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自衛隊調達巡り(150)垣間見る印刷補給部の製本能力 機械・器具の修理(はかりの校正)

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提出期限:令和3年8月19日
陸上自衛隊中央会計隊
機械・器具の修理(はかりの校正)
https://www.mod.go.jp/gsdf/dc/cfin/html/img/s86-R3.8.6.pdf

 仕様書及び調達要領指定書の作製部隊は中央業務支援隊印刷補給部である。
 この調達の内容は、自動はかりの校正の請負契約である。計測機器については計量法によって、定期の検定が定められている。この計量法に基づいた検定では国際的なトレーサビリティが確保できないことや、検定を受けることができる計量器が限定されていること等より、校正が必要なる。
 校正についてJIS Z 8103 :2000「計測用語」には、「計器又は測定系の示す値、若しくは実量器又は標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業」となっている。
 検定を受けた計測器は取扱いに制限があり、移動などが出来ない場合などがあるため、一般に作業につかう計測器などについては、検定を受けた計測器を基準として比較校正をする。

計量制度見直しについて – 経済産業省
https://www.meti.go.jp/policy/economy/hyojun/techno_infra/00_download/seidominaoshi.pdf

 自動はかりが、近年、制度の見直しにより加えられたようだ。
 私が所属した部隊・機関においても計測器の定期検査があり、基地の検定所で検査を受けたり、補給処に隊員がハンドリングのため出張する場合もあった。
 調達要領書にある、やまとSD-30というのは、下のサイトにあるようなもののようだ。

【楽天市場】大和製衡(ヤマト) SD-30 特大型上皿はかり
https://item.rakuten.co.jp/first23/soku-yamato-sd-30/

 印刷補給部というのは、もともと独立した印刷補給隊という部隊だったのであるが、防衛庁(当時)の六本木(桧町)からの移転に際し、市ヶ谷と桧町の2つの駐屯地業務隊と人事統計隊と、この印刷補給隊を合併してできた、陸上自衛隊中央業務隊の中に出来た部である。現在は総務部、人事統計部と並んでいるので、中味は同じだろう。
 (149)でも説明したが、防衛省は工廠を保有していない。高段階整備も含めた製造部門を基本的には保有しない方針である。その部分は請負役務により外注するわけだ。

(149)
https://sucanku-mili.club/%e8%87%aa%e8%a1%9b%e9%9a%8a%e8%aa%bf%e9%81%94%e5%b7%a1%e3%82%8a%ef%bc%88%ef%bc%91%ef%bc%94%ef%bc%99%ef%bc%89/1508/

 しかし、製造能力をまったく保有していないわけではない。この印刷補給部もそうであるし、海上自衛隊の印刷補給隊や航空自衛隊の教材整備隊など、書籍などを製造する能力を保有している。教材整備隊では、さまざまな模型なども製造する。
 他、補給処なども、以前より少なくなったが、朝礼台など作成したりすることもある。これも(98)で少し触れたことがあるが、特注の防衛記念賞の台座などの作成を依頼されることもある。

(98)
https://sucanku-mili.club/%e8%87%aa%e8%a1%9b%e9%9a%8a%e8%aa%bf%e9%81%94%e5%b7%a1%e3%82%8a%ef%bc%88%ef%bc%99%ef%bc%98%ef%bc%89%e9%98%b2%e8%a1%9b%e8%a8%98%e5%bf%b5%e8%b3%9e%ef%bc%88%e7%ac%ac%ef%bc%91%ef%bc%97%e5%8f%b7%ef%bc%88/998/

 いずれも少量生産する小物である。書籍でも、多くの隊員が購入するような防衛小六法とか、新隊員必携などは、例えば内外出版さん辺りに外注するようだ。しかし、何万冊も製本するようなものはむしろ少ない。印刷版を作っても、数枚しか印刷しなければ版代ばかり費用が発生することになる。課程教育用の教程も、新隊員課程や幹部候補生課程用ならそれなりの冊数になるが、術科教育などは1課程で多くて数十冊である。もちろん期を連ねれば、多くの冊数が必要にはなるが、それだけでは外注では割に合わなくなる。印刷業者は、その版を保存しなければならないからだ。金になれば保管するのも割に合うが、金を生まないものに場所を取られることになる。 だから印刷補給部のような、製本部門を自衛隊が保有する意味がある。
 仕様書の表2には、機械・器具の種類の一覧がある。要するに製本業を行うのには、これらの器材が必要だということだろう。もちろん大昔は、手作業で製本をやっていたのだろうから、無くてもできなくはないだろうが、ある程度の冊数をこなすには、これらを揃える必要があるのだと思う。
 私自身は製本にあまり詳しくない。実は、親戚に製本業者や印刷業者が居たのだが、なにしろ子供の頃のことで関心が無く、あまり見ていないのである。調べながらにはなるが、表2-機械・器具種類を見て行く。
1 版下作成装置 2 複写機(版下作成機) 3 版下作成機
 「鉛筆書きの直線,曲線,図形,符号,文字類をカーソルでトレースし,この動きを記憶装置に貯え,プロッターに出力して黒色のペン書きとする。」(世界大百科事典)というもののようだ。
4 電子写真製版機 5 樹脂版製版機
 プログラフ(株)さんの説明によると、RGBデータを、CMYKへ変換し、仕上がりサイズや加工位置を指定し、印刷の版ズレをトンボ(トリムマーク)に合わせ、仕上がりサイズ合わせて塗り足し、データ内の画像などが「リンク切れ」になっていないか確認し、深みのある黒にするため黒をリッチブラックし、インキの合計量を上限以下に調整し、ページ順になるよう面付けして、以上により刷版を製版する装置のようである。
6 製版フィルム出力機
 東京平板さんの説明だと、15年前位まで主流だったそうで、いまでは全盛期の10分の1以下ぐらいしか需要がないが、今でもシルク印刷の版や箔版、フィルムの印刷原稿の訂正などに必要なのだそうだ。要するにフィルムの版下画像を刷版を作る装置なのだろう。
7 粉砕機
 粉砕機というと様々な分野で使われるのではっきりはわからないが、耳紙といって、印刷物を製本する時、切り捨てられた残紙を処理するためのもののようだ。まあシュレッダーのことかもしれない。部内限りの資料を処理したりもするのかもしれない。
8 謄写製版・印刷機 9 オフセット印刷機 10 デジタル印刷機 11 小型凸版印刷機 12 カードオフセット印刷機
 様々な印刷があるということだろう。カラー印刷だと三原色のインクの位置を合わせる必要があるからオフセット印刷ということになる。凸版だとインクが圧力で広がってしまうからだ。オフセット印刷では、油が水を弾く仕組みを使うので、圧力が加わらない。謄写版があるのには驚いた。昔ながらの手刷り謄写版ではないだろう。製版と組み合わになっているから、プリントゴッコみたいなものかもしれない。余談だが、ここには活版印刷の文字はない。印刷の種別からすれば凸版印刷だが、活字を用いることはないのだろう。殊更に活字文化の保護を声高に言う人たちがいるのだが、活字はすでに昭和の時代には零細な個人営業の印刷店ぐらいしか使っていなかった。当時すでに写植などが普及していたし、新聞紙も鉛版を、ステロタイプという紙版から複製して印刷していたから、活字は既に絶滅状態に近い。
13 エッチングプロセッサー 14 水棒洗淨機 15 加湿装置 16 パイルテーブルCPL17 ヒッキースイパー
 エッチングプロセッサーはオフセット印刷に使う紙版に水を塗布するもののようである。オフセット印刷には水が重要であるから、この辺りのものはオフセット印刷に使うものだろう。パイルというのは紙などを昇降させるもののようだ。ヒッキースイパーとはローラにブレーキをかけてスリップさせゴミを取るもののようである。インクを弾かせるため刷版が水に馴染むことが大切で、pHなどをなるべく近づける必要があるのだが、問題となるのは紙にインクが滲まないようにロジンなどのサイズ剤が使われていることで、これが高pHなのである。そこで中性にするために紙を酸性の材料が使われていることがあり、それが酸性紙の問題になるわけだ。
18 紙断裁機 19 中綴じ折機 20 紙折機 21 自動丁合製本機 22 自動無線綴機 23 針金綴機 24 高速針金綴機 25 自動穿孔機 26 自動背巻機 27 製本機(平綴機) 28 卓上製本機 29 紙枚数計算機
 この辺りが製本関係である。印刷された折丁を頁順に集める作業が丁合(ちょうあい)である。その作業を行う自動で行う機械が丁合機だ。綴機はそれをステップラー止めするものである。無線綴じとは、針金などを使わずに糊付けするもの。平綴じというのは、丁合した折丁の背の綴じ代を数ヶ所を針金で綴じ、背に糊付けし、最後に表紙を貼り付けるものだ。背巻きは、丁合や折丁の背になる箇所をテープや布、和紙等で巻くようにくるむものを言う。穿孔機は穴を開けるものだが、加除式の書籍などに使うのだろう。卓上のものは少量の製本をする場合のものだろうか。
30 自動紐掛結束機 31 自動結束機 32 自動紐掛機 33 蒂掛機 
 これらは荷作り用のものだろう。印刷製本に限らず使われるものだ。
34 ミシン穴あけ機
 糸かがり綴じと、ミシン綴じなどの糸綴じに使うものだと思われる。
35 筋付機
 これは紙やインクが割れないように、筋入れをするものだそうだ。
36 電動紙揃機 37 エアー式紙揃機
 静電気を除去し紙を揃えるものらしい。
38 自動背固機
 株式会社帆風さんの説明では、「本の背に膠(にかわ)を塗布し寒冷紗を貼って背を強化する。さらに背紙や花布(はなぎれ)を貼付ける。しおりが必要なら一緒に付ける。」そうだ。
39 製本機
 ここに製本機と出て来るが、上のものとどう違うのかは謎である。どうやら見積もりやカタログ、文集などの書類を1冊の本や冊子にまとめるための機械とあるから、各工程を一括で行える簡略式のもののようだ。
40 リーチフォークリフト 41 ハンドパレットトラック 42 半自動捆包機 43 全自動捆包機 44 テープルリフト
 これらは倉庫などで梱包作業や荷物の上げ卸しなどを行うものだ。確かに書籍は密度が高いから、運ぶのは大変なことだ。
45 加湿器 46 除湿機
 相手は紙であるから、湿度の調整が必要なのだろう。
47 業務用紙裁断機 48 昇降式スクーパー 49 複写機 50 自動はかり
 ここら辺は、印刷製本というよりも、汎用的なものだろう。
 これらの装備を保有しているということから、後は人の技術が伴えば結構さまざまな製品を製造できそうである。

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