ポーランド、チェコ、スロバキアの3国の首脳がキエフに赴きゼレンスキーと会談した。実質的な会談と言うよりは意思を表明すると共に、陣中見舞いの様だが、なぜそれを行ったのだろう。
もちろん、それ自体意味のあることだろうが、何かもっと重要な意味があった筈だ。
 その意味を考えると、その3国の首脳が一緒に訪問したに意味があるのではないか。この3国に共通するのは西スラブ人の国家だと言うことだ。
 しかもモスクワ公国にウクライナを飲み込まれるまで、この領域はポーランド王国だったのである。要するに、この3国にとってウクライナ人は親戚なのである。

 ウクライナの戦争にNATOが介入できないのは第三次世界大戦に発展するからで、先般のミグ29戦闘機供与の話も潰されてしまった。
 これらの国の国民にとっては、ウクライナ人の惨状を黙ってみていることは忍びないことに違いない。
 事実、ウクライナの避難民を一番受け入れているのはポーランドだ。彼らにとってウクライナ人は肉親なのだろう。

 おそらくウクライナのために参戦したいとする国民世論が政権を突き上げて居るに違いない。この3国の政権に、せめて出来ることはキエフへの訪問だけだったに違いない。だかそれで収まるだろうか。
 現政権が参戦を拒否すれは、より強硬的な政権に代わることだってあり得る。
 ここで、別の不安要素が存在する。ベラルーシだ。ロシアと共に経済制裁を受けているのであるが、ロシアよりも経済基盤は弱いだろう。しかも昨年、ルカシェンコ政権は存亡の危機にあった。それを救ったのがロシアだった。然れば政権基盤は脆弱であるに違いない。国民の不満を外交に向けるのは常道であるから、ベラルーシが暴発する可能性は低くはない。

 ポーランドがベラルーシにチョッカイを出す可能性は否定できない。政府が行わなくても国民が義憤で行うことは十分にあり得る。ここで衝突が起きれば、ロシアの飛び地カリーニングラードがあり、NATOにとってもバルト3国への回廊であるスバルキギャップがあるのだ。
 第三次世界大戦に繋がりかねない導火線である。

〇東部戦域への兵力移転

 ロシアの国防省が、3月25日に作戦の重心について、ウクライナの東部にある親露派の支配地域を拡大する方針を明らかにした。
 当初からロシア軍の目標は、東部2州を制圧することであったようだ。この真の目標については今まで秘匿され、キエフなどへの侵攻や更に西方への攻撃も臭わせていた。
 実際、ロシア軍の攻撃は全土制圧を目標とするかのような動きをしていた。ロシア軍の投入兵力は10~15万であり、まさかと思ったが、おかしいと思いつつも動きからそのように思わざるを得なかった。

 もし、当初から2州のみを目標とすると公言してロシア軍が作戦を行えば、ウクライナ軍もかなりの兵力を東部に集中させていただろう。しかしロシア軍が全土を侵攻するかのような態勢を取ったため、ウクライナ軍は防衛兵力を各地に向けなければならなかった。
 キエフへの攻撃も一時15km程まで接近していたが、兵力の抽出転用に伴い、ロシア軍は戦線を整理したようだ。当面、キエフ方面は防御につとめ東方の攻略に集中するのだろう。
 このロシア軍の後退について、欧米諸国はロシア軍の作戦失敗と見る向きもあるが、それは当たらないと考える。なぜなら、先に述べた通り、もともと兵力が少な過ぎるからで、もし100万程の兵力があればキエフも攻略して居ただろう。10万余りの兵力でキエフ攻略は望むべくもない。陽動が主たる目的だったというのは合理的だ。それに、マウリポリなど東部への攻撃は順調に進捗している。

 まず東部を占領し、おそらく東部に存在しているウクライナ軍を包囲殲滅するのだろう。そのあとでキエフなどについては対処すると思う。現状の配置でも兵力を増強さえすればキエフも落ちるだろう。
 ウクライナ軍は善戦しているのだが、それは前方に出て来たロシア軍の小部隊を待ち伏せしているからだ。戦闘規模も分隊規模で諸兵科協働ではない。このような戦闘では戦局を短期に変えることは望むべくもない。戦闘の戦略的な主導はロシア軍にあると見ざるを得ない。

〇ウクライナの泥濘化

 戦闘が開始される前から、気温の上昇によりウクライナの大地が泥濘化するためロシア軍の侵攻を妨げるのではないかと言われていた。実際にロシア軍の車列が路上に長く並ぶなど影響しているようである。
 泥濘化するのはウクライナの土質に関係がある。ウクライナの土はチェルノーゼム(黒土)という土壌で、降水量が少ない環境において草木が腐敗し分解したものに岩石が風化した粘土などが混ざったものである。
 降水量が多いと、分解物が流れてしまい、また寒いと分解せず、乾燥しすぎると草木がないため、チェルノーゼムは出来ない。

 チェルノーゼムの粘土成分には、結晶性粘土鉱物のモンモリロナイトが多いのだそうだ。ちなみに日本の土に多い火山灰黒ボク土壌は非晶質粘土鉱物のアロフェンが多い。
 モンモリロナイトの成分はアルミニウムの含水珪酸塩で、土がアルカリ性の時に出来るものだ。草木の分解物は、木灰の水溶液がアルカリ性を示すように、アルカリ金属塩が多いためアルカリ性になる。このアルカリ成分がモンモリロナイトを作った。
 モンモリロナイトが形成される機序は様々な説があるようだが、火山の熱水の中で作られたようだ。大元はカンラン石、まあマントルの材質だが、マグマだろう。

 結晶化するには溶融や熔融することが必要である。時間を掛けて冷えながら結晶化するからである。融けているマグマや、それが地下水に溶け込んだ水溶液ということだ。
 アロフェンの場合は非晶質だが、簡単に言えばガラスだ。結晶が出来るより急激に冷却され固化しないと形成されない。噴火などで放出され空気中で急冷固化すると出来る。
 モンモリロナイトの場合は、結晶化する際にアルカリ、つまり塩基イオンなどが結晶構造が出来る際に影響するようだ。電気的な影響などで原子が置換したり、化学的な引力などが影響するに違いない。この際、アルカリではなく、酸性、要するに水素イオン過多ならカオリナイトになるそうだ。カオリンというのは磁器の原料のことである。

 結晶化というのは、核となる粒に同じ種類の原子や分子が吸着されて、その時に粒と同じ原子や分子の配列が作られながら拡大して行くことのことだ。身近なものとしては雪の結晶がある。
 ウクライナに火山はないが、太古の昔に何処からか流れて来たのだろう。それが長い時間を掛けてできたようだ。
 このモンモリロナイトは結晶性であるため、結晶格子内に水を取り込む性質がある。またアルカリ金属塩自体も浸透圧の原理で水を吸収するだろう。そして吸着した水を離さない。これが泥濘の原因となる。

 泥にはチキソトロピーという性質がある。力を加えると一時的に液状化するのだ。これは日本でも地震の際に液状化として知られているものである。
 車両の車輪やクローラが土壌に力を加えると液状化して沈み込むわけだ。このチキソトロピーは力を除くと、再び固体化する。つまり沈んだ車輪などが埋まってしまうのである。
 モンモリナイトを多く含む、チェルノーゼムは内部に含む水分によって泥濘の状態が長期間続くのである。

 土木工事においては、地質改良が行われる。チェルノーゼムのような有機土壌は路床などには向かないので除去してしまう場合が多い。また圧力や振動を加えると液状化するので、基本的には転圧などを行って土中の水分を除く。
 しかしチェルノーゼムは転圧したぐらいでは水分を除去できない。土木工事では水抜きの礫層を作るとか、パイプを打ち込んで水分を除去するのだが、戦場でそんな悠長なことは不可能だ。

 その様な場合、丸太を敷くなどして、いわば浮力や反力を利用する。ただ大量の丸太にも量の限界があろう。
 この様な場合、セメントなどを散布したらどうだろうか。表面が硬くなれば地表に水分が上がってこなくなる。内部が泥濘でも表面にシートを掛けたような状態になれば、全体が撓むことによって重量を支えることができる。

 一時的に車両の重量による轍の窪みができても、時間が経てば水圧で平面に戻るだろう。表面の固化層の面積を広くとれば重量を十分に支えられるだろう。
 予め車両の通行に先立ち、セメントなどを散布することで車両の通行が容易となるのではないかと考える。
 ウクライナの地形は西部国境付近とクリミア半島を除き、殆ど平野である。しかしながら比較的起伏が多いのだそうだ。であれば尾根部分は比較的水分が少ないだろうから、谷となる部分に集中してセメントを投入すれば作戦を容易にできるだろう。

〇極東における睨み合い

 ウクライナでの戦争は極東でも西側諸国とロシア相互の睨み合いの状況を作り出している。 このところ津軽海峡や対馬海峡でロシア艦艇の行動も頻繁となっている。
 そのような緊張下のなか注目される動きがあった。3月8日と10日に米海軍と海上自衛隊が相模湾で共同演習を行い、米海軍ヘリが訓練魚雷を発射した。その状況は米海軍第7艦隊のホームページと防衛省のプレスリリースで公開されたそうである。下のサイトにその模様が紹介されている。

米海軍ヘリ、相模湾で魚雷を発射
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/atsugi/220310sagamiwantorpedo1.html
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/atsugi/220310sagamiwantorpedo2.html
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/atsugi/220310sagamiwantorpedo3.html

 しばしば北朝鮮が弾道ミサイルを発射すると、日本政府やメディアは政治的理由と結びつける。あれは弾道ミサイルの開発のスケジュールで動いているもので、たまたまその時期の政治状況で打ち上げが前後することはあるだろうが、いきなり開発中のミサイルを政府の都合で発射することなどは不可能だろう。
 しかし、この魚雷発射訓練はまったく北朝鮮のミサイル発射とは事情が異なる。日本に配備されている海上攻撃ヘリコプター飛行隊の魚雷発射訓練は通常、サンディエゴで行われてきたそうである。それを初めてわざわざ相模湾で行ったのだ。
 昭和36年(1961年)4月19日の調達庁告示第4号で、北緯34度57分、東経139度09分の点と城山燈台を結ぶ線の北方全区域、すなわち相模湾のほぼ全域を、「相模湾潜水艦行動区域」つまり米軍の潜水艦が「射撃演習を除くすべての種類の演習を行なう」区域として提供されているとのことだ。ちなみに令和3年(2021年)に実施された東京オリンピックのセーリング競技会場に接する海域である。

 つまりこの海域は潜水艦のための訓練海域であって、米軍ヘリコプターが模擬魚雷であれ魚雷を発射することは認められていない海域で敢えて行ったのである。
 その理由を米海軍や防衛省は明らかにしては居ないが、潜水艦からの魚雷発射訓練では、支援の為の艦艇が周囲に居たとしても、公開する絵にならない。つまり映像を撮影しホームページで公開するための訓練だったのではないか。
 使用している魚雷はMk54のようだが、平成16年(2004年)の10月に量産が開始され米海軍が供用中の魚雷で開発などとは全く関係ない。

 北朝鮮の弾道ミサイルのように開発に絡む発射ではないから訓練場の手筈さえ整えば実施可能だ。現在のウクライナでの戦争に合わせて行った可能性は高い。
 さらに言えば、第7艦隊HPの記事には、演習を行った場所を「東京湾」としている。相模湾は下田に面し実はロシア海軍には縁がある場所なのだが、一般のロシア人には分からないかもしれない。しかし東京なら日本だと直ぐに場所を思い浮かべることができるだろう。
 極東においてもロシア海軍に睨みを効かせているという政治的メッセージなのだろう。

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