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自衛隊調達巡り(208)周波数共用技術に関する調査研究 要求元は「別班」と同課

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自衛隊調達巡り(208)
入札日:令和4年10月31日
周波数共用技術に関する調査研究
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https://www.mod.go.jp/gsdf/dc/cfin/html/img/k054-10.12.pdf
入札部隊:陸上自衛隊中央会計隊
 仕様書の作成部隊等は、陸上幕僚監部指揮通信システム・情報部指揮通信システム課となっている。
 実は陸上幕僚監部運用支援・情報部が平成29年(2017年)3月27日に廃止され、同日、運用支援・訓練部と、この指揮通信システム・情報部が新設された。
 Wikipediaの記事を見ると、この指揮通信システム・情報部には、ヒューミントを担当する情報1班特別勤務班、いわゆる別班が存在するとされて来た。Wikipediaの記事には年次や固有名詞などの詳細な経緯が記載されているが日本政府によって公式には存在が否定されている。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%99%B8%E4%B8%8A%E5%B9%95%E5%83%9A%E7%9B%A3%E9%83%A8#%E6%8C%87%E6%8F%AE%E9%80%9A%E4%BF%A1%E3%82%B7%E3%82%B9%E3%83%86%E3%83%A0%E3%83%BB%E6%83%85%E5%A0%B1%E9%83%A8%E5%88%A5%E7%8F%AD

 ちなみに国会でも「別班」の存在が議論になっている。
 平成25年12月2日には、第185回国会臨時会質問主意書 質問第七七号で大野元裕議員が、その存在や活動、活動資金、情報共有国、共同訓練及び出向状況について質問している。

第185回国会(臨時会)質問主意書 質問第七七号
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/185/syuh/s185077.htm

 この質問に対して政府の答弁書では、平成25年12月10日に、別班そのものの存在を否定し、情報部の出向者についての人数について回答している。

第185回国会(臨時会)答弁書 答弁書第七七号
https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/185/touh/t185077.htm

 公表されている組織としては、指揮通信システム・情報部の下には、この仕様書を作成した指揮通信システム課と、情報課から組織され、さらに指揮通信システム課には、企画班と指揮通信システム班で組織されている。もちろん情報1班特別勤務班、いわゆる別班は本課にも、情報課にも記載されていない。
 防衛省・自衛隊のH30年度電話番号簿の情報課の欄には、企画班に3つと指揮通信システム班に3つの電話番号が振られている。他に庶務に3つ、それに課長の1つだ。情報課においては一般に一つの班に電話番号は8つから15だ。これらの班等が4班1室ある。同課内の班であるのにこれだけ大きな違いがあるのはなぜだろうか。他の部の課と比較しても最小の数だ。しかも庶務が3分の1を占めている。
 なお、同じ時期に新設された運用支援・訓練部の中の運用支援課と訓練課に挟まって1行分の黒塗り部分があるのが少々怪しい。電話は無くファクシミリの番号が1つあるだけだ。

 そもそも無線機器の開発であれば、同じ陸幕でも防衛部の開発室装備グループの戦闘支援装備・誘導武器や、装備計画部通信電子課の担当ではないかと思うのである。
 単に、この仕様書を見るならば、周波数帯の有効利用を図るという内容であり、これは無線通信技術の王道とも言える分野の将来の発展のためのものと見ることができるのであるが、情報部指揮通信システム課が絡んでくるところに何か特別なものがあるような気がする。
 この仕様書をそのまま素直に読めば、輻輳(1つの回線にアクセスが集中して通信速度の低下や、通信自体を行なえなるような状況)することなく多数の通信を同一地域で行うことなのだが、裏読みするなら同じ周波数を傍受されることなく、あるいは通信の実施を知られることなく通信することが可能な技術でもある訳である。

 「別班」のような組織が秘密の情報活動を行うなら、必要となる技術であることは間違いない。もちろんどちらの目的も有益には違いない。しかし、輻輳防止の技術なら、先に触れた通り通信技術開発のまさに中心として発展してきた分野であり、各国の軍隊のみならず今や民間通信でもこのような技術が使われている。
 そもそも無線通信はブロードキャスティング(信号やデータをネットワークに参加する全機器に同時送信すること。)であり、アンテナ指向利得(電波を集中させること。)を高めるなどしない限りどこでも傍受可能である。
 ハインリッヒ・ヘルツが初めて電波の存在を実験で確認(明治21年(1888 年))し、グリエルモ・マルコーニが通信実験(明治28年(1895年))を行い、日本海海戦(明治38年(1905年))で日本海軍信濃丸から無線通信でバルチック艦隊接近の報を受けた19世紀末から20世紀初頭の時代、無線機は花火放電による送信とガラス管に金属粉を詰めたコヒーラによる検波(信号を取り出すこと。)だけを行っており、回路の共振周波数により帯域幅は有限であるにしても、特に周波数を限定して通信したものではなかった。

 そこにコイルコンデンサからなるLC同調回路バンドパスフィルタなどが導入され帯域を絞って多くのチャネルを使えるように工夫され始めたわけである。
 電波による無線通信の場合、使用周波数が高い程、一定時間に多くの情報を載せることができ、狭い帯域幅で通信できるためチャネル数を多数とることができる。
 発振管や伝送路の発展により高周波の送信が可能になるにつて、使用周波数は高くなった。さらに搬送波(信号の載っていない送信周波数)に音声信号を重畳することによって搬送波の高低周波数側に生じる両側波帯を共に送信していたのを、片側だけにして送信することも検討されたようだが、採用はされて居ないようだ。これはSSBと言って無線通信などでは採用されている。

 昭和53年(1978年)に、AM中波放送の周波数の間隔を10KHz間隔から9KHzに変更したこともあった。
 さらに日本では20世紀末に使われてた1G携帯電話800Hz帯や、同じく日本では平成24年(2012年)まで一部で使用されていたアナログテレビ放送VHF帯の明け渡しは周波数帯の有効利用を図るものだった。
 高い周波数へ移行することによる多チャンネル化も、周波数の伝搬特性上の問題による制約があるし、重畳する情報が音声から画像、0と1からなるバイナリーデータのパルスとなるに従って、必要とする帯域幅はどんどん広がるばかりである。

 そうなると周波数だけで必要なチャンネルを確保することが限界になってきた。そこで時分割化(順番を決めて区切って送信すること。)が行われるようになったわけだ。高周波数化によって一定時間に送信できる情報量が多くなるから、常に情報を流し続けるのではなく、リアル時間より短く区切っても送信できるようになった。
 そこに出てきたのがパケット通信である。インターネットが代表的だが宛先データをつけた一定量の「パケット」にして情報を送るわけである。送った先でリアルの時間に編集するば良いわけだ。
 このようにして通信空間や回線内を分割した情報が流れるようになり、常時、回線を占有する必要がなくなったわけである。

 このような方式の代表例として米軍等が使用しているリンク16などがある。一定時間を数百の区画に分けで、それぞれの航空機や艦艇の送信局の持ち時間とするわけだ。
 さらに時間や周波数をランダムに変えることができれば、空いている時間帯や周波数を自由に使えるようになる。どのタイミングで変えるかは送信側と受信側で取り決めすればよいし、他者はそのタイミングを知らないから傍受にも強くなる。
 そのような方式がスペクトラム拡散である。代表例としては軍用から民間にも使われるようになったcdma方式のcdmaOneである。

DARPA 軍民両用技術が寄与する米国軍産学の際限なき増強循環 019頁
https://www.jstage.jst.go.jp/article/peq/55/3/55_15/_pdf/-char/ja

 ここにあるとおり「CDMAは,元来,軍関係の秘密無線通信・暗号通信向けに開発された基本技術」だったわけである。
 スペクトラム拡散を使えば小さなレベルの電波を拡散した通りに積分して大きなレベルに復調することができるが、元のままの電波では発信源すら探知が困難になってくるわけだ。分かりやすく言えばモグラたたきの様なものである。これを感度の低いカメラで長時間露光で撮影しても感光時間が短く写らないが、モグラが穴から出てくる場所とタイミングを知っていれば、レンズをタイミング良く指向してゆけばモグラの像が現れる。

 このように電波利用の歴史は、限られた周波数帯を如何に有効に多くの情報を飛ばすかの挑戦であった。つまりはこの技術は軍用のみならず民間でも同様の需要があり、すでに研究が進んでいるわけで、改めて自衛隊が独自に開発するにしても、かなり無理があるわけである。少なくとも情報通信研究機構とか情報学研究所などの研究機関などの国立研究開発法人や民間の企業、さらには大学などの知識を結集しなければ新たなものは出てこないだろう。
 この調達のような、一契約のなかで、工夫し、開発できるような代物ではない。少なくとも防衛装備庁絡みの話となるだろう。したがって輻輳防止の技術を得るというのは建前で、本当は秘密の情報を第三者に知られることなく通信することを可能とする技術の獲得が目的ではないかと思うのである。
 全ての調達を把握しているわけではないから、無いとは言い切れないが、無線通信の混線防止の検討についての調達というのは今まで見なかったように思う。

 秘匿手段にも様々なものがある。逆に言えばそれは輻輳防止にも使えるだろう。もちろん電波を使用する以上、他の信号やエネルギーを受けてしまうが、その電波の中から目的とする信号が読み出せれば良いからだ。識別することが出来ればSN比を上げることも可能だ。信号をより分ける情報を持たなければノイズの中に埋もれてしまうことになるが、その情報を持てば信号をより出すことができるのである。先ほどのモグラたたきの例のとおりである。
 近年、着目されているのは量子科学だ。防衛研究所の部内研究「アメリカの核指揮通信統制能力の近代化」では、「中国が量子技術(quantum technology)を用いて弾道ミサイル原潜( SSBN )との通信能力を向上させようと試みていることに鑑みて、アメリカも同様の技術を導入して対抗すべきだと主張するものもある 。」「 アメリカの核指揮統制通信(NC3)は、・・中略・・コン ピュータネットワーク搾取(computer network exploitation: CNE)・・中略・・サイバー領域における CNEと同様に、敵の通信傍受により、NC3において交わされる情報が抜き取られる恐れもある。これへの対策として、量子通信技術が近年注目 を集めている。たとえば、SSBN との通信に量子鍵配送(quantum key distribution: QKD)と呼ばれる技術を導入すれば、敵に傍受されても通信内容を解読されること のない通信が可能になるという。先述したように、中国はこの技術を SSBN との通信に導入しようとしており、すでに海中での量子通信実験も行っている。今後は、 NC3 に対する量子通信技術の導入の成否が核抑止の信頼性に影響を及ぼすことになる かもしれない。」との文言を見ることができる。

 輻輳を問題意識したものとしては『防衛研究所紀要』第21巻第1号(2018年12月)に掲載されている「電磁スペクトルにおける米国の軍事的課題と対応」に、「2016年6月にポーランド軍との間で行われた演習「アナコンダ」([著者追加]ポーランドにおいて実施される多国間演習で、在欧米軍(USEUCOM)を主力とする北大西洋条約機構(NATO)により実施される。)には電子戦も組み込まれたが、その中で誤って味方の通信を妨害する事態が起こっている。これは、割り当てられた周波数を使用しなかった基礎的なミスによるもので、敵によるジャミングへの対応以前に、自軍において自滅したことを意味する。」がある。
 紀要で扱っているということは、現実の問題となっている証左であろう。輻輳防止なのか秘匿なのか、いずれにしても両用できる技術だ。
 詳しいことは分からないのではあるが、一応、仕様書にある役務実施内容を以下のように整理してみた。

1 全般
「周波数共用(同一周波数を異なる無線機で使用すること。)技術(干渉計算や送信出力を自動的に処理する等により、周波数の効率的な利用を可能にする技術。)について検討し、将来の無線機への実装に必要な要件について判断する」
2 状況把握に関する内容
「将来の無線通信に必要な機能」検討、導出
「将来の無線通信を取り巻く環境」調査・分析
「将来の無線機の機能」導出
「周波数共用技術」調査・分析
3 提言に関する内容
「陸上自衛隊の現在の無線通信に関する課題」分析、導出
「陸上自衛隊が将来保有すべき無線通信の機能」分析、導出
「陸上自衛隊の無線通信に必要な周波数共用技術」定義
「陸上自衛隊が将来、無線機に採用すべき周波数共用技術」導出、アーキテクチャ構成の検討、さらに適用するための周波数管理制御用プロトコルを検討
「周波数共用技術を実現するハードウエア及びソフトウエアに求める機能要件及び非機能要件」明示、機能効率化について提言

 以上が役務の内容である。
 本調達の仕様においては、広帯域多目的無線機の車両用、携帯Ⅰ型及び携帯Ⅱ型を無償貸付するとある。
 この無線機は下のサイトにあるようなものである。

ソフトウェア無線技術のその発展と取り組み
https://jpn.nec.com/techrep/journal/g21/n01/210122.html

 防衛省が試作事業を一般公募で募集し、NECが本試作事業を受注して開発したもので、2013年に量産化されている。
 車両搭載型の車両用、機上搭載型の機上用、マンパック型の携帯用Ⅰ型、ハンドヘルド型の携帯用Ⅱ型がシリーズ化されている。ソフトウェアを入れ替えることで、多目的に利用できる無線機を1台で実現することが可能なのだそうだ。
 多数の端末同士を基地局の介在なしに直接接続ができ、自律分散的にルータと同様の役割を担いながら、数珠つなぎのように通信を行うことができるというものだそうだ。これはリンク16のシステムに非常に似ている。

 これにより構成されるネットワークによりメールや映像伝送も行うことができるという。
 ネットワークを構成するとなれば、多数の無線機を使うことになるから、輻輳防止が不可欠となるのは確かに理解できることだ。
 この無線機については、かなり苦言がなされているようだ。下のサイトにも「電波帯域原因のどうしようもなさ」とか、「帯域が悪いがそこら辺は後からいじれる機器だし更新が必要とは思えん」などと批評されている。

コータム(広帯域多目的無線機)は本当に「使えねえ」装備なのか?から始まるコータムTL –JDCSとの関係、改善前の評価?、周波数の問題…など-
https://togetter.com/li/1202157

 現実に、不具合があるようである。その改善の為の調達という面も否定できない。
 次の記事を見ると「約6割が改修実施せず」とある。一方で「約7割の部隊が装備している」ということで、問題が解決されないまま部隊に装備されているということのようだ。これは危機的な状態だろう。

防衛省、広帯域多目的無線機の能力を実演展示
https://www.jwing.net/news/27462

 隷下の部隊を衆参離合させ必要とする時と場所に兵力を集中するには、確実で秘匿可能な通信が不可欠である。クラウゼヴィッツも以下のように「戦争論」に記している。
「秘密と迅速とは奇襲に必要な二大要素であり、」(3篇(戦略一般について)9章)
「決定的な瞬間に十分な戦力をおいておくこと…保有する戦力を終結させておくこと以上に、重要かつ単純な戦略上の原則はない。」(3篇11章)
 クラウゼヴィッツの「戦争論」が、クラウゼヴィッツの没後に出版された時点では、まだ無線通信が出現する60~70年前であり、電信もまだ20年後のことだが当時から腕木通信などが使われていた。このように様々な通信手段が工夫されていたことであろう。
 いずれにせよ現代でも、混信することなく、秘匿も可能な通信手段の獲得が重要であることは論を待たない。

軍事問題研究会関連資料の紹介 関連資料として以下を所蔵しておりますので応談承ります。なお在庫切れの場合はご容赦下さい。お問合せはこちらへ。
なお、「将来」に関する資料についてはこちら、「調査」に関する資料についてはこちら、「通信」に関する資料についてはこちら、「電磁」に関する資料についてはこちら、「勤務」に関する資料についてはこちらです。
(資料番号:22.6.19-2)「特集:官民共用飛行場」『飛行と安全』(航空自衛隊航空安全管理隊)2021年7月号掲載
(資料番号:21.10.13-3)「陸海作戦領域の干渉拡大と日本海軍の前進基地防御―未完の「対米鉄壁化地帯」―」『海幹校戦略研究』(海上自衛隊幹部学校)第11巻第1号(2021年7月)掲載
(資料番号:17.9.4-2)「航空自衛隊の次期電波収集機輸送機C-2に新規開発の機上電波測定装置を搭載―」『鵬友』2017年3月号掲載
(資料番号:14.10.20-1)「隊員を取り巻く環境等を考察し、部下隊員の自殺事案を防止するための具体的方策について」『鵬友』2013年9月号掲載

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