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本文は世界戦略総合研究所ニュースレター「特集 中華人民共和国の脅威と憲法改正」掲載依頼を受けて作成したものを一部手を加えたものです。
一般社団法人 世界戦略総合研究所
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我々は脅威の語彙を朧気に理解をするが脅威について熟慮して来ただろうか。
近年、情報セキュリティ分野でも脅威が定義されるようになったり、脅威という言葉を暇がなく見聞きするようになったが、古くは昭和初期の演説の中にも使われている。
情緒を語るには大和言葉は優れているが、理屈を述べるには同音異義が多く不向きな面があり、議論は少なかったろう。
脅威は認識するもので、受け手によっても変化し、敵の意図については忖度が必要だ。
コペンハーゲン学派は定着に注目し「発話によって「何が安全保障上の脅威であるか」が定められて」初めて、安全を保障する行為がその事象はその国・地域において新たな安全保障上の脅威となるとする。
棍棒と石礫しか持たぬ未開人の所に中共軍がやって来て、石礫の投射距離を超える所に大砲を据え弾幕射撃をすれば、昇天するまで未開人は中共軍の脅威を感じることはない。
日本人は知らないが、我が国に対して少数民族問題としてアイヌや琉球の分離工作を世界中で展開している。
中共は国連の人権委員会を牛耳っていて、少数民族が存在するかの如き、これらの宣伝を有利に進め、日本国外においては盛んに宣伝を行っている。
トランプ政権は二国間交渉を進めたが、バイデン政権や西欧各国の政策には環境問題など多国間交渉への関心が強く、それだけに中共の介入は避けられない。
中華人民解放軍(以下中共軍)の活動が活発化し脅威という言葉を日頃見聞きすることが多くなったと私個人は感じる。我々は脅威の語彙を朧気に理解をするが脅威について熟慮して来ただろうか。
小学館デジタル大辞泉には「強い力や勢いで脅かすこと。また、脅かされて感じる恐ろしさ。」と脅威を説明している。平凡社世界大百科事典には、脅威に「心理学,生態学,国際関係の三つの側面」があるそうだ。
近年、情報セキュリティ分野でも脅威は定義されている。国際規格ISMS/ISO27001には「リスクを発生させる要因、情報資産に損失を与える要因のことで、結果的に組織が保有する情報資産に対して害を及ぼす、または発生する可能性のあるもの」と脅威を定義する。
脅威の語源は不明である。脅威は漢語だが中国語では威胁と書く。中共軍も注目する兵法の古典「孫子」に脅威の語があっても良いが、中国語表記を含めない。確証はないが脅威は明治に作られた造語ではないか。なぜなら西欧列強の脅威を訴える林子平の「海國兵談」の冒頭や水戦の章にも脅威の文字は見られないからだ。近年、脅威という言葉を暇がなく見聞きするが、岸信介、東条英機、昭和5年の浜口雄幸の施政方針演説中にも見られ、昭和2年の浜口雄幸の立憲民政党関西大会演説の中に既にある。古くは大正14年の芥川龍之介「大導寺信輔の半生」や大正12年の台湾日日新報「欧洲再乱の序幕」の中にも脅威が見られる。軍事的なものでは関東軍参謀として中国とも関わった石原莞爾の「戦争史大観」(昭和16年)の中にもある。但し何れも頻出は少ない。それ以前には大和言葉で言い表しただろうが、単語として確立して日本人は強く脅威を認識したのではないか。情緒を語るには大和言葉は優れているが、理屈を述べるには同音異義が多く不向きな面がある。明治の碩学が脅威という用語のみならず、意義まで生み出したのだろう。
https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/pm/19580129.SWJ.html https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/pm/19411117.SWJ.html https://worldjpn.grips.ac.jp/documents/texts/pm/19300425.SWJ.html https://www.ndl.go.jp/modern/img_t/064/064-001tx.html 大導寺信輔の半生 四 学校 https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/46672_34485.html 欧洲再乱の序幕 戦争教育 http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/jsp/ja/ContentViewM.jsp?METAID=10152959&TYPE=IMAGE_FILE&POS=1 戦争史大観 2、第二シュレージエン戦争(一七四四―四五年)https://www.aozora.gr.jp/cards/000230/files/55635_49037.html
言語が異なるから比較は難しいが和訳文中にはFルーズベルト、ヒトラー、そして実際に中共軍と戦ったDマッカーサーの演説にも脅威の文字が見られる。因みに英語のthreatは、thrauta(苦痛)やtrewd-(押し付ける)が語源で、thrust(強く押す)と同じ語源なのだそうだ。多くの民族の攻防があった大陸では自明の言葉なのであろう。
https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2383/ https://usc.ushmm.org/wlc/ja/media_fi.php?ModuleId=0&MediaId=119 https://americancenterjapan.com/aboutusa/translations/2378/
現行法令には法律10件、政令1件、府省令20件、委員会規則1件の32件に見られ、定義規定にはなく自明の用語とされている。最古のものは昭和32年施行だが、廃止法令を含めば更に古いだろう。昭和12件、平成19件、令和4件であり、近年程頻出している。因みに旧憲法にはない。何れも抽象的な意味の使用だ。
軍事的な用例では、戦史叢書各巻題名にはない。前述「戦争史大観」中「墺軍の交通線を脅威して墺軍を屈伏せしめんとした」とある。敵を屈服させる道具ということだ。また「欧洲再乱の序幕」中「独逸を常に脅威するアルサスは依然仏国の手に」とあり、これを道具として用いる使い方だ。
訳文では名著「戦争論」に「机上の計画を現実に実行に移す際には障害のみならず脅威にもなりうる」、「戦争術概論」に「敵の兵站線に脅威を及ぼすように」とあるとおり影響を与えるものとしている。
西廣整輝は防衛大綱策定に当たり「基盤的防衛力は、脅威との関係を一たん断ち切って独自の観点から導き出すが、後から周辺の脅威に照らして、その防衛上の意味あいを検証する。」と説明し、防衛力整備策定の比較材料として扱った。
未完の「脱脅威論」 : 基盤的防衛力構想再考
千々和 泰明 掲載誌 防衛研究所紀要 = NIDS journal of defense and security 18(1) 2015-11 p.131-148 http://www.nids.mod.go.jp/publication/kiyo/pdf/bulletin_j18_1_6.pdf
ハルノートで中国撤兵要求の関わりで知られるモーゲンソーは国益との関連で「第一次的には一国の物理的・政治的・文化的一体性の保持、および、他国からの脅威に対する自己保存」として、ネクタラインは同じく「第一に、自国の安全保障が他国の脅威に晒されることから守るという国家の存立の維持の為の国防上の利益」とし国益に影響するとした。
松下政経塾 塾生レポート 日本の国益を考える 小野貴樹/卒塾生 https://www.mskj.or.jp/report/1130.html