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可動率は戦力だ 発射後ミサイルの故障 飛翔継続し敵を騙せ FMEA 活用とセンサー利用 CASTと物材研の新技術紹介

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〇稼働率は戦力に直結

 戦力は数である。それは分かり易い。しかし数があっても稼働率が低ければ、少ないのと変わらないのである。
 ランチェスターの法則というのがある。数の二乗に戦力は比例するというものだ。数と戦力が比例するだけなら、両者の比で生き残るが、二乗になると、生き残るものも二乗で減るから、あっという間に全滅してしまうという理屈だ。
 作戦の立案とは基本的に、戦場にどれだけ多くの戦力を集中できるかを練ることである。全体の戦力が敵より小さくても、敵を分断したり各個に撃破すれば、その戦場では有利になり得るわけである。
 特に戦力の小さい側にとって、兵器が確実に動くことは重要なことだ。
 一つの例としてミサイル防衛の例がある。
「諸外国等におけるIAMD(Integrated Air and Missile Defense)に関する取組」(防衛研究所令和元年度特別研究成果報告書)の81頁には、「我が国の迎撃ミサイルSM-3は北朝鮮弾道ミサイルの数(中国弾道ミサイルとは更に)に比べて圧倒的に不足しているのである。」としているが、不足している以上、故障は是が非でも防止しなければならない。迎撃すべき敵の弾道ミサイルより、迎撃ミサイルが少ないとなれば、可動率は猶更重要な数値だろう。しかも防御側は攻撃時を選ぶことができないから、高い可動率を、日常的に長期にわたり維持し続ける必要がある。
 可動率を上げるためには、平時から兵器の品質を高度に維持しておかなければ戦時に可動率を維持できない。あらゆる部品には欠陥が隠れている可能性を否定できないから、初期欠陥を整備時などに排除する必要がある。また金属は錆びるし、ゴムやプラスティックなどは劣化するから、何もしなくても塗装、塗油や定期交換が必要だ。特に爆薬などは、いわば生鮮品で保管期間が限られている。結合部分は緩んだりヒビが入ることもある。戦時には平時ほどには整備しずらくなる。したがって戦いは平時から始まっているのである。

〇ミサイルは一発勝負

 軍用機や軍艦、戦闘車両などは、破壊されない限り、新型に更新されるまで長期間使われ、何度でも戦闘に使うことができる。しかしミサイルなどは、発射すれば再利用できない。
 もちろん、ミサイル等を発射可能な状態に維持して置くことが、抑止力として使用しているという考え方もできるが、それも発射することを前提とするからのことである。その一回の発射があり得るから抑止力となる。張りぼてでも抑止力になるが、たまには発射しないと敵は疑いだす。例えば、しばらく北朝鮮は長距離ミサイルを発射していないが、だからこそ、各国の専門家は、パレードに出て来るミサイルが本物か疑い出している。
 いずれにせよ撃つべきときに故障すれば、そのミサイルはミッションアボートである。その分の戦力が失われるのである。発射前なら再整備することもあり得るが、発射信号が一度ミサイルに伝われば、もはや不発射弾として扱わざるを得ない。点火に至る火薬回路に種火が残っている可能性があるから、退避が必要になってしまう。信号が出なくても電池や圧力源となるアキュムレータが活性化してしまえば、それらを交換しなければ、すぐには使うことができない。
 軍用機や軍艦に搭載されるミサイルなら、搭載量に限りがあるから、そこで故障が起きれば支援設備に戻るまで戦闘できなくなる。特にミサイルは機関砲弾などに比べ搭載数が少ないから影響は大きい。

〇故障を検知

 したがってミサイルにとっては、なるべく早い段階で故障を検知することが重要である。ところが戦闘状態では先に述べた通り、人員が退避していたり、空中にあってアクセスが不可能になる。
 人が近づけないため、ミサイルには自動試験機能がある。内部のコンピュータによって、試験信号を流してシステムが作動するかチェックするわけだ。とは言っても、それで故障が分かるというだけで、もちろん事故につながるようなものであればシーケンスを停止することには大きな意味があるものの、部品交換などができるわけではない。
 まして発射後では基本的に何もできない。衛星打ち上げ用のロケットなどであれば、系統を二重にするなどフェールセーフ対策をしているが、ミサイルには、重量や大きさに余裕がなく、普通はそのようなことはしない。
 JAXAが打ち上げて、小惑星を探査してミッションを成功させた探査機「はやぶさ」では、度重なる故障を克服したが、短時間しか飛翔しないミサイルには対処する時間もない。
 しかし、重量や容積や値段に響かない程度で、しかも自動で対処できるようなものであれば、稼働率を向上させることができるかもしれない。
 短距離空対空ミサイルとかマンパッドのようなものはもちろん小型すぎるし、飛翔時間も数秒だから対処の余裕はないが、大陸間弾道弾や長距離地対空ミサイルなら出来ることは限られても可能性はあると考える。
 軽量なセンサーとプロセッサがあれば、たとえ正常な性能に復帰できなくても、無駄玉にはならないかもしれない。
 先に述べたとおり、多くの機械に配管が使われている。ミサイルの場合であれば、例えば液体燃料ロケットエンジンや、巡航ミサイルの様にジェットエンジンで飛翔するのであれば、燃料系統に使われるだろう。固体燃料のロケットでも、ノズルやフィンなどを作動する油圧系統がある。他にもアキュムレータからの作動ガスとか、冷媒液を流すなど様々だ。
配管に関わる部位が破壊に至った例は多い。流体に振動が生じてインペラ破損に至ったのがH2Aロケットの8号機である。
LE-7エンジンターボポンプと8号機失敗の原因https://www.jstage.jst.go.jp/article/tsj1973/29/3/29_3_139/_pdf
噴射ガスが流れるノズル部を配管の一種とみなせばM-Vロケットの例がある。 M-Vロケット4号機打ち上げ失敗の原因究明及び今後の対策 https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2013/06/10/1335987_002_2.pdf                    小惑星探査機「はやぶさ」においてもスラスター用のヒドラジン漏れの例があった。 「打上げからイトカワへ」 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AF%E3%82%84%E3%81%B6%E3%81%95_(%E6%8E%A2%E6%9F%BB%E6%A9%9F)#%E6%89%93%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%A4%E3%83%88%E3%82%AB%E3%83%AF%E3%81%B8
 私が扱っていた地対空ミサイルにも、保管中にアキュムレータのガス漏れにより油圧が作動しなくなる例があった。
 こういった故障は実際に作動させないと異常が分からなかったり、発射後に発生したりするものである。発射前に検知できれば、別のミサイルに取り換えることなどが可能であるし、発射後でも、流量を抑えたり、流路を変えたりすることで、破壊に至らないようにできる場合もあるだろう。100%の性能が無理でも無駄玉にしないことは可能であるし、それが戦局に影響することもあり得るのである。
 どの部分が故障すると、どこに波及するかはFMEAにより分析できる。それを自動化してバルブの制御や代替機能への切り替えができるならばミッションを継続できるわけである。

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