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入札日:令和4年3月22日
海上自衛隊横須賀地方総監部
吾妻島NО.1屋外タンク貯蔵所開放検査等
https://www.mod.go.jp/msdf/bukei/y0/nyuusatsu/04-1-2381-3720-2001.pdf
海上自衛隊の調達公告には仕様書がほとんど付かないので得られる情報が少ない。
履行場所は横須賀造修補給所吾妻島貯蔵所である。吾妻島というのは十進表示の緯度経度で、35.30147067082784, 139.6502360652832 をほぼ中心とする島で、横須賀の軍港のほぼ中央にある。1889年(明治22年)に吾妻山麓を堀割して新井掘割水路を作り箱崎半島を切り離して島にしたものだ。1877年(明治10年)に横須賀が軍港に指定され、この箱崎半島は砲台とするため陸軍が1882年(明治15年)に買い上げている。1900年(明治33年)に海軍が買収して大日本帝国海軍吾妻島燃料・弾薬貯蔵所貯油所として使われてきた。
大東亜戦争の結果、米軍が接収し在日米海軍横須賀補給センターの管理下で、航空機燃料・艦船燃料等の貯油施設(吾妻倉庫地区)として使用されている。
この公告には履行場所として上に上げたとおり、横須賀造修補給所吾妻島貯蔵所が要求元である。横須賀市のサイトには次のようにある。
海上自衛隊関係施設の概要
https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/0535/kithitai/01/kaizyou.html
「吾妻島貯油所として、横須賀造修補給所が自衛艦隊、練習艦隊などの燃料補給業務を、横須賀弾薬整備補給所が自衛艦隊、練習艦隊などの弾薬等の整備調整業務を行っている。」
これを見る限り海上自衛隊の施設である。しかし、多くの資料には米軍の貯油施設となっているのである。燃料タンクの保有検査であるから、使用者や所有者が検査を受検するのが筋であろう。
神奈川県のサイトには下のようにある。
22877.txt – 神奈川県
https://www.pref.kanagawa.jp/documents/30425/22877.txt
「一部区域は、海上自衛隊が吾妻島補給所(貯油タンク6基、約20,000kl)、弾薬施設(艦船用誘導弾薬整備・調整)、吾妻島信号所、気象観測所(港務支援)及び横須賀水雷整備所(水雷武器整備・調整)として共同使用し、その面積は、本施設の約30%に及んでいる。」
「昭54.12.19 日米合同委員会において本施設の一部を海上自衛隊水雷調整所として共同使用(2-4-a)とすることが合意された(昭54.3.14旧軍港市国有財産処理審議会承認)。平元.10.16 軌道敷地約2,136㎡が返還された。」
こちらには吾妻島補給所という名称が出てくる。上の横須賀造修補給所吾妻島貯蔵所と食い違う。なお、横須賀造修補給処は平成10年12月8日に横須賀造修所と横須賀補給所が合併したものである。それにしても吾妻島補給所という名称は出てこない。
防衛省のH30年度電話番号簿の342頁を見ると、造修補給所資材部の中に吾妻島貯油所という名称が出てくるのである。因みに燃料監視室、ローディングアーム、作業員待機所兼(墨塗)、当直室及び事務用FAXの番号が出てくる。他に横須賀弾薬整備補給所の中で、補給課の中に資材係(吾妻島)、機雷整備科の中に吾妻島FAX(整備第1部)、誘導弾整備科の中に吾妻島FAX(整備第2部)の番号がある。
この番号簿には吾妻島貯油所とされているのである。それぞれは同じものなのか、組織図上に上下、並列に並ぶ関係があるものなのか、よくわからない。因みに補給所という名称であるが、陸空の自衛隊においては組織名としては存在しない。組織名としては補給処が用いられる。補給所は補給するために設置する場所程度のものである。もちろん海上自衛隊では規則体系が別だから、その辺りの用語の違いもあるだろう。
様々な名前はともかくも自衛隊の組織となっているが、問題は米軍との関係である。
上の「22877.txt – 神奈川県」には、タンクは6基となっている。様々な資料を見ても、吾妻島をグーグルマップで見ても地上式、地下式、大小取り交ぜ37基のタンクがあるようだ。
ということは、これらの内の6個が自衛隊で、残り31基が米軍なのだろうか。そう考えるのが一番順当ではあるのだが、下のサイトをみると共同使用という記述を見ることができる。
Military横須賀 基地の街から日本を考える
https://www.dairo.website/kiti/pg1103.html
「吾妻島貯油所・横須賀弾薬整備補給所吾妻島整備施設等
自衛艦隊などの燃料補給や弾薬等の整備調整が行われています。
箱崎町(米軍施設を共同使用)」
吾妻島合同救急搬送訓練
https://www.mod.go.jp/msdf/yrsf/rescue_exercise.html
「海上自衛隊と米海軍が共同で展開する離島」とある。
日米地位協定の2.4.aにも規定があるとおり、日本側の国有財産を共同施設として提供している可能性も考えられるところである。その中で米軍に貸している国有財産を一時的に日本側で使わせてもらうということだろうか。
下のサイトには29基という記述がみられる。
かながわの基地はいま(2)横須賀、要の機能強化 神奈川新聞 | 2016年10月4日(火) 11:50
https://www.kanaloco.jp/news/social/entry-2339.html
「計29基のタンクを備え、米海軍のほか陸軍、空軍、海兵隊にも燃料を供給。米軍が持つ貯油機能としては西太平洋で最大の拠点」
31基とは数字が食い違うが時期によって違うのかもしれない。確かにグーグルマップでは建造中の様子も見える。
いずれにしても、この調達で検査の対象となるNО.1屋外タンクはどれなのか、日米のどちらが使用するものかも明確に分かる資料はない。
このNО.1屋外タンクが吾妻島補給所とする6つの内の一つなのか、米軍が使用しているものを日本が検査するのか、これだけではさっぱりわからない。
日米地位協定第24条に「日本国は、提供施設等を合衆国に負担をかけないで提供し」とあるので、米軍が使用する施設は日本の国有財産だからだ。自衛隊専用のタンクがあるとしても、燃料が満杯なら米軍側のタンクを使用するということもあるかもしれない。なにしろ入っているものは油種が同じなら、帳簿上の数量だけ分ければよいことだからだ。それにタンクの容量に、いつも余裕があるわけでもない。液体の燃料ではタンクに入らないからといって積み上げて置くわけにも行かない。日米両者で融通している可能性もある。ACSAの取り決めによって日米間で燃料を融通する可能性もあろう。
しかしながら、この調達が横須賀総監部の調達であるということから見るとNО.1屋外タンクが自衛隊の供用部分とも取れる資料もなくはない。というのは下の資料のとおり、米軍施設については自衛隊の部隊ではなく防衛局が執り行うのが普通だからだ。
会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書「在日米軍関係経費の執行状況等について」平成30年4月会計検査院
https://report.jbaudit.go.jp/org/pdf/300426_zenbun_01.pdf
「合衆国政府に対する国有財産の提供等に関する手続については、「在日合衆国軍隊の用に供する国有財産の取扱について」(平成13年財理第1322号)等により、おおむね次のとおり行うものとされている。すなわち、施設等の工事の実施に係る合意を経た後に、地方防衛局が当該施設等に係る工事を発注し、当該施設等の工事完了後、当該施設等を提供することについて現地の在日米軍と合意が整った後、地方防衛局から防衛省内部部局に対する上申を経て、当該施設等の合衆国政府への提供について、日米合同委員会において合意(以下、この合意を「施設等の提供のための合意」という。)することとされている。」-8頁
米軍施設に限らず、国有財産にあたる施設の工事で現状維持を超える部分は一般的に防衛局が担当する。それに対して現状を維持しての補修などは基地や駐屯地が担当するからである。そう考えると吾妻島補給所の6個のタンクは明確に海上自衛隊用として使われている可能性もある。
因みに同資料には次のような記述も見られる。
「海上自衛隊の分の移設事業は、防衛力整備の一環として、海上自衛隊横須賀基地の火薬庫を整備するに当たって、火薬類取締法施行規則(昭和25年通商産業省令第88号)に基づき、施工箇所に隣接する提供施設等である吾妻倉庫地区に所在する在日米軍の既設の燃料タンクとの保安距離を確保するため、(項)防衛力基盤整備費により当該燃料タンクを撤去して同地区内の別の場所に移設したものである。これら3件の移設事業に係る経費には、いずれも提供施設等の整備に要した経費が一部含まれているが、上記の理由により各年度の「在日米軍関係経費」には含まれていない。」- 32頁
「図表10 横須賀基地の火薬庫の整備に伴う在日米軍の既設のタンクの移設 28年度 299,160 29年度 12,960(単位:千円)」- 32頁
通常、燃料施設と弾薬施設は保安距離が規定されているから離して設置する。もしかすると船越町にあった水雷調整所が1981年(昭和56年)4月に移転(合意は昭和54年)して、横須賀弾薬整備補給所吾妻島整備施設が作られたことに関連しているのかもしれないが、28(2016)、29(2017)年度というから時代的に少し離れすぎている。もしこの状態が継続されていたとすれば火薬庫の貯蔵量が長期間制限されていた可能性がある。これからわかるのは、この時期に移設された燃料タンクは米軍用だということである。
こちらにも総面積が示されている。この3割が自衛隊地区だと前述の神奈川県の資料に出ていたから、約240,676.617㎡ということなのだろう。
「別表4 提供施設等の施設別面積等(平成28年度末現在)吾妻倉庫地区 国有財産土地面積(㎡)802,255.39 - - 土地面積計(㎡)802,255.39」- 74 頁
こちらは米軍地域の日本政府が賃金を支払う労働者数である。
「別表6 別表6 提供施設等別駐留軍等労働者数(平成28年度末現在)南関東 提供施設等名 吾妻倉庫地区 軍別 海軍 基本労務契約(MLC)134 計134(単位:人)」- 76頁
国土地理院のサイトで過去の変化を見てみた。
https://maps.gsi.go.jp/#12/35.300556/139.649792/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1
2016年(平成28年)及び2017年(平成29年)以前の画像をみると、1987年(昭和62)年~1990年(平成2年)の画像では吾妻島の南東側沿岸の3つある内の真ん中の岬の稜線の山があるが、ここが現状のものでは切土され平面となったところに2基の地下タンクが増設されている。1987年(昭和62)年~1990年(平成2年)では島の中央の鞍部を通じる道路の北部に屈曲部に大きめの地上タンクがあったが、これが無くなりその南西に隣接する小さめの地上タンクだけになっている。
見た所「火薬庫の整備に伴う在日米軍の既設のタンクの移設」に絡むタンクの変化はこれだけだ。
吾妻島に何時から海上自衛隊の地域が作られたかは明確なものがない。水雷調整所の移設は昭和56年だったが、燃料施設についてはなにもない。
横須賀造修補給処の前身の横須賀補給所が新編されたのは1961年(昭和36年)2月1日である。単純にこの新編だけで、これ以降とは言い切れないかもしれないが、自衛隊の区画ができた可能性は高いだろう。
横須賀補給所が新編される前の1945年(昭和20年)~1950年(昭和25年)の画像と、横須賀補給所が新編された後の1961年(昭和36年)~1969年(昭和44年)の画像を比較すると、1961年(昭和36年)~1969年(昭和44年)当時は、南東沿岸の中部、即ち後に地下タンク2基が築かれる山のあった岬の北の湾入部付近の大型地上タンク2基の北西約80mに大型の地上タンク1基があるが、この西と南に隣接して小型の地上タンクが各1基あった。
この後の1974年(昭和49年)~1978年(昭和53年)の画像との、最も大きな変化は、北部埋め立て部の中型5つと小型1つがまだない。この辺りの海岸は直線状の埠頭となっており埋め立て部のようだ。吾妻島の北端は、接収されるまでは貯炭場として使われていたらしい。
この当時には島の北西沿岸部に幅50m奥行き200m程の入り江があった。
1945年(昭和20年)~1950年(昭和25年)当時には、吾妻島の最南部に4個、4個、3個とならぶ小型のタンクがまだ無かったが、その東側に微小な多数のタンクが確認できる。後に確認できなくなるのだが、上述の北向きの入り江の南に6つと、中央鞍部を貫く道路の屈曲部の南に2つの地下タンクが確認できる。
これらの画像から見ると島の中央の鞍部の地下タンクは大日本帝国海軍の時代からあったのだろう。南部の小型タンクは接収した米軍が設けた(日本に設置させたか?)ものであろう。吾妻島全体が米軍に接収されたからこれらのタンクは米軍が使用している可能性が高い。
今回の役務対象となるタンクは、NО.1屋外タンクである。通常は建造した順番に数字を振るのが普通だから、一番古いタンクである可能性が高い。となると、北部の埋め立て部の中型5つと小型1つ(現在は小型が2つ)の内のどれかとみられる。現在の映像から見ると錆の酷いのは大型のタンクの海側の西側と、陸側の中央だ。やや小さい陸側の東のも錆が浮いている。どうやら直近の点検からの日時の長いものが、これらなのだろう。
もし古い順に番号を振った場合、これらのタンクがほぼ同時期に建造されたものなら一番錆びの酷い海側の東側だと思うが、逐次運用したのであれば、建造にパイプ類が邪魔をするから陸側を最初に建造するだろうから陸側の真ん中かもしれない。おそらく塗装状態の良いタンクも再塗装したものだろう。
これらのタンクの配置を見ると、帝国海軍時代からのタンクで米軍が接収したものは島の鞍部や山の稜線を均した台状などに分散されているが、おそらく自衛隊が使っているこれらのタンクは島の突端の海に面したところに集中されており、如何にも効率性だけを追及したような感がある。海から丸見えで集中しているから、攻撃を受ければ一気に燃え上がりそうだ。そんなところを見ても、おそらくこれが自衛隊の管理地区なのだろう。勿論、米軍との共同管理で使わせてもらっている立場だから仕方のないことだ。
考えようによっては、自衛隊のタンクが自ら囮になって敵の攻撃を引き付け、米軍のタンクを守るという企てでもあるのだろうか。
地下タンクの検査方法については下の(145)に説明した。
NО.1屋外タンクは、おそらく上で述べた通り地上タンクなのだろう。名称にも屋外とあるが、地上式を示しているのだろうか。
下のサイトをみると開放点検についての記載がある。
危険物関係用語の解説(第35回)
http://www.khk-syoubou.or.jp/pdf/guide/magazine/glossary/35.pdf
屋外タンクの開放点検には「保安検査」と「内部点検」があるようだ。さらに「保安検査」には「定期」と「臨時」に分けられるようだ。
定期保安検査は、1万KL以上の特定屋外タンクの所有者等に義務付けているもので、タンクを開放して、底部の板圧及び溶接部が維持されているかを検査するようだ。
臨時保安検査とは、全ての特定屋外タンク貯蔵所において、不等沈下が直径の100分の1以上になった場合行われるものとされている。内容については定期保安検査と同じだそうである。溶接部については磁粉探傷試験又は浸透探傷試験を必要とするようである。
内部点検というのは千KL以上で1万KL未満のタンクについて行うもののようである。実施する内容は保安検査と同じのようだ。
保安検査については市町村長が行うもののようだが、内部点検は所有者が自ら行うようだ。
開放期間については平成12年の改正で内部点検については12~13年、保安検査は7~8年とされている。内部点検は1976年(昭和51年)から制定され、当初は10年毎だったようだ。保安検査については1977年(昭和52年)に制定され、当初は10年毎だったのが1994年(平成6年)に現行どうりに改正されている。
地上タンクと地下タンクでは随分と違うものだ。
吾妻島の各タンクがどのように使われているかは、なかなか分からないが、吾妻島には様々なタンカーが埠頭に接舷しているので、一端が伺える。各タンカーがそれぞれ特徴のある動きをしている。追跡「在日米軍」のサイトから拾ってみた。
ALICEはマーシャル諸島共和国船籍の雇船で総トン数4202t、載貨重量6116t、全長104.83 、全幅 16.3 mのタンカーだ。
ALICEは横須賀を拠点とし、数日から十数日、横須賀に停泊する。米海軍鶴見貯油施設には2~3か月に1回、八戸貯油施設には1~2か月に1回入港する。
米海軍鶴見貯油施設は、鶴見線の安善駅に隣接している。支線を通じて安善駅から南武線と青梅線を経由して拝島駅から横田飛行場にタンク車で航空燃料が輸送されている。八戸貯油施設は、パイプラインで三沢飛行場に繋がっていて、やはり航空燃料が送られる。2006年(平成18年)までは三沢基地専用線が三沢駅から繋がっており、鉄道で運ばれていた。他にはスービックやグアム、ホワイトビーチなどにも入港している。釜山に行くこともあるようだ3。
ALICEは吾妻島から航空燃料を運ぶのが任務のようである。船籍もマーシャル諸島であるが、同国はアメリカとの間に自由国家盟約を締結しており国防を米国に依存しているところからも実質的には米国船だ。
航空燃料については米軍は、海軍・海兵隊が航空機や艦船に使うJP-5と、空軍・陸軍が航空機や車両に使うJP-8がある。両方ともケロシン(灯油)系の燃料だが、若干性質の違いがある。発火点がJP-5の方がやや高い。
因みに航空自衛隊は長らくJP-4(ナフサ系)だったが、最近、JP-8になったようだ。ジェットA-1と組成は近い筈だが、おそらく別物として扱っているだろう。陸自はA-1で、海自はJP-5のようだ。
SLNC GOODWILLも備船で米国メリーランド州アナポリスのSLNC社のMR2型プロダクトタンカーだそうだ。30,241トンとあるが、数字が大きいから全長183.19m全幅32.2mというサイズから考えて載貨トンだろう。
プロダクトタンカーとは、ガソリンやナフサ、軽油、ジェット燃料などの石油精製品(petroleum refined product)を主な輸送対象とするタンカーのことである。大きさで次のとおりに分類されるらしい。
MR型 (Medium Range) : 25,000〜 60,000重量トン
LRⅠ型 (Large Range 1) :55,000〜 80,000重量トン
LRⅡ型 (Large Range 2) :80,000〜 160,000重量トン
MR2型というのがないが、MR型に次ぐトン数なのだろうか。しかし、そうだとするとLRと逆の順番になる。
SLNC GOODWILLは、横須賀には概ね月1回程度2~3日、稀に6日程度停泊する。佐世保、天願、グアムにも2~3か月に1回寄港するが、主に釜山、温山、蔚山、馬山、麗水などの南鮮の港に行くことが多い。堺やシンガポールなどに行くこともある。
おそらく南鮮あたりから石油精製品を買ってくるのだろう。プロダクトタンカーということで吾妻島の燃料が、石油精製品であることがわかる。
備船ということだが、船員付きのウエット傭船なのだろう。SLNC社がオペレーシターとしての機能を有するのかは別としても所有者だと思われる。米国メリーランド州アナポリスに所在するということから見ても米海軍の御用企業なのではないだろうか。アナポリスと言えば米海軍の海軍兵学校の名前だ。
サニークイーンはパナマ船籍のタンカーで、総トン数4,175t、載貨重量6,801t、全長107.400mである。
SUNNY QUEENは、月に2~3回と頻繁に横須賀に停泊している。2~3日の時と1週間を超える場合があるようだ。月1回程度は米海軍鶴見貯油施設や八戸貯油施設に行くようだ。岩国にも行っている。 岩国基地は海に面しているので直接陸揚げできるようだ。下のサイトにその様子が出ている。徳山下松にも寄港している。
中型タンカー、米軍基地巡回
http://www.rimpeace.or.jp/jrp/umi/yokosuka/1405slncpax.html
グアムにも2か月に1回、ほか江田島にも行っている。Daesan、大連、蔚山から燃料を運んでくるようだ。
ほぼALICEと同じ目的で使われている。パナマは独立国であるが、運河地区をアメリカが支配してきた。1989年にパナマ侵攻で主権国家の元首を逮捕するという、第二次世界大戦後の国連憲章下では珍しい侵略行為によって、事実状のアメリカの植民地となっている。したがってこのタンカーも事実上アメリカのタンカーだろう。
MAERSK MICHIGANも、石油製品タンカーだ。旗国はアメリカ合衆国となっている。総トン数28517t、載貨重量47047t、全長183m、全幅32mであるから、ALICEなど今まで挙げたタンカーより大型である。
MAERSK MICHIGANは、昨年は秋以降だけ横須賀では確認されている。月に1回程度のペースで、停泊するのも2~3日だ。温山、蔚山、馬山から燃料を運んでくるらしい。グアムや天願などにも寄港している。
POHAN PIONEERは、名称からは南鮮の船のようであるが、国籍は米国である。総トン数5422t、載貨重量6510t、全長107.75m、全幅18mということで小型のタンカーだ。
POHAN PIONEERも、昨年秋以降のみ姿を見せている。横須賀には月に2~4回と頻繁に停泊し、日数は1~3日というところである。特徴として横浜ノースデッキへの月に1回程度寄港することだ。他のタンカーは横浜ノースデッキには燃料を扱う設備がなく、あまり寄港しない。
鶴見や八戸に頻繁に寄港しているので航空燃料を運んでいると思われる。蔚山にも月1回程度行っている。
南鮮は蔚山と麗水に石油精製・貯蔵の一大設備を作ったそうだ。中国、ロシア、日本に向け、石油製品を輸出している。世界の四大オイルハブであると言われている。
パターンとしてはALICE、SUNNY QUEEN、POHAN PIONEER などの小型のタンカーで航空燃料を吾妻島から鶴見や八戸に運び、MAERSK MICHIGAN、SLNC GOODWILLなどは南鮮から吾妻島に燃料を運び込むようである。
特に鶴見貯油施設は京浜運河を通じてしかアクセスできない。幅も突出部などもあり、幅が400mしかないと書いたところで、Suezmaxの船舶は、全長約274m×幅約48m×深さ約22m。Panamaxの船舶は、全長約228m×幅約32m×深さ約19mだというから、京浜運河も随分広いものだ。
昨年、スエズ運河に長栄海運がオペレータとなっているコンテナ船エヴァーギヴンが詰まってしまった。スエズ運河は幅205mなのだそうだ。Suezmaxの船舶でも操船を誤ると詰まってしまうようである。
ちょっとだけ京浜運河を見直したが、運河には橋梁もあるから大きな船が通るのはやはり無理があるのだろう。あらゆる意味で戦略的な運河である。運河もトイレも詰まると困る。
八戸油槽施設(DFSP Hachinohe)のある八戸港も港内は狭く屈曲している。施設からは北にパイプラインで道路下を埠頭に延びているようだが、船の航路はは幅200程で小型のタンカーでなければアクセスが出来ないのだろう。岩国も瀬戸内海に面してはいるものの、結局は防波堤の入口の幅が200mほどしかない。
吾妻島には、ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦やヘンリー・J・カイザー級給油艦と言った、米海軍所属の艦も入港する。これらは洋上補給にも使用される艦だ。運行しているのは必ずしも米軍人とは限らないようである。雇用されて軍属として乗務しているようだ。
ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦の要目は、軽荷排水量26,118t、満載排水量42,528t、全長 210.00m、垂線間長200.47m、最大幅32.20 mであり、ヘンリー・J・カイザー級給油艦の要目は、基準排水量9,500 t、満載排水量40,700t、206.3m、全幅29.7mの艦である。
比較のために数値を示すとすれば、ルイス・アンド・クラーク級が総トン数で5万トンから8万トン、載貨トンなら2万トン、ヘンリー・J・カイザー級が総トン数で8万トンから12トン、載貨トンで3万トンと一応、目安を置いて置く。あくまでも目安だ。この手の艦は、洋上補給のための施設や人員が載る分、積み荷は減るのだろう。
ALAN SHEPARD (T-AKE 3)の入港がやや多く、BIG HORN (T-AO 198)がこれに次ぐが決まった艦が寄港するわけではなさそうだ。
ヘンリー・J・カイザー級給油艦はPECOS (T-AO 197)、BIG HORN (T-AO 198) が入港している。これらは横須賀の他、佐世保、横浜三菱、グアムの間を行き来している。
ルイス・アンド・クラーク級貨物弾薬補給艦は、ALAN SHEPARD (T-AKE 3)、RICHARD E. BYRD (T-AKE 4)、AMELIA EARHART (T-AKE 6)、CARL BRASHEAR (T-AKE 7)及びCHARLES DREW (T-AKE 10)が横須賀に入港している。
これらの艦は、佐世保、天願及びグアムなどに移動する間に横須賀に入るようだ。鎮海や木浦に立ち寄る場合もある。補給艦だけに横須賀から出て横須賀に戻るパターンもあることから、どこか洋上で洋上補給するのだろう。
ちなみに海上自衛隊の補給艦「ときわ」は東シナ海で洋上補給を行ったあとに横浜港の大東タンクターミナルに接岸したそうだ。最近、海上自衛隊の補給艦が大東タンクターミナルに接岸することが多いらしい。
自衛隊の動きが良く分からないが、吾妻島を通さない系統があるのかもしれない。しかしならが、自衛隊の補給艦が米艦に補給していることから、燃料そのものは共通しているようだ。
自衛隊の油槽船が吾妻島から燃料を運んでいることは、自衛隊の施設があるのだから間違いないと思うのだが、これも情報がない。
因みに、横須賀港に所在する自衛隊の油槽船は以下のとおりである。
油船25号型490トン型油船 載貨重量490t / 常備680t 全長46.5m 最大幅7.8mが以下の3隻
YO-29 YO-35 YO-40
油船203号型270トン型油船 載貨重量270t 全長37.7m最大幅6.8mが、積載油種の違いで別型となっているものを含めて以下の2隻
YG-206 油船28号型 YO-28
YG201号270t型 載貨重量270t 主要寸法:201号、202号:全長36.7m×幅6.8mが1隻である。
YG-206
YGが航空燃料用、YO-28がその他の燃料用だ。
昨年から海上自衛隊の航洋型のタンカーが採用されたが、これらの油船は、港湾内で使われる船である。次のような画像があるので、頻繁に吾妻島から積み出して港内の艦船に給油しているようである。
ISOKKO 2020年10月04日 10.3 横須賀港
https://userdisk.webry.biglobe.ne.jp/004/791/74/N000/000/000/160177083814083007975.jpg
「吾妻島の貯油施設のスタンドで給油中の海上自衛隊油船です。」
「入港してきた護衛艦いずもに給油をしていましたが、その作業が終わり吾妻島に戻っていきました。」
結局のところ、海上自衛隊の燃料はどこから来るのだろう。吾妻島の燃料も大東タンクターミナルからなのだろうか。因みにこの会社は山口県の六連島のタンクの方が本社のようだ。
米軍は、上にみたとおり三沢、横田、岩国、嘉手納などにも吾妻島から航空燃料を運んでいる。関東の航空自衛隊の基地では、タンクローリーが千葉県の方から運んで来ていた。
吾妻島のタンクの区分や貯蔵燃料については、どうなっているのか今一つよくわからない。ただ吾妻島へ供給されるタンカーの話はすべて米軍ばかりである。傭船によって運ばれる燃料には海上自衛隊の分も含まれているのかもしれない。いずれにせよ、日本側のタンカーが搬入したという話がどこにもない。まさか吾妻島から石油が湧くわけではないだろう。
一般的に、タンカーによる輸送はシップブローカーが仲介して、傭船者と船主の需給を仲介する。オープンの場合もあるし、積み下ろしの港湾ごとのスポット契約もあるようだが、何か月も同じ船が運んでいるところを見ると米政府が長期の契約を結ぶのだろう。タンカーの国籍をみると確かにアメリカの息の掛かっている国が多い。もっともパナマは便宜置籍に良く使われるので、それに限らないとは言える。
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(資料番号:20.3.1-8)「自衛隊・米軍基地問題に関する事例研究(その9)~米軍三沢基地へのF-16戦闘機の配備について~」(防衛研究所平成26年度所指定研究成果報告書)
(資料番号:19.10.18-2)「洋上補給に臨む際の留意事項について」『艦船と安全』(護衛艦隊司令部)2019年1月号掲載
(資料番号:19.4.18-2)「防衛省設置法等一部改正法案」『立法と調査』(参議院常任委員会調査室・特別調査室)第411号(2019年4月15日)掲載4.ACSA(物品役務相互提供協定)関連の規定の整備 (1)ACSAと国内法との関係 (2)カナダ及びフランスとのACSA署名 ア 日加ACSA イ 日仏ACSA (3)本法案による日加及び日仏ACSAの国内法の整備
(資料番号:19.4.5-1)「2019 Marine Corps Aviation Plan」米海兵隊岩国基地(山口県岩国市)に2020年10月以降、最新鋭のF35Bステルス戦闘機1個飛行隊・16機が新たに配備
(資料番号:18.5.14-1)「在日米軍関係経費の執行状況等について」(2018年4月 会計検査院)
(資料番号:18.2.5-1)「在日米軍駐留経費の現状」『レファレンス』(国立国会図書館調査及び立法考査局)2018年1月号
(資料番号:11.8.20-2)「ロシア、ウクライナおよび旧ソビエト連邦の液体推進剤(燃料)ロケット・エンジン」
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