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入札日:令和3年12月17日
航空自衛隊入間基地
研究器材の解体、撤去、分別及び計量
https://www.mod.go.jp/asdf/fuchu/acs/choutatsu/kisho03-k41koukoku.pdf
https://www.mod.go.jp/asdf/fuchu/acs/choutatsu/kisho03-k41siyousho.pdf
航空医学実験隊が立川分屯基地の建物内(201棟、203棟、204棟、211棟他)に保有する研究器材に対するものであり、仕様書の作成部隊は航空医学実験隊である。
対象研究器材については下のとおりだ。
代謝測定室
代謝測定装置 1式
快適性評価試験装置 2個
動物舍
実験台 1個
クリーンベンチ 1個
共同実験室
透湿試験装置 1個
生化学実験室
実験台 4台
基本型ドラフトチャンバー 1個
低温庫 1個
薬化学実験室
ドラフトチャンバー 1個
実験台 2台
パワーズ室
操縱者作業負担度測定装置 1式
航空生理訓練場
低压訓練装置 1式
放射線棟
実験台 1個
環境生理実験室1
実験台 1台
環境生理実験室2
実験台 1台
写真室
線画写真撮影装置 1個
航空医学実験隊は、航空自衛隊航空開発実験集団に属する部隊である。昭和32年(1957年)臨時航空医学実験隊として新編以来、60年以上に亘り立川に位置して来た。第3部及び第4部は平成18年(2006年)に入間基地に移転したが、近々、残りの第1部及び第2部が入間基地に移転するようである。この調達はその為の撤去にともなうものだ。
第3部及び第4部の移転については、私も間接的に関係した。平成6年頃、当時第1高射群の整備補給隊に居たのであるが、当時使っていた整備庫と補給庫が昭和10年代建設のもので建替えの施設業務要望を上げていた。2つの建物を一体化した施設を要望していたのだが、その頃入間基地に航空医学実験隊を移転する話が浮上し、操縦手がチャンバー検査を受ける利便性のため西武池袋線の下にトンネルを掘る話が出現し、用地が干渉するという話になったのである。その話により計画していた建物の用地が狭隘になり3階建てにしなければ成らなくなって、結局、滑走路の北東側に移転することとなった経緯がある。
そのトンネルは実現せず、その場に第4補給処の補給課の建物が出来ている。しかも東側に移転になる前に補給庫は火災で焼失した。入間基地の航空祭に来られた方はご存じだと思うが入間基地を西武池袋線が分断していて、両方を繋ぐのは踏切が1つあるだけである。日常の基地業務上の支障は少ないが、航空祭では稲荷山公園駅で下車すると、来場者は、この踏切を渡ることになる。来場客を見越し列車も増便するから、この踏切で来場客と列車の双方が大渋滞となるのである。もしこのトンネルが実現していたらスムーズに流れていただろう。そのようなことで影響を受けたことがある。
航空医学実験隊の立川からの移転の理由として組織の最適化と組織力の更なる向上の為としている。入間基地に、航空自衛隊が管理する自衛隊病院を集約して設置する入間病院(仮称)との連携を図るということもありそうだ。
航空自衛隊入間基地に関する令和2年度概算要求の主要事業について 2 立川分屯基地に所在する航空医学実験隊及び航空安全管理隊の入間基地への移転に向けた整備
http://www.shiokawa-tetsuya.jp/wp/wp-content/uploads/2019/09/a629fbcb16c775c7584d9a49cf15abbd.pdf
第1部はフライトシミュレータ等によって、行動科学に関する研究を行うとし、第2部は搭乗員等の健康への影響についての調査研究を行うということである。先に入間基地に移転している第3部は操縦士や航空学生に対して航空身体検査を行うとされ、第4部は低圧飛行訓練、加速度訓練、射出座席訓練等、機材による訓練を行うとあることから、この二つの部は操縦士を対象としており飛行場のある入間基地に有る方が便利ということで先に移動したのであろう。第1部及び第2部は研究が目的ということで後からとなったと思われる。
この調達の名目が、研究器材の解体、撤去、分別及び計量であり、上の品目にもあるように立川分屯基地(東立川駐屯地)に残されていたのが研究部門であったことが良く分かる。
防衛省平成30年度電話番号簿の465頁 立川を見ると、第2部に環境生理科、放射線研究棟、生化学科、薬化学科、動物舎の項目があるから、殆どが第2部のもののようだ。
先に述べたとおり、平成初期から航空医学実験隊を入間に移転する構想はあったようだ。つまり今回の移転は第二期ということだろう。
グーグルマップの画像(2021)でみると、現在の航空医学実験隊の庁舎の東隣りに工事現場を確認することができる。確かここは基地の講堂があった場所だ。さらにその隣には嘗て婦人自衛官教育隊(航空教育群に統合)があった。現在の航空医学実験隊の庁舎のある場所は嘗て、基地のクラブのあった場所である。
航空医学実験隊及び航空安全管理隊の移転そのものは、業務の効率化が目的であろうが、部隊の移転は、通常、様々な計画を背景に、心太式に移動するのが普通で他にどのような移転の背景があるのだろうか。
立川分屯基地(東立川駐屯地)からは令和元年(2019年)に第4補給処立川支処が既に廃止され、保管機能が木更津分屯基地に移動(資材計画関連は本処に吸収か?基地業務関連は航空安全管理隊等へ引き継ぎ。)しているが、今回、航空医学実験隊及び航空安全管理隊が移転すると、航空自衛隊の部隊で残るのは航空中央音楽隊だけとなり、これも令和4年度には府中基地に移転し、立川分屯基地は廃止となる。
残るのは陸上自衛隊の地理情報隊と防衛装備庁の航空装備研究所だ。警務隊の東立川連絡班と東部方面システム通信群の東立川派遣隊、そして駐屯地業務隊は陸上自衛隊の部隊があるから配置されているようなものだから、地理情報隊があるから配置されていると言っても良かろう。
東立川駐屯地について、現在、立川都市計画道路3・3・30号立川東大和線の拡幅計画がある。これは立川通りの混雑解消、歩道確保、生活道路への流入緩和、災害対策を目的として、駐屯地の東側の部分へ道路の拡幅を行うものである。
「立川都市計画道路3・3・30号立川東大和線」頂いた主なご意見
https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/pamphlet/pdf/pamphlet_49.pdf
しかし、航空医学実験隊の所在する場所は駐屯地の西側であるから、直接は関係ない。ただし、拡幅により失う部分にはモータープールやテニス場があるから、先ずは、これらの移設先とされることが考えられるが、その何倍もの地積があるから、地理情報隊や航空装備研究所が使うことになるのだろうか。
なお、航空中央音楽隊が移転する先の府中基地は、嘗て航空総隊司令部や防空指揮群が所在していたが、横田基地へ移転して大きく空いていたので、その代わりに航空保安群本部や航空開発実験集団司令部などが入間から移転し、宇宙作戦隊も新編されているから、ぼちぼち一杯になるだろう。
どうも陸上自衛隊や海上自衛隊の移転の話もないようだが、空いた東立川駐屯地の土地はどうなるのだろう。遊休地にしておくと売却ということにもなりかねない。だからといって部隊の新編というのも聞かない。
航空医学実験隊が入間基地に完全移動して、入間病院(仮)などと連携し易くなると言っても、それ以上なにかあるというものでもない。
航空医学実験隊の基本任務は
1 航空医学及び心理学上の各種調査研究並びに救命装備品等の実用試験を行う。
2 航空身体検査及び航空生理訓練を行う。
3 技術研究本部の実施する技術試験及び技術研究に対する協力を行う。
の3つであり、1と2については今回の移転によりプラスとして働くことになるが、3については航空装備研究所から離れるのだから、むしろマイナスである。
陸上自衛隊教育訓練研究本部が「認知の優越を巡る戦い方」に係る調査を行っていることについて少し前に書いたのだが、航空医学実験隊のような医療系部隊・機関はその中心となるのではないかと思う。これを新領域というかは私としては、まだ早いとは考えているが、防衛力整備という観点から言えば将来の話であるから、研究をしておく必要はあるだろう。
自衛隊には似たような部隊として陸上自衛隊には部隊医学実験隊があり、海上自衛隊には潜水医学実験隊、そして防衛医科大学校に防衛医学研究センターがある。
部隊医学実験隊の任務は、武器の使用等の自衛隊の任務の特性及び野外環境から生起する傷病(生物兵器及び化学兵器による傷病を含む。)の予防、応急治療に関する研究等である。
潜水医学実験隊の任務は、潜水医学に関する調査研究及び試験、潜水医学及び飽和潜水に関する教育訓練、自衛艦の乗員に対する潜水医学及び飽和潜水に関する訓練の指導及び訓練に対する協力、診療及び保健衛生、潜水艦の乗員及び潜水を行う者の適性検査である。
そして防衛医学研究センターの任務は、有事・災害時に発生する多数の傷病者を対象とした救命・救急医学について専門的、総合的に研究することである。
もちろん自衛隊病院や自衛隊看護学校などにも同様の機能はあろう。
陸上自衛隊教育訓練研究本部も、こういった部隊・機関と連携を組むべきだと考える。特に航空医学実験隊はパーティゴ(空間識失調)についての知見を保有している。まさしく、これは認知領域である。
敵がパーティゴで墜落してくれれば、一発も撃つ必要なく勝利に導くことができる。
関連事項記事
軍事問題研究会関連資料販売 関連資料として以下を所蔵しております。お問合せはこちらへ。なお認知関連については(183)を参照
(資料番号:21.1.4-1)「空間識失調への認識」『飛行と安全』(航空自衛隊航空安全管理隊)2020年1月号掲載
(資料番号:19.10.4-1)「特集:空間識失調」『飛行と安全』(空自航空安全管理隊)2018年10月号掲載
(資料番号:18.9.21-1)「B-200型シミュレータ・空間識訓練装置の紹介」『航空安全情報』(陸幕装備計画部航空機課航空安全班)2018年1月号掲載
(資料番号:17.10.19-1)「空間識失調[視覚錯覚]について」『PILOT』2002年No.2掲載
(資料番号:17.10.19-2)「空間識失調 その2」『PILOT』2002年No.3掲載
(資料番号:13.3.7-2)「基地防空用シミュレータ」『そうび』(空自補給本部)第170号(2012年3月30日)掲載
(資料番号:12.3.18-1)「航空宇宙技術動向が航空防衛に及ぼす影響に関する研究(シミュレータ)」(開発集団研第4号(22.6.28)別冊付録第1)
(資料番号:11.8.4-1)「空自指定研究『航空医療学的研究』成果最終報告書」(開発集団航医第3号(22.3.31)別冊)
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