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解説記事:北鮮短距離弾道は「ジェットコースター・ミサイル」だ。

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 北鮮が9月15日に、日本海に向けて短距離弾道ミサイルを2発、発射したというニュースが流れた。このミサイルは800km飛翔して、日本海に着弾した。その特徴は最高飛翔高度が60kmと低く、弾道の後半にプルアップしたことだ。

北朝鮮が短距離弾道ミサイル2発発射 JSF軍事/生き物ライター9/15(水) 21:50
https://news.yahoo.co.jp/byline/obiekt/20210915-00258490

 このミサイルの特徴を一言で言い表すなら、ジェットコースター・ミサイルである。
 通常、弾道ミサイルの飛翔コースは、1000km程度以内の射程なら、最高飛翔高度は、その三分の一程度になる。この場合は、一番、射程距離を稼ぐことができるミニマム・エナジー弾道だ。
 概ね垂直に弾道ミサイルは発射されるが、加速して最高速度になった時の角度が45度になるときがこの、ミニマム・エナジー弾道になる。
 ボールを遠投するとき、手から離れる時に45度上向きになると、一番遠くまで届くのと同じ理屈である。
 これより上向きだと、高く上がるロフテッド弾道となり、45度より低いと直球的なディプレスト弾道となる。
 先ほど、1000km程度以内と書いたが、これより長くなると、三分の一より低くなる。というのは、1つは地球が球体なため、発射地点と命中地点の間に地面がせり上がるからだ。
 2つ目は、地球の重力が高度が高くなるにつれ小さくなるからだ。大体、高度が3000km昇る毎に半分になる。
 余談だが、国際宇宙ステーションが周回する高度500km程度では地上の重力とあまり変わらない。無重力になっているのは遠心力が重力に釣り合うというか、実は自由落下しているのと同じだからだ。ただ地球の表面が丸いから、地面に突き当たらないのである。
 宇宙がどこからかというのは、定義が完全には定まっていないが、概ね高度100Km以上である。近年、弾道飛行で宇宙に行く事業が行われるようになったが、周回軌道と異なり100kmを超えるのは僅か数分だけのことで、何しに宇宙に行くのか分からない。
 無重力を体験できるのが醍醐味らしいが、別に宇宙に達しなくても無重力なら体験できることだ。
 弾道ミサイルを遠くに飛ばせば、距離に対して低くなるとしても、高度そのものは、それを上回って高くなるため、長射程のミサイルほど高度が高くなる。よって重力も小さくなるので、そのままではより遠くへ飛んでしまい、目標を通り過ぎてしまうから、高度を低くするというわけだ。
 射程距離が1000km程度なら、高度は300km程度だから、重力はまだ十分に大きいし、地球の半径6400kmより遥かに小さいので、地面のせり上がりも小さく、平面に近似した放物線となる。
 結局は三分の一程度になるということだ。
 今回、北朝鮮が発射したミサイルの場合は高度60kmと大変低い。宇宙というのは100km以上であるが定義が定まっていないと書いたが、米軍の場合は80Km以上としている。それと比べても、まだ宇宙には達していない。
 もしミニマムエナジー弾道で、高度60kmの弾頭ミサイルなら180km程度しか届かない筈だ。
 つまり800kmも飛翔したということは、ディプレスト弾道を飛翔させたということになる。もし、同じミサイルをミニマムエナジー弾道で飛翔させれば日本列島ぐらいまで届くかもしれない。それぐらいのポテンシャルを持つミサイルだ。
 実は衛星を打ち上げる軌道は、今回の軌道に近い。地球の周回速度である秒速約7.8kmに早く到達させるために、水平方向へ加速する必要があるからである。もちろんそこまで加速しては地上に落ちずミサイルにならないから、それより低い速度ではあるが、変則軌道などと呼ばれるところの変化する軌道を飛翔させるためにはディプレスト弾道を飛翔させることが必要となる。
 戦術的には、低い軌道の場合、地面が球面のために、軌道が水平線の向こう側に隠れて、レーダーで探知を行い難くなるから、このような低い軌道をとるのが一つの理由だ。
 もちろん低いとはいっても、同じ目的とは言え、有人機や巡航ミサイルで言う低空の意味とは違って遥かに高い高度ではあるが、通常の弾道ミサイルの軌道からみるとかなり低い高度となる。
 もう一つの理由は、軌道を変化させることで迎撃を困難にする目的がある。なぜ弾道ミサイルのような高速の目標に迎撃ミサイルを直撃できるかという、一つの理由が弾道ミサイルの軌道が、早くから分かるからだ。だから弾道ミサイルの立場からすると、いわば変化球と同じで軌道をそらして迎撃ミサイルを避けるのである。
 このような変化する軌道を飛翔させるためには、宇宙のような空気のないところでは大変難しいのだ。空気があるからこそ舵が効くのである。宇宙では舵は無意味だ。
 ところが、ディプレスト弾頭というのは、そのままでは射程距離が短くなってしまう。ボールを水平に投げても遠くへ届く前に落ちてしまうのと同じ理屈だ。だから一工夫が必要になる。
 そこで、この場合も地球の大気を利用するわけである。すなわち大気中を滑空させるわけだ。つまり、グライダーである。
 このようにすれば(弾道ミサイルとしては)低い高度であっても、直ぐに落下せずに遠方まで届かさせることが可能となるのである。そのためには速度が必要となる。空気の抵抗に打ち勝って行かねばならないからだ。
 ただしミサイルのロケットが作動できるのは短時間だけで、発射してから数十秒で燃料を使い果たす。だから、最初にある程度の高度を稼ぐ必要があるわけである。これで位置エネルギーを蓄えて、あとは重力を用いて速度を稼ぐということになる。ミサイルの動力は、この重力と、ミサイルの質量がもつ慣性力しかない。
 滑空しても、いずれは空気抵抗で速度が落ちてしまうから、どこかで落下せざるを得ない。
 今回の北鮮のミサイルは一度、60kmまで上昇し、その時点ではディプレストの弾道飛翔をしているのである。その軌道の後半でプルアップをして再度、高度を上げたわけで、2つの山を越えて落下した。
 距離を稼ぐだけなら、僅かに弾頭の先端の向きを上向きにして、一定の角度を維持して滑空飛翔をさせればよい。
 ただ、今回は実戦ではないから日本の領域まで飛ばすのはマズいし、そもそも北鮮も発射したミサイルを観測する必要があったのだろうから、射距離を縮めたのだろう。
 最終段階で、運動エネルギーを、高度を再び上げることによって位置エネルギーに変換して行き足を止めたと思われる。
 冒頭にジェットコースター・ミサイルと述べたのはこのことである。ジェットコースターは、最初に動力によって高いところに持ち上げられるが、その後は落下によって速度を得て、そのあとは上り下がりの軌道を、運動エネルギーと位置エネルギーを相互に変換しながら走行するが、これと同じことなわけだ。
 最初に十分に加速しておけば、再度60kmを超える可能性もないわけではないが、基本的には地表と最高高度の間を上下するわけである。もちろん左右方向へも振ることはできるだろう。いずれにしてもその範囲は限定される。大きく軌道を変える程、速度を消費してしまうからだ。
 迎撃を困難にするといっても、あらかじめ計画したコースを辿るだけだろう。あまり激しく軌道を変えると命中精度が落ちてしまうし、場合によっては目標に辿り着けなくなるからである。
 中共の対艦弾道ミサイルも似たようなものと思われる。ただしこの場合は、迎撃を避けるのではなく、目標を追うことになるのだが、そうなるとセンサーが必要になってくる。問題は周囲が電離しない程度まで減速しなければならないことだ。そうなると飛距離を犠牲にすることにもなる。
 対艦弾道ミサイルについては下の頁を参照して欲しい。

対艦弾道弾の軌道と対処
https://sucanku-mili.club/000001-2/47/

 変則弾道とはいっても迎撃ミサイルを自ら探して避けるというようなものではなく、予定した経路に従って途中で軌道を数度変更する程度のものだろう。つまりフェイントをかけるようなもので、サッカーのゴール・シュートのようなものだ。
 このような軌道をとるミサイルに対しては、必然的に高度の低いディプレスト弾道となるので、レーダーで追随して速度と位置を掴めば、その可能性を早期に探知することができる。
 また軌道変更の回数は限られるし、基本的には変更後は新たな放物線軌道に入るだけだ。もっとも迎撃ミサイルより、一般的に弾道ミサイルの方が圧倒的に速度が大きいため、すでに発射した迎撃ミサイルが新たな衝突点に向かうのは難しいかもしれない。迎撃ミサイルというのは弾頭に命中しに行くと言うより、弾頭の針路を塞ぎに行くといつた方が実態にあっているからだ。従って、次の迎撃ミサイルを発射することになり、より沢山の迎撃ミサイルを必要とするだろう。
 いくら低い高度で変則軌道をすると言っても、巡行ミサイルやドローン、そして攻撃ヘリコプターの様に地物に隠れてながら、縫うように飛翔するような芸当はとても無理なので、ターミナル段階では、迎撃用のレーダー覆域から見えなくなるようなことは困難だ。
 軌道を変えることで着弾前に速度を落とすことが可能になるため、生物化学兵器の弾頭も使い易くなる。軌道を変化させると命中精度が落ちるから、そのような影響範囲の広いもので補うことは考えられなくもない。ただし弾頭の熱シールドの条件が難しいから、搭載量も非常に小さなものになるだろう。
 やはり核弾頭の威力で、命中精度の劣化を補うのが一番手っ取り早い。
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