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入札日:令和3年6月23日
陸上自衛隊中央輸送隊
令和3年度陸上自衛隊演習における荷役器材リース等に関わる役務(フォークリフト(15t×15台、23t×19台)、22tクレーン1台、コンテナトレーラ20台、コンテナハウス2台)
https://www.mod.go.jp/gsdf/yokohama/hp2015/06bosyu/nyusatu/koukoku/pdf/kou03_009.pdf
大変興味深い調達である。日本の陸上兵力が一丸となって行動する際の所要の一端を示しているからである。
納入先が日本全体に及び、しかも網羅的に補給処を含んでいるからだ。別紙第1に荷役器材の配送先及び配送時期の表がある。ここの駐屯地欄を、存在する補給処に換えると次のようになる。
北部方面補給処本処、近文台弾薬及び燃料支処、早来燃料支処、日高弾薬支処、安平弾薬支処、白老弾薬支処、多田弾薬支処、沼田弾薬支処、足寄弾薬支処、苗穂支処、東北補給処本処、反町弾薬支処、船岡弾薬支処、多賀城燃料支処、関東補給処、松戸支処、古河支処、吉井弾薬支処、富士燃料出張所、用賀支処、関西補給処本処、桂支処、祝園弾薬支処、三軒屋弾薬支処、九州補給処、鳥栖燃料支処、健軍支処、富野弾薬支処、大分弾薬支処
この中には需品を扱うところもあれば、医療品を扱う用賀や、落下傘も扱う松戸、施設資材を扱う古賀など特殊化した補給処もある。
つまり陸上自衛隊が活動するのに必要な補給品を扱う補給処が勢ぞろいしているわけだ。
なお、このリスト以外に朝日分屯地があるが、ここにはオペレーター込みで、クレーンがリースされるようだ。
自衛隊が保有する物は、原則的に今使うものである。つまり有事に必要だからという理由は財務が認めないし、使っていないものがあれば会計検査院が死蔵品として指摘するだろう。保有することができるのは日常的に部隊維持に必要なものや、有事に備えて訓練の為に必要な物、あるいは警戒待機の為に必要なものに限られる。
各補給処は、日常使う荷役器材を保有しているが、有事になれば足りないということになる。したがって状況が緊迫すれば緊急に調達をかけるわけだ。リース期間は、一部異なるものもあるが、大方、8月16日から11月30日の間である。
この調達は、演習の準備のためのものであると同時に、この調達自体が演習なのである。つまり本番の有事にもこれと同じような調達をかけることになる。
おそらく、この仕様書にある数量は、日本の陸上兵力を活動させる最低限度だろう。しかしこの数値がベーシックであるに違いない。
軍隊には、行動の際にベイシック・ロードといって基準となる補給品の数量が定められている。それが補給処から部隊へ移動させるのに必要な数値なのだと思われる。
もし私が、日本と敵対する国家の情報参謀なら、この情報を見つけたら偵察衛星や電波傍受部隊の情報活動を活発かさせると思う。これはまさに軍事行動の兆候に他ならないからだ。戦争というものは、なかなか偶発的には起きないものである。兵站が整わなければ部隊は動けないからだ。例えば昭和25年6月25日にいきなり南鮮から攻撃された北鮮の部隊が南鮮を反撃して、一気に釜山まで進撃するなんてことはあり得ないのである。
ここで更に興味深いことは、補給処とは別に、駐屯地を納入先としてコンテナ・トレーラとコンテナ・ハウスを調達していることである。補給処は戦時には駐屯地から戦場へ移動する。それに対して駐屯地業務隊は留守を守るわけだが、ここのこれらの荷役器材が配置されたのは補給所となるのかもしれない。補給処は組織であるが、補給所は物資の集積地のことである。基本的には動かない。だから駐屯地業務隊の分任物品管理官を納入先に当てているのではないだろうか。
真駒内駐屯地向けが多いが演習地は北海道なのだろうか。これに対し、一部のフォークリフトの納入先が日出生台と十文字原の演習場になっていたり、コンテナ・ハウスの納入先が健軍駐屯地になっているのは、補給の拠点が西部方面隊の戦域になるということだろうか。
この調達自体が中央輸送隊によるものであるから、これらは輸送のためのものなのだろう。
なお、この調達では20ftコンテナを扱うことを基本としている。20ftコンテナというのは国際規格のコンテナで、これを1個積載できる船舶を1TEUという。日本では日本独自の国鉄規格である12ftを見ることが多い。これは国鉄のコンテナ貨車に積載することを考えて規格化されたものである。面白いことに南極に行く砕氷艦のコンテナ・ラックが12ftで作られている。流石に南極大陸にはJRの貨車はない。